看護師ミカ こんにちは、現役看護師のミカです。

今回は、『透析クリニックの看護師の役割は?仕事内容は楽なのか難しいのか?』というタイトルでお送りします。


私は透析業務に関しては15年以上の経験がありますが、よく他の科の看護師から聞かれていたことは

「ね、透析ってどんなことするの?」

「透析の器械触るのって難しくないの?穿刺はどんな感じ?」

などです。

透析クリニックの看護師の役割

同じ看護師でも、働く科によっては仕事内容も全く違っているので、中でも透析という分野は特殊な仕事だと思われているようです。

透析を行っている施設というのは、病院の中の透析室と外来患者のみの透析クリニックに分けられます。

病院の中の透析室には、他の病気で入院中の透析患者や、シャント(透析の際使う血管)を作って導入する予定の患者などがいます。

そして、透析クリニックには週に2~3回、定期的に透析をするために通っている患者がいます。

今回は透析クリニックの看護師の役割について説明していきたいと思います。


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透析クリニックの看護師の役割は?仕事内容も一緒に説明

一般的に透析クリニックには、週2~3回の安定した透析を行なっている患者が多いです。

通院してくる透析患者数はそのクリニックの規模によってまちまちですが、ほとんどの場合月・水・金のコースと火・木・土のコースに分けて予定を組んでいるクリニックが多いと思います。

そして、透析治療はだいたい午前と午後の2部制になっていて、もう仕事を引退されている人や主婦の場合は午前の部で、仕事をされている人の場合は夕方からの午後の部に通院されることが多いです。

そんな中、透析に携わる看護師にはどのような役割があるのでしょうか?

次にまとめてみました。

  • 透析の準備
  • 透析開始から終了までの患者の観察
  • 透析中の器械の操作
  • シャントのケア
  • 患者の生活指導

などになります。
 

それぞれを説明してきましょう。

透析の準備について

血液透析というのは、血液を循環させながら器械が血液の浄化や水分、電解質の調整などを行なってくれる治療です。

ですので、もちろん透析器械が必要になるのですが、その器械にあらかじめ血液を通す「血液回路」(下の図)と呼ばれる長細いホースのような管をセッティングしていかなくてはいけません。

透析器械 血液回路

この血液回路を透析器械に組んでいきます。

この回路は動脈側と静脈側の2つに分かれています。

これらの回路を器械に組んでいくと下の画像のような感じになります。

透析の準備 血液回路

こうして、器械に血液回路をセッティングしたら、実際に血液透析を行なってくれる「ダイアライザー」と呼ばれる筒のような形の透析装置に繋げていきます。

ダイアライザーと言われるものは上の図にも写っていますが、もう少し大きくして見てみましょう。

血液透析を行なってくれるダイアライザー

これがダイアライザーです。

このダイアライザーには透析膜と言われる膜からできた髪の毛より細い筒状の管が密集して入っていて、そこを血液が通ることによって血液が浄化され、余分な水分が除水されていきます。

実際に血液が通る前には回路内を生理食塩水で満たしておく必要がありますので、ダイアライザーを繋いだ血液回路全体に生理食塩水を流していきます。
 

この生食を流して血液回路内を満たしていく行為のことを「プライミング」と言います。

そして、器械側の準備ができれば透析前の準備が完了となるわけです。

これらの作業を穿刺前に行なうことが透析前の準備となります。

そして次に透析開始から終了までの患者の観察です。



透析開始から終了までの患者の観察について

透析開始をするということは、まずは穿刺をしないといけません。
 

透析患者の腕にはシャントが作成されています。

このシャントというのは、下の図のように動脈と静脈の血管を皮下で繋いだものです。

動脈と静脈の血管を皮下で繋いだシャント

私達看護師は動脈には穿刺できませんので、穿刺しやすい静脈の血管に動脈血を流してそこから採取していくためにシャントが作られています。

そして、穿刺するときにはシャントの動脈側と静脈側の2ヶ所を穿刺しないといけないのですが、普通の採血や血管と同様に細い血管があれば太い血管もあり、穿刺困難な血管もあります。

ただ、血液透析は必ず穿刺しないと始まらないし、血管に正確に入っていないと4時間の透析には耐えられません。

例えば、採血ならば多少途中から漏れてしまっても必要な血液量が採取できれば何とか終わります。

そして、点滴についても血管に入らずに漏れてしまっても他の血管を探して再挿入すればなんとか終わります。

ところが、透析に使われる血管は透析患者にとっては生命を繋ぐために非常に大切なものなので、何回も再穿刺を繰り返すことはできません。

何度も失敗を繰り返すと血管が潰れてしまうこともあるからです。

また、失敗がシャントの動脈側の穿刺だった時、人によっては抜針(針を抜くこと)した後の止血にかなり時間がかかったりします。

静脈側に関しては点滴のように自然滴下でおちていくわけではなくて、器械で圧をかけて血液が入っていくのでその圧に耐えられるように針が正確に入っていないといけません。

注意点について話し始めるとこんな感じでどんどん出てきますが、穿刺が終わり実際に透析治療が開始されると、後は3~4時間の間ほぼ安定して過ごされる患者がほとんどなので、あとはその経過観察になります。

安定した透析を送られていれば、この間は特に問題なく経過していきますので時間毎にバイタルチェックを行なって一般状態を観察していくことになります。

しかし、中には除水(引いていかないといけない水分量)の量が多すぎたり、体調不良があったりなどで、途中血圧が低下する患者がいます。

その場合には、生食や塩分などを注入しながら血圧を保持し透析を継続できるように援助します。

そして、その間に医師の診察やまたは処置のある人は処置を施行していきます。

では次に、透析中の器械の操作について説明します。



透析中の器械の操作について

透析クリニックには数名の臨床工学技士が在籍しています。

透析クリニックにいる臨床工学技士

透析に使われる透析液の作成や器械関連のことなどに関しては、主に臨床工学技士が担当しています。

ですが、透析開始から透析中、終了までの器械のチェックや操作は看護師もしなくてはいけません。

毎日行なっている動作に関しては慣れればわかってきますが、もしどうしてもわからない場合には遠慮なく臨床工学技士に尋ねるとすぐに対応してくれます。

そして、次にシャントのケアに関してです。

シャントのケアについて

透析患者にとって、シャントとは生命を繋いでいる非常に重要なものです。

シャントのケア

例えば、透析が終了し抜針し止血するときに圧迫止血していくのですが、止血に使われる止血バンドよりも指で押えてあげるほうがシャント自体には良いと言われています。

シャントを作りたての場合や、血管が詰まりやすいなどトラブルのあるケース、そして人工血管を入れている場合などは看護師が止血します。

しかし、それ以外ではほとんどが患者自身で止血しているか、止血バンドを使っています。

その押え方にのコツがあって、シャントの血流を完全に止めないように血液が流れているのを確認しながら押えないといけません。

またその力を患者自身に覚えていってもらわないといけません。

透析終了後だけではなく、開始前にもきちんとシャントが流れているかを確認する必要があります。

シャントはその血管の部位を聴診すれば、シャント特有の音が確認できます。

音の種類によっては狭窄部位も判断できます。

そんなシャント音を必ず聴診してから穿刺に入ります。

このように、シャントに関しては透析前後で色々気を遣っていくべき点が多いのです。

シャントに関しては、患者が生活していく上でも色々な注意点がありますので、その指導も含め、シャントケアをしていきます。

では最後に、患者の生活指導についてです。



患者の生活指導について

透析をしていくとなると、生活面においても色々注意点が出てきます。

普段、どのように生活していくかでその後の透析生活が変わってきます。

主には食事指導となりますが、それ以外でも運動、睡眠など指導するべき点は色々あります。

透析患者の生活指導

患者が透析中を含め、日常生活でもトラブルなく平穏に過ごしていけるように生活全面において指導をしていくことも看護師の大きな役割のひとつとなります。

ここまで、透析クリニックの看護師の主な役割について説明してきましたが、結局その仕事内容というのは楽なのか難しいのかについて説明しましょう。

透析クリニックでの仕事内容は楽なのか難しいのか?

これまでに透析室での看護師の役割について、その仕事内容も含め説明してきましたが、看護師によっては器械を触るのが得意ではないとか、穿刺が上手くできないなど色々違います。

その透析の仕事内容が楽に思えるのか難しいのかについては一言では言えないのが本当のところです。

透析の仕事内容というのは基本的には毎日毎回、同じような内容を繰り返しています。

準備や器械の操作に関しても毎回同様な手技を繰り返しています。

ですので、そのルーティンワークをすることに対して言えば、一度覚えてしまえば楽だと思えるでしょう。
 
 

ただ、ひとたび何か異変があった時にどう対処するか、については一番近くで対応する看護師の動きに委ねられています。

例えば、患者自身や器械のトラブルなど透析中には何が起こるかわかりません。

血圧が急に低下してしまい、ショック状態になり意識を失うなんてことは意外とよくあることです。

そんな時に患者によっては、透析を中断して終了させるのか、または除水する量を変更したり、お薬などを使用しながら透析続行するのかなども決めなくてはいけません。

また、時間当たりの除水量が多くて血圧が低下しているのであれば、今後の体重増加についての指導もしていくことになります。

このように、毎日のルーティンワーク以外にも臨機応変な対応が求められるという点では難しいと思うことも出てくるかもしれません。

ですが、それは透析業務に限ったことではありません。

その他の科の職場の看護師においても臨機応変な判断というのは求められることです。

最初は慣れていなくても、先輩看護師達に色々教えてもらいながら経験していくうちに、いずれはどんな急変にも対応していくことができる看護師に成長していきます。

ですので、私は過度な心配はしなくていいと思っています。



透析クリニックの看護師の役割についてのまとめ

今回は透析クリニックの看護師の役割や仕事内容について説明してきました。

では、まとめてみましょう。

*透析クリニックの看護師の役割はどんなこと?

  • 透析の準備…透析を行なうまでの物品や血液回路、または薬剤などの準備を行なう
  • 透析開始から終了までの患者の観察…血管の穿刺から終了までの間のバイタルチェックなど一般状態の観察くをする
  • 透析中の器械の操作…開始から終了までの器械チェックや操作などを行なう
  • シャントのケア…穿刺前から終了後、または日常生活におけるシャントの扱いについての指導をしていく
  • 患者の生活指導…透析をしながらトラブルなく快適に過ごしていけるように普段から生活面での注意点を指導する

このような点になります。

透析クリニックというのは、仕事内容については本当にシンプルなルーティン業務になると思います。

そんな中で、透析に通ってくる患者というのは透析が生活の一部にもなっているわけです。

毎回何事もなく、透析も開始終了していくことが一番良いのですが、患者自身も透析経験を重ねていくうちに色々なトラブルに見舞われることがあります。

慣れていなくても、先輩看護師達のとっさの判断や行動などを学んでいき、成長していけるように努力する気持ちがあるのであれば、私は透析業務に対して多少の難しさを感じていても乗り越えていけると想います。