看護師ミカ こんにちは、現役看護師のミカです。

今回は、『転倒転落アセスメントスコアシートとは?目的や点数など使い方は?』というタイトルでお送りします。


転倒転落の事故というのは、病院など医療機関にとっては本当に重要な問題です。

その転倒や転倒で、高齢者などハイリスク患者に関しては骨折してしまう可能性もあります。

老人施設などでは、普段寝返りもうたないような患者さんが車椅子やベッドから転落してしまったという事故が後を絶たないのです。

転倒転落アセスメントスコアシートとは

しかし、どのような事例にも必ず対応策はあります。

看護や介護の現場には、そんな時に活用できるアセスメントスコアシートというものが存在します。

今回はそんな「転落転倒アセスメントスコアシート」について説明していきたいと思います。
 

※アセスメントの日本語訳:客観的に評価すること

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転倒転落アセスメントスコアシートとは?その目的も

転倒転落アセスメントスコアシートを使う目的というのは、「患者さんの転倒転落の事故防止」です。

転倒転落アセスメントスコアシートというのは、個々の患者さんの身体の状況や危険要因をアセスメントして、転倒転落の危険性を総合的に見極める評価表となるものです。

アセスメントの結果をスコアにして、トータルの点数で危険度の程度を段階的に表します。

そして、アセスメントスコアシートで出た結果を、それぞれの患者さんの看護計画や具体的な対応策の作成に反映させるのです。

患者さんは入院中に状態が変化していくことも多いため、この評価は患者さんの入院時のチェックのみでなく、入院中も複数回チェックします。

そうすることで、入院中は継続的にその患者さんに合った対応策を変化させながら実施できます。

このスコアシートは「特に法律などでこのシートを使わないといけない」と決まっている訳ではありません。

それぞれの病院などの施設によって、独自のアセスメントスコアシートを作成していることが多いです。

転倒転落アセスメントスコアシートの目的や点数など使い方
 

では、どんな流れで転倒転落アセスメントスコアシートが使われていくか説明しましょう。

  • まず患者さんが入院してきた時、アナムネの際に聞き取り以外にも状態を観察することでアセスメントスコアシートを記入します。
  • ↓

  • それぞれの項目をチェックしてスコアを集計したら、その危険度を判定します。
  • ↓

  • 危険度別にその施設で決まられた対応策を実施します。

 
といった流れになります。

では次に、転倒転落アセスメントスコアシートの点数や危険度などについて説明していきます。



転倒転落アセスメントスコアシートの点数・危険度について

上の方でも書きましたが、転倒転落アセスメントスコアシートの表はそれぞれの施設によって違います。

ここでは、日本医師会の転倒転落防止マニュアルから抜粋したスコアシートを紹介したいと思います。

▶ 転倒転落防止マニュアル(https://www.med.or.jp/anzen/manual/pdf/score.pdf)
 

転倒転落防止マニュアルp1

上記の表にあるように、危険度はⅠ~Ⅲの3段階に分類されています。合計点と危険度の対応は次のとおりです。

危険度 合計点 判定の目安
危険度Ⅰ 1~9点 転倒・転落する可能性がある
危険度Ⅱ 10~19点 転倒・転落を起こしやすい
危険度Ⅲ 20点以上 転倒・転落を良く起こす

出典:日本医師会「転倒転落防止マニュアル」表1 転倒転落アセスメントスコアシート(例)

なお、このシートは日本医師会が一から作ったものではありません。シートの右下には「東京都病院経営本部サービス推進部並びに京都第一赤十字病院の転倒・転落予防防止マニュアルより改変」と明記されています。表の見出しも「(例)」となっていて、そのまま使うことを求めるものではなく、各施設が自院の形に直して使う土台として示されています。

これらの危険度に応じて対応策を検討し、各々の患者さんの看護問題と目標に反映させていきます。

転倒転落防止マニュアルp2

観察項目に関しては、ここに挙がっているもの以外にも転倒のリスクになりそうな項目は全て細かく挙げていきます。

転倒転落防止マニュアルp3

対策に関しては、患者さんの状態によって個別のもの、またはそれぞれの施設で独自の方法も加えて作成したりしていますね。

転倒転落防止マニュアルp4
 

ここまで紹介したシートは日本医師会で推奨しているひとつの例ですが、実際には各病院に合った内容に変更して使用していることが多いです。




 

入院患者の中でも、特に身体的機能が低下している高齢者は、疾患によって更に運動能力が低下しています。

入院する前までは自宅でお布団を使っていたのに、入院するとベッドでの生活に変わってしまいます。

そうすると、その変化に適応できず夜間にトイレなどで起きた時に感覚が分からず、転倒してしまう危険性も高まるのです。

患者さんのこれまでの生活してきた背景や、現在はどの程度動けるのかなどの情報を全体的に捉えていかないといけません。

また、対応策も上記の表の項目のみではなく、その施設独自の対応策が色々挙がっていると思います。

ただ、それら対応策を医療者側が実施しておくことも大切ですが、転倒転落のリスクの高い患者さんに対しては協力を申し出る必要もあります。

高齢者で転倒転落に対する認識が低く、理解力もかなり低下している場合を除き、ある程度の認識がある患者さんに対しては転倒転落の危険性と防止を呼びかけることも大切です。

例えば、入院時に転倒転落の危険度を自分でチェックしてもらって、その注意点などが書かれたパンフレットなどを作成して渡しておくなどしている施設もあります。

 

こうした患者さんへの働きかけには、学会の裏づけがあります。日本転倒予防学会は2020年の提言のなかで、本人や家族にも転倒リスクアセスメントツールの結果を知らせ、予防対策に参加してもらうなど、本人の意思も踏まえた転倒予防を行うことが望ましいとしています(出典:日本転倒予防学会「転倒・転落アセスメントツールに関する提言」7ページ)。

こうして、患者さんと看護師など医療者側の両方がお互いで協力しあって転倒転落の事故を予防していくようにしていかないといけません。

スコアシートの位置づけと限界(日本転倒予防学会の提言)

転倒転落アセスメントスコアシートは、点数を出して終わりの道具ではありません。

日本転倒予防学会は2016年に「転倒・転落アセスメントツール検討委員会」を立ち上げ、4年間の検討結果を2020年7月18日付の「転倒・転落アセスメントツールに関する提言」としてまとめています。

この提言では、転倒・転落アセスメントスコアシートを、転倒の危険度を明らかにして転倒を予測し未然に防ぐことを目的とした、転倒リスクマネジメントのための指標だと定義しています(提言7ページ)。

ツールの目的は3つに分かれる

提言1では、転倒・転落アセスメントツールの目的は次の3つに大別されるとしています(提言8ページ)。

  • スクリーニング…限られた人員で早期に対策を打つため、対象集団からハイリスク者を選び出す
  • 精査…ハイリスク者を対象に、転倒を引き起こす要因を詳しく調べて明らかにする
  • 対策導出…転倒リスクと患者さんの生活行動を照らし合わせ、医療者・介護者・患者さん自身が行える対策を、一定のルールや条件にもとづいて導き出す

この記事で紹介したようなチェックリスト形式のスコアシートは、主に1つめのスクリーニングにあたります。

提言では、入院時に病棟看護師がスコアシートでハイリスク者を選び出すことが多い一方、そのあとの「精査」は治療や歩行・移乗動作の専門性が高い医師・薬剤師・理学療法士・作業療法士などと共有し、多職種で精査・対策立案・実施・評価を続けていく必要があるとしています。

▶ 動画で確認:多職種で行う転倒転落対策ラウンドの実際

医師・看護師・理学療法士・薬剤師など多職種が参加する病院の転倒転落対策ラウンドで、事前情報の共有、環境(外的要因)と患者さんの状態・能力(内的要因)の確認、動作の評価、対策の検討を行う流れを紹介しています。

出典:伊奈病院 公式チャンネル「転倒転落対策ラウンドの実践~多職種で関わる~@伊奈病院」(YouTube・約7分)

スコアシート以外の転倒リスク評価スケール(目的別の例)

転倒リスクを評価する道具は、チェックリスト形式のスコアシートだけではありません。提言は、国内外で開発・評価されてきたツールを上の3つの目的別に整理し、次のような例を挙げています(提言8ページ)。

目的 提言が挙げる例 どんな道具か
スクリーニング STRATIFY、FRI-5 短時間で行えるチェックリスト形式のもの
スクリーニング SIDE 特定の動作ができるかどうかで判定するもの
精査 Timed Up & Go Test、Functional Reach Test、片脚立ち時間 リハビリテーション領域の評価方法
対策導出 STEADI 米国で開発されたもの

出典:日本転倒予防学会「転倒・転落アセスメントツールに関する提言」8ページ

FRI-5については、提言の参考文献に「転倒リスク予測のための『転倒スコア』の開発と妥当性の検証」(日本老年医学会雑誌)という論文が挙げられています。

また、提言の図1「転倒・転落アセスメント基本モデル」は、スクリーニング→精査→対策導出→対策実施の流れに「適宜再評価」の矢印を添えています。アセスメントはスクリーニング・精査・対策導出のどこからでも始められるとされており、一度点数を付けて終わりではなく、対策を実施したあとも必要に応じて評価し直す流れとして示されています(提言8ページ)。

回答者の3割は有効性を感じていない

学会は2016年4月から6月にかけて、正会員712名と施設団体会員63施設を対象にWEB調査を行っています(提言2ページ)。

アセスメントの目的として挙がったのは、スクリーニングが87%、転倒・転落の要因分析が44%、転倒予防対策やケアプランの検討が70%でした。1つのツールに多くの効果が期待されていることがうかがえます。

有効性については7割が「効果がある」と回答した一方で、残る3割は有効性を感じていませんでした。その理由としては、ツールそのものの信頼性・妥当性という精度の課題と、アセスメントの業務負担は増えるのに対策に活かされていないという運用上の課題が挙げられています。

つまりスコアシートは、点数を付けただけでは事故を減らしません。

提言も、使っているツールが自分の施設で適切に転倒を予測できているのか、その感度や特異度を把握し、ツールの特徴と限界を分かったうえで使う必要があるとしています。

転倒転落アセスメントスコアシートの目的や使い方などについてのまとめ

今回は転倒転落アセスメントスコアシートの目的などについて説明してきました。

では、まとめてみましょう。

転倒転落アセスメントスコアシートとはなに?目的は?
転倒転落アセスメントスコアシートというのは、個々の患者さんの身体の状況や危険要因をアセスメントして、転倒転落の危険性を総合的に見極める評価表となるものです。
アセスメントの結果をスコアにしてトータルの点数で危険度の程度を段階的に表します。
それを基に、各々の患者さんの看護問題、目標や看護計画の作成に反映させていきます。
その目的というのは、「患者さんの転倒転落の事故防止」です。

 

転倒転落アセスメントスコアシートの点数や危険度について
ここでは上記に日本医師会が推奨している転倒転落アセスメントスコアシートを紹介していますが、実際にはそれぞれの施設によって作成されたシートを使っていることが多いと思います。

その危険度はだいたい3つの危険度に分けられていて、その転倒転落の危険度に合わせて、看護計画に反映させ転倒転落の対応策を立てていきます。

ただし日本転倒予防学会の提言では、こうしたスコアシートは主に「スクリーニング」の道具と位置づけられています。点数を出したあとに多職種で「精査」と「対策導出」までつなげること、そして使っているシートの特徴と限界を把握したうえで使うことが求められています。

 
 

転倒転落は病院だけでなく、老人施設などで認知症などを患っている高齢者にとってはかなり高い確率で起きやすい事故になっています。

しかし、認知症などを患っている患者さんに関してはご本人に協力を得にくい面がありますので、介護者側の負担がかなり重くなってきます。

転倒転落の事故をゼロにすることはできません。上で紹介した日本転倒予防学会の提言も、転倒は生活のなかで偶発的に起こるものであり、予測できない転倒や予防できない転倒があることを十分に考慮する必要があるとしています(提言7ページ)。

だからこそ、アセスメントスコアシートをそれぞれの施設の特性に合わせて使い、危険度を多職種の共通の言葉にして、精査と対策づくりまでつなげていくことに意味があります。

スコアシートの運用負担は、職場の人員体制や夜勤体制によって大きく変わります。いまの働き方を見直したい看護師の方向けには、求人紹介サービスもあります。

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この記事で確認した日と出典

この記事の点数・危険度・提言の内容は、2026年8月29日に次の一次情報を直接開いて確認しています。

なお、この記事は転倒転落アセスメントスコアシートのしくみを説明するものです。実際にどのシートを使うか、危険度に応じてどの対策をとるかは、必ず所属先の基準と多職種の判断にしたがってください。