今回は、『インスリンが血糖値を下げる仕組みは?注射しても数値が下がらないこともある?』というタイトルでお送りします。
「インスリン」というのは、ヒトの身体の膵臓(すいぞう)という臓器から分泌されているホルモンの名前です。
インスリンには血糖値を下げる作用があります。
そのインスリンの量や働きが不足してしまう病気を糖尿病と言います。
そして、糖尿病が生活療法や内服薬では改善しない場合、体外からインスリンを注射して補充する治療方法のことを、「インスリン療法」と言います。
インスリンは、1921年カナダの整形外科医であるフレデリック・バンティングと、医学生だったチャールズ・ベストによって発見されました。
日本ではまだ注射でしか治療できませんが、インスリン製剤やそれに使う器具は今でもどんどん進歩しています。
例えば、アメリカでは口から吸入するタイプのインスリン製剤が既に発売されていますし、腹部に取り付けて自動的にインスリンを注入してくれる人口すい臓も研究が進んでおり、日本でも遅かれ早かれ使用される日が来ると思います。
今回は、そんなインスリンが血糖値を下げる仕組みについて説明していきたいと思います。
インスリンが血糖値を下げる仕組みは?
では、インスリンがどのようにして血糖値を下げていくのかについて説明したいと思います。
食事から摂ったブドウ糖の多くは血液に流れに乗って、身体の隅々まで運ばれます。
そうして、血液中のブドウ糖の濃度が上がってくると、膵臓(すいぞう)の細胞が刺激されてインスリンが分泌されます。
分泌されたインスリンは、ブドウ糖がグリコーゲンに変換されて肝臓や骨などに貯蔵されたり、脂肪酸に変換されて脂肪組織に蓄えられたりして、有効に活用されるのを助ける役割をします。
下の図にあるように肝臓や骨格筋、脂肪組織など、多くの臓器に働きかけてブドウ糖の代謝に影響を与えていきます。
インスリンは1日中わずかに分泌されているのですが、日内変動といって時間帯によって分泌量が変わってきます。
特に食後数時間以内というのは、ブドウ糖の量が多くなるので効果的に細胞内に取り込めるように多めに分泌されるようになっています。
このように有効にブドウ糖を処理していくことで、血液中を流れる糖分は下がり結果的に血糖値の低下に繋がります。
しかし、糖尿病の患者さんではインスリンの分泌量や作用が十分でないため、ブドウ糖の代謝活動がうまくできません。
よって、血液の中のブドウ糖はたくさん流れているのにそれを細胞が取り込めずに有効活用できない、このような状態が結果的に血糖値を高くしてしまうのです。
そんな糖尿病の患者さんの治療としてはまず薬物療法を行ないますが、それでも血糖値の調整が上手くいかない時などには、体外から直接インスリンを注射する方法が行われます。
インスリンの注射をすることでブドウ糖の代謝活動が行なわれ、血糖値が低下していくことを目的とします。
しかしインスリンを注射しても、中にはなかなか血糖の数値が下がらない人もいます。
それはどうしてなのでしょうか?
インスリン注射しているのに数値が下がらないこともある?
糖尿病でインスリン注射をしているにも関わらず、血糖の数値が下がらないケースはあります。
インスリンの注射をしているのに、血糖の数値が下がらないのはなぜなのでしょう?
原因として…
- 食生活の問題
- インスリンが出ないなど身体的な問題
- インスリン注射するタイミングの問題
- 運動不足の問題
などが考えられます。
では順に説明していきましょう。
食生活の問題
- 間食を食べすぎている…指導された量よりも多く食べている
- 生活が不規則である…起床時間や就寝時間が毎日不規則だと、食事を摂る時間も不規則になるので、食事と食事の間の時間が短かったりすると、血糖値が高値のまま経過する可能性がある
- ストレスで食べてしまう…日々の生活の中でのストレスが増えていくと、食べることに走ってしまう。そのことで血糖値の調整が困難になる
- 炭水化物の摂りすぎ…白米やうどんやラーメンなどの麺類ばかり摂りすぎている
規則正しい生活はとても大切です。
仕事の関係があるので仕方ないというケースもあるかもしれませんが、元気な身体があってこそなので、なるべく自分で調整できるところはしたいものですね。
インスリンが出ないなど身体的な問題
インスリンを分泌する機能が著しく低下しているため、インスリンの注射量が合っていない場合にはなかなか血糖値が下がらないことがあります。
また他の臓器の機能が悪い場合、その関連でインスリンの出が悪くなって血糖値が上がったり下がったりと安定しないケースもあります。
この場合には担当医の指示、指導に従いましょう。
インスリン注射するタイミングの問題
普通、インスリンは食事を摂り始めるとすぐに分泌されます。
インスリン注射を受けている場合、食後の血糖上昇に合わせていいタイミングで注射できるように医師から指導されています。
しかし、その時間を守らなかったり、量や回数などが適切でなかったりするとやはり血糖値は安定せず、高血糖や低血糖になったりします。
食事は規則正しく、また注射の時間は指示通りの時間に行なうようにしましょう。
運動不足の問題
インスリン注射をしている中、どんどん運動不足になって肥満傾向になることも多くあります。
もちろん、運動不足による肥満はインスリンの効きを悪くすると言われています。
適度な運動を行ない、余分な脂肪が付かないように注意しましょう。
これらの原因以外にも、ヒトの身体はそれぞれ全く違いますので色々な原因がまだ他にも考えらるかもしれません。
でも、糖尿病の基本的な治療方法は3つで、薬物・食事・運動療法です。
インスリン治療などの薬物療法は、日頃から食事や運動がきちんとできていて初めて有効に働きます。
これら日々の生活のうえで、血糖値安定のためにできる対策はしっかりしていきましょう。
インスリンが血糖値を下げる仕組みなどについてのまとめ
今回はインスリンが血糖値を下げる仕組みなどのついて説明してきました。
では、まとめてみましょう。
食事で摂ったブドウ糖は血液の流れによって全身に運ばれます。
血液内の血糖値が上昇するとインスリンが分泌され、肝臓や骨格筋、脂肪組織などの臓器に働きかけブドウ糖の代謝を助けてくれます。
そうすることでブドウ糖は活用され、結果的に血液中の糖分はさがり数値が低下します。
糖尿病でインスリンを注射していても血糖値が下がらないことはあります。
それには次のような原因が考えられます。
- 食生活の問題
- インスリンが出ないなど身体的な問題
- インスリン注射するタイミングの問題
- 運動不足の問題
などです。
インスリンが血糖値をさげる仕組みを知ると、インスリンが本当に身体の代謝活動において、大きな役割を果たしているのがよくわかりますね。
インスリン注射を始めたとしても、一生注射しないといけないわけではありません。
また、インスリンの注射による治療も、日頃の規則正しい食事や運動ができていてこそです。
ただし、「きっちりと毎日規則正しい生活をしなければ!」と思うとストレスに感じてしまって逆効果ですので、そのあたりはできる範囲で自分で調整し、うまく血糖値をコントロールしていきましょう。