今回は、『乳がん検診のエコーとマンモグラフィーの違いは?どっちをするかは年齢別?』というタイトルでお送りします。
乳がんは日本の女性がかかるトップのがんです。
その数は毎年、増加の一途をたどっています。
2016年ではなんと9万人以上が乳がんを診断されています。
その中で、乳がんで亡くなる人の数も増え続けて1万4千人以上となっています。
年齢別で見ると、乳がんは30歳代後半から増え始めて、40歳代から50歳代前半で一番多くなります。
乳がんは早期発見で進行を食い止めたり、早期の治療で治すことも可能ながんです。
30代になったら、なるべく乳がん検診をうけることをおすすめします。
では、今回は乳がん検診の乳腺エコーとマンモグラフィーの違いや、どっちをすればいいのかなどについて説明していきたいと思います。
乳がん検診のエコーとマンモグラフィーの違いはなに?
まず、それぞれの検査について説明していきましょう。
エコー検査
乳がん検診のエコーとは乳腺超音波検査のことです。
乳房全体に、プローブと言われる超音波で感知する部分を当てながら動かします。
(上の画像で医師が手に持っている器具をプローブと言います。)
超音波の器械は、乳腺のみではなく他の様々な臓器を観察することができます。
超音波を乳腺に当てて、その反射を映像化することで乳房の内部を検査することができる画像検査の方法です。
器具を乳房に当てるだけなので痛みはさほど感じません。
検査にかかる時間は、およそ10~15分程度です。
でも、胸を圧迫しながら器具を当てて動かすので、例えば生理前など胸が張っている時は少し痛みを感じるかもしれません。
この検査でわかることは
- 乳腺症(ホルモンが関係して起こるといわれている良性の症状)の発見
- 乳腺のう胞(乳腺に液体のようなものが溜まる病気)の発見
- 乳がんでできるしこりの発見
- しこりの中の状態がわかる
- 乳房の深い部分にあるしこりを発見しやすい
などです。
マンモグラフィー検査
マンモグラフィーとは乳腺・乳房専用のレントゲン撮影です。
このように、透明な板のような器具で乳房を挟んで撮影して調べていきます。
かなり強く乳房を圧迫して上下、左右に挟んで撮影するので、やはり痛みは伴います。
乳房を挟んで撮影することで、しこりとその周りの乳腺の差がクッキリと見えやすくなります。
きれいにキッチリと挟んで撮影しないと撮影できないので、レントゲン技師さんがずっとそばについて、あれこれと指示してくれます。
検査にかかる時間は、およそ20分前後でしょう。
マンモグラフィーでわかることは
- 触診でみつけられないような小さいしこりの発見
- 石灰化(せっかいか)を発見できる
などです。
それぞれの特徴を見ても、まだあまりよくわからないですよね。
結局はエコーとマンモグラフィーはどっちがどうなのか、少し難しいと思います。
もう少しわかりやすくまとめて説明する前に、「石灰化」という言葉について説明していきたいと思います。
マンモグラフィーでわかる石灰化ってどんなもの?
石灰化というのは、マンモグラフィーの検査で発見されやすい症状のひとつです。
石灰化はエコーでは見つけにくいです。
石灰化というのは、カルシウムの沈着のことで、乳房だけではなく身体の色々な部分で起きます。
ですが、石灰化というのが進行してガンになる、というわけではありません。
上の画像は乳房の断面図ですが、乳房の中に乳管という管があります。
もしがん細胞があって増殖していくと、この乳管の内腔に集まってきます。
すると、その部分ががん細胞で詰まってしまって、その中心部分の細胞にまで栄養分が入っていかず、中心部分の細胞だけ死んでしまいます。
この死んだ細胞の部分に、カルシウムが沈着してしまって石灰化となるのです。
がん細胞が増殖してしまった結果、起きてしまう症状のひとつが石灰化というわけです。
ですが、乳腺に起こる石灰化はすべてがん細胞が原因というわけではありません。
乳腺の石灰化の90%以上が良性のもので、詳しい精査の必要はありません。
例えば、乳腺の炎症や良性の腫瘍ができる病気を総称して乳腺症と言いますが、乳腺症でも石灰化はできます。
このような乳がん以外の病気でできた乳腺の石灰化に関しては、マンモグラフィーで判断できるので精査をする必要はありません。
ですので、マンモグラフィーは、ほんのわずかな確率ですが乳がんで起きた石灰化を発見することができる手段であると言えます。
もし乳がんで見られる石灰化の画像と判断できた場合には、その次の精査へと進んでいきます。
では、エコーとマンモグラフィーの違いをまとめてみましょう。
エコー(乳腺超音波) | マンモグラフィー | |
---|---|---|
被爆の心配 | なし | ある(妊娠中は不可) |
しこりの発見 | ・乳腺が多い若い女性でも発見可能・検査をする医師や技師の経験や技術によって差が出ることがある | ・小さなしこりでも発見可能・乳腺が多い若い女性では画像でしこりをはっきり判別できない・レントゲン撮影をする技師の経験や技術は関係ない |
石灰化 | 見つけにくい | 見つけやすい(但し、若い女性は困難) |
痛み | ほとんどない | 痛いという人は多い |
検査にかかる時間 | 約10~15分 | 20分前後 |
などが主な違いです。
では、どっちをするのがいいのかについて説明していきましょう。
エコーとマンモグラフィーはどっちをするべきかは年齢別?
がん検診でのエコーとマンモグラフィー、どっちを選択すべきかは年齢別によって決められることが多いです。
エコーとマンモグラフィーでは、上の表にもあるようにそれぞれ特徴があります。
「乳がん検診でせっかく検査するんだから」と、両方の検査を受けてガンの早期発見をしたほうがいいと思う人は多いのではないでしょうか。
でも、その年齢の乳房の状態によって、適した検査とそうでない検査があります。
マンモグラフィーは、ガンの発見に役立つ石灰化を見つけやすいことが大きな特徴です。
石灰化というのは、画像で見ると白く抜けたような画像で映り込みます。
しかし、40歳くらいまでの若い女性の場合は乳腺の量がかなり多く、それがすべて白く抜けてしまうのです。
ということは、石灰化があったとしても全く映らずわからなくなります。
そのようなことを考えると、若い女性でのマンモグラフィーは検査をする意味がないということになります。
なので、現在ではほとんどの施設で年齢別に受ける検査を決めています。
乳がんの早期発見をするためには
50歳以上 | マンモグラフィーのみ 1回/1~2年 |
40歳以上 | マンモグラフィー+エコーを両方 1回/1~2年 |
30歳代 | エコーのみ 1回/1~2年 |
20歳代 | 特に必要ないが、触診などで何か触れるなど症状があれば早めに受診 |
厚生省では、40歳以上で2年に1回のマンモグラフィー検査を受けることを勧めています。
私自身は娘を30歳代で出産して以降は、ほぼ毎年乳がん検診と子宮がん検診は受けています。
娘を産んですぐに乳房に石灰化が見つかり、大きな病院での精査を受ける段階までいきました。
そして、乳房を穿刺(針で刺す)して細胞をとって調べる検査を受ける直前のギリギリのところでエコーを見直し、
「やはり、この石灰化は様子をみていい良性のものだと思います」
と言われて中断しました。
「あー良かった」とホッとしたのを覚えています。
身体にどこでも、針を刺されると痛いですからね…
それくらい、30歳代の乳房の石灰化というものは判断がつきにくいものなんだと思いました。
そして、この1~2年に1回というのは、1年がいいのか2年空けていいのか、迷うところだと思います。
そんな時には、1回目の検査の際に先生に確認するといいです。
その1回目の検査結果にもよりますし、もし1年後に検査したほうが良ければ先生も指示してくれます。
そうではなく、2年後でも問題なければそれでいいかと思います。
乳がんに関しては早期発見によってほとんどが完治できる病気なので、なにより検診をうけることが大切です。
乳がん検診の検査についてもまとめ
今回は乳がん検診のエコーとマンモグラフィーについて説明してきました。
エコーとマンモグラフィーの違いの表をもう一度みてみましょう。
エコー(乳腺超音波) | マンモグラフィー | |
---|---|---|
被爆の心配 | なし | ある(妊娠中は不可) |
しこりの発見 | ・乳腺が多い若い女性でも発見可能・検査をする医師や技師の経験や技術によって差が出ることがある | ・小さなしこりでも発見可能・乳腺が多い若い女性では画像でしこりをはっきり判別できない・レントゲン撮影をする技師の経験や技術は関係ない |
石灰化 | 見つけにくい | 見つけやすい(但し、若い女性は困難) |
痛み | ほとんどない | 痛いという人は多い |
検査にかかる時間 | 約10~15分 | 20分前後 |
そして、エコーとマンモグラフィーのどちらを選択するかについて
50歳以上 | マンモグラフィーのみ 1回/1~2年 |
40歳以上 | マンモグラフィー+エコーを両方 1回/1~2年 |
30歳代 | エコーのみ 1回/1~2年 |
20歳代 | 特に必要ないが、触診などで何か触れるなど症状があれば早めに受診 |
です。
日本の女性の乳がん及び子宮がん検診については、海外に比べて受診率がかなり低く、最低レベルにあります。
ですが、がん検診を受けることだけで大切な生命のほとんどが助かるのですから、なるべくがん検診は受けるようにしましょう。