今回は、『先天性無痛無汗症とは?原因や症状など説明!日本での患者数は何人?』というタイトルでお送りします。
先天性無痛無汗症(せんてんせいむつうむかんしょう)という病気を知っていますか?
私は以前、海外のドキュメント番組を観て初めてその病気について知りました。
看護師の私でもこんな感じですので、一般の人にはより聞きなれない病名だと思います。
でも、この病名(漢字)を読むと何となくどんな病気なのかについては想像できると思います。
ただ、この病気に関しては、詳しいことを勉強すればするほどとても辛い病気なんだなと感じました。
「あー、産まれた時から汗をかかず、痛みを感じないんだ…」
と、何となく症状を想像させるその病名からは想像もできないほどに、実際は深刻な病気です。
先天性無痛無汗症の患者さんやその家族の方以外では、まだまだ世間の人達にとっては認知度が低い病気だと思います。
なので、少しでもこの病気について詳しく知ってもらえればと思います。
先天性無痛無汗症とはどんな病気?
病気の原因がわからず治療法が確立されていないため長期の療養を必要とされる病気を「指定難病」と言いますが、先天性無痛無汗症はこの指定難病に指定されています。
少し難しいのですが、先天性無痛無汗症は、遺伝性感覚自律神経ニューロパチーという疾患に属する病気です。
この遺伝性感覚自律神経ニューロパチーという種類の中には、1~5型まであり、そのうち4型と5型について先天性無痛無汗症と呼んでいます。
4型は全身の温度や痛みを感じる感覚がなくなり、汗をかく機能が低下または消失する、そして精神発達遅延などが出る病気です。
そして、5型は全身の温度や痛みを感じる感覚だけが障害される病気です。
でも、4型と5型はその見分けが難しい場合もあるようです。
しかし、こうした専門的な病名のことを説明しても難しく、医療従事者である私達看護師にとってもなかなか分かりにくい内容なのでその部分は省き、どんな原因や症状なのかについて簡単に説明していきたいと思います。
先天性無痛無汗症の原因はどんなものなのでしょう?
先天性無痛無汗症の原因は?
先天性無痛無汗症というのは、遺伝性の病気とされています。
痛み感覚や発汗の機能の調整をする神経に関する遺伝子の一部に、異常を認めることによって起こる病気と言われていますが、まだこれらの遺伝子の異常が症状に結びつくメカニズムはわかっていません。
まだまだ不明な点も多い病気です。
では、この先天性無痛無汗症の症状はどんなものがあるのでしょうか?
先天性無痛無汗症の症状は?
先天性無痛無汗症になると次のような症状になります。
- 温度や痛みを感じる感覚がなくなる
- 汗をかかなくなる
という症状です。
私達は怪我や病気をすると、その症状(痛みなどの感覚)を感じることで異常の早期発見ができたり早期に治療を受けることができます。
走っていてこけてしまっても、強い痛みがあれば骨折もわかりますし、熱いものに触れてそれを感じることができればヤケドも防げます。
ですが、先天性無痛無汗症の場合は温度や痛みの感覚、または汗をかくことができなくなることで、更に次のような病気を引き起こしやすくなります。
全身の温度や痛みの感覚がなくなるため、次にような傾向があります。
- 骨折しやすい
- 脱臼しやすい
- 熱傷や凍傷などのやけどしやすい
- 自傷行為(指先や舌、口唇を噛むことによる外傷)をしやすい
また発汗が低下するため体温の調整がうまくできないために
- 高体温によるけいれんや脳炎(のうえん)
- 低体温による免疫力低下で起こる様々な病気
になりやすい
そして、これら以外の自律神経系の症状として
- 便秘
- 睡眠障害
- 起立性低血圧
などがあります。
何らかの症状があっても、そのことに気づかないことが多いので重症化する恐れがあります。
また、自分の痛みへの感覚がないために、相手の痛み感覚に対して共感できず、社会性が欠如することもあります。
次に、日本における先天性無痛無汗症の患者数は何人くらいいるのかについて説明します。
先天性無痛無汗症の日本での患者数は何人くらい?
先天性無痛無汗症の患者数は正確な数字としては不明とされています。
しかし、難病情報センター研究班の調査では130~210名いると推計しています。
このうち、男女の患者数に明らかな差はないとしています。
→ http://www.nanbyou.or.jp/entry/4360
では、次に先天性無痛無汗症に対する治療について説明していきます。
先天性無痛無汗症の治療法は?
先天性無痛無汗症の治療法はありません。
患者さん自身やその家族の方に対して、病気や怪我の予防や異常の早期発見や早期治療ができるようにしてもらうことが一番重要になってきます。
例えば、
- 外傷を起こさないように、身体につける特殊な装具を使用
- 家の中の環境整備(室温のコントロールなど)
- 高体温の予防のための特殊なウエアなどの使用
- 舌や口腔内の粘膜を噛んで傷つけないように歯に保護プレートをつける
などになります。
私達は普段、暑いと服を脱いだり、寒いとエアコンを調整したり、また何か病気になれば痛みを感じて発覚したり、そうして自分の身体を守っています。
だけど、もしそれを感じなくなったとき、恐らくすぐに怪我や病気にかかってしまうと思います。
もし、幼い我が子がこの病気だとしたら、ご両親としては夜も眠れない日々が続いてしまうでしょう。
まだ患者数も少ないためにできる対策といってもそれほど多くはないかもしれません。
でも、そんな中、難病の「先天性無痛無汗症」の患者さんとそのご家族を中心とした
「NPO 無痛無汗症の会 トゥモロウ」という会があります。
この中に、色々な事例や日常生活のアドバイスなどがたくさん書かれています。
→ NPO法人 無痛無汗症の会「トゥモロウHP(ttp://www.tomorrow.or.jp/)
先天性無痛無汗症などについてのまとめ
今回は先天性無痛無汗症について色々説明してきました。
では、まとめてみましょう。
先天性無痛無汗症は指定難病に指定されている病気で、遺伝性感覚自律神経ニューロパチーという疾患に属する病気です。
この遺伝性感覚自律神経ニューロパチーという種類の中には、1~5型までありそのうち4型と5型について先天性無痛無汗症と呼んでいます。
痛み感覚や発汗の機能の調整をする神経に関する遺伝子の一部に、異常を認めることによって起こる病気と言われていますが、まだこれらの遺伝子の異常が症状に結びつくメカニズムはわかっていません。
先天性無痛無汗症になると
- 温度や痛みを感じる感覚がなくなる
- 汗をかかなくなる
などになります。
先天性無痛無汗症の患者数は正確な数字としては不明とされていますが、難病情報センター研究班の調査では130~210名いると推計しています。
以前、先天性無痛無汗症の子供の実際の生活を、海外のドキュメント番組で観たことがあります。
小さい子供たちは、周りのものに興味津々で外では走り回りたいし、色んなことに挑戦したいものです。
親としては好きなように遊ばせてやりたい、でも好きなようにさせてしまうと親の気づかないところで何か異変が進んでいたりします。
どうか安全に子供がある程度の年齢まで成長していって欲しい、という親の願いを思うと本当になんと言っていいのかわからないほど胸が苦しくなります。
そして、このような病気があることを少しでも多くの方に知っていただきたい、と思っています。