寒い季節は皮膚が乾燥してカサカサし、肌トラブルが起きやすくなります。
この記事では、湿疹・カサカサ・ただれなどのかゆみに使われる外用薬(保湿剤・ステロイド外用薬)とかゆみ止めの飲み薬について、日本皮膚科学会などの情報をもとに整理します。
かゆみには様々な原因があります。
皮膚に発疹がないのにかゆい場合、腎臓・肝臓・胆道の病気や糖尿病、内服薬などが原因のこともあります。原因となっている病気があれば、その治療が必要です(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A)。
・カサカサ(皮脂欠乏症・乾皮症)の治療には、一般に保湿剤が用いられます。保湿剤で治療しても悪化して湿疹になった場合は、ステロイド外用薬などの抗炎症薬を併用します(日本皮膚科学会)。
・ステロイド外用薬は、強さが5段階に分類されています。アトピー性皮膚炎では、皮疹の重症度に見合った強さを選びます(アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024)。一般の湿疹での薬の選び方は、診察での判断が前提です。
・ステロイド外用薬の全身への副作用は、適切に使えば日常診療の使い方では通常起こらないとされています。局所の副作用は、強さ・期間・塗る部位で起こりやすさが変わります。
・この記事は一般的な情報で、診断や受診の代わりにはなりません。
湿疹・カサカサ・ただれのかゆみは、何が原因で、どう治療する?
カサカサの状態は、皮脂欠乏症(乾皮症と同義)と呼ばれます。
日本皮膚科学会の「皮脂欠乏症診療の手引き2021」では、皮膚の水分保持機能や表皮被覆機能が破綻して皮膚が乾燥する疾患の総称とされています。
重症化すると強いかゆみを伴い、適切な治療を怠ると、皮膚の一部に炎症を伴う皮脂欠乏性湿疹が起こることがあります。
かき壊しを繰り返して炎症が起こると、湿疹化します。
乾燥の要因として、手引きでは年齢による変化、冬の低湿度や過度の入浴・擦り洗いなどの環境、皮膚や全身の病気・抗がん剤などが挙げられています。
治療については、手引きに次のように書かれています。
- 皮脂欠乏症の治療には、一般的に医療用の保湿剤が用いられる
- 軽微な鱗屑(皮膚のカサカサした粉)や粗造だけで、かゆみを伴わない場合は、環境要因の除去や患者指導、セルフメディケーションで対処する
- 保湿剤による治療にもかかわらず悪化して湿疹化した場合は、ステロイド外用薬などの抗炎症薬を併用する
(出典: 日本皮膚科学会「皮脂欠乏症診療の手引き2021」)
保湿剤の種類と塗り方
手引きでは、保湿剤は次の2つに分類されています。
| 分類 | 特徴 | 主な成分 |
|---|---|---|
| モイスチャライザー | 吸湿性の高い水溶性成分を含み、角層の水分を直接増やす。エモリエントよりも角層の水分を増やす効果が強い | ヘパリン類似物質、尿素 |
| エモリエント | 皮膚を覆って水分の蒸発を防ぎ、角層の水分を間接的に増やす。油脂の膜を作るため、べたつきがあり使用感に難がある | ワセリンなど |
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024では、傷ついた皮膚のバリア機能を補うために、白色ワセリンや亜鉛華軟膏などの皮膚を保護する油脂性軟膏を外用するとされています。
同じガイドラインでは、非ステロイド系の消炎外用薬は、抗炎症作用が極めて弱く、接触皮膚炎(かぶれ)を生じることがまれではないため、使える場面は狭いとされています。
塗り方と生活面の注意は、次のとおりです。
- 1日1回より1日2回塗るほうが、高い保湿効果が期待できる(皮脂欠乏症診療の手引き2021)
- 入浴後は角層から水分が蒸発するため、直後でなくてもよいので保湿剤を塗る(同手引き)。アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024では、1日2回のうち1回は入浴直後が望ましいとされている
- 石鹸・洗浄剤は、使いすぎやすすぎ残しで乾燥が悪化することがある。ナイロンタオルやブラシでこするのは避け、よく泡立てた泡を手のひらで取って優しく洗う(同手引き)
(出典: 日本皮膚科学会「皮脂欠乏症診療の手引き2021」、日本アレルギー学会・日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」)
ステロイド外用薬とは?強さは5段階
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024では、ステロイド外用薬はアトピー性皮膚炎治療の基本となる薬剤とされています。
日本では一般に、強さが次の5段階に分類されています。
| ランク | 成分の例 |
|---|---|
| I群 ストロンゲスト(最も強い) | クロベタゾールプロピオン酸エステル、ジフロラゾン酢酸エステル |
| II群 ベリーストロング | モメタゾンフランカルボン酸エステル、ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル |
| III群 ストロング | デキサメタゾンプロピオン酸エステル、ベタメタゾン吉草酸エステル |
| IV群 ミディアム | ヒドロコルチゾン酪酸エステル、クロベタゾン酪酸エステル |
| V群 ウィーク(最も弱い) | プレドニゾロン |
同じガイドラインでは、アトピー性皮膚炎では皮疹の重症度に見合ったランクを選び、必要な量を必要な期間、的確に使うことが重要とされています。
| 皮疹の重症度 | 主な状態 | 第一選択 |
|---|---|---|
| 軽微 | 炎症症状に乏しく、乾燥症状が主体 | ステロイドを含まない外用薬 |
| 軽症 | 乾燥および軽度の紅斑、鱗屑など | ミディアム以下 |
| 中等症 | 中等度までの紅斑、鱗屑、少数の丘疹、搔破痕など | ストロングないしミディアム |
| 重症 | 高度の腫脹・浮腫を伴う紅斑、丘疹の多発、高度の鱗屑、小水疱、びらん、多数の搔破痕など | ベリーストロング(効果が不十分な場合、その部位に限ってストロンゲストを使うこともある) |
年齢によってランクを下げる必要はありませんが、乳幼児・小児は短期間で効果が表れやすいので、使用期間に注意するとされています。
乾燥を土台とするアトピー性皮膚炎では、剤型は軟膏を選ぶのが基本とされています。
なお、かぶれ(接触皮膚炎)の治療では、原因となる物質を見つけて取り除くことが最も大切で、かゆみや炎症を抑えるためにステロイド外用薬を塗ることが必要とされています(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A)。
(出典: 日本アレルギー学会・日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」、日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「接触皮膚炎の治療と予防法はどのようなものですか?」)
ステロイド外用薬の使い方(量・回数・塗る部位・やめ方)
塗り薬の量と塗り方を、大学病院のチャンネルが解説している動画です。
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024には、次のように書かれています。
- 量:皮膚がしっとりする程度に外用する。目安は、人差し指の先端から第1関節まで、口径5mmのチューブから出した量(約0.5g)が、英国成人の手のひら2枚分(成人の体表面積の約2%)に対する適量(finger-tip unit)。これは軟膏の場合の目安で、ローションは別の目安がある。使用量は皮膚の状態や外用薬の基剤によっても変わる
- 回数:急性に悪化した場合は1日2回(朝、夕:入浴後)が原則。炎症が落ち着いてきたら1日1回に減らす
- 塗る部位:吸収率は、前腕の外側を1とすると、頬は13.0、頭部は3.5、頸部は6.0、陰囊は42とされる。吸収率が高い部位は局所の副作用に特に注意が必要で、長期間続けて使わない。顔には原則としてミディアム以下を使う(重症の皮膚炎では、重症度に応じたランクで速やかに寛解させた後、徐々に減らす、または間隔をあけて使う方法に移ることもある。いずれも医師の判断)
- やめ方:長期間使って炎症を鎮めた後は、急にやめず、寛解(症状が落ち着いた状態)を保ちながら徐々に減らす(または間隔をあけて使う)。可能であれば外用を終了する。再燃を繰り返す人にはプロアクティブ療法(再燃を防ぐため、症状が落ち着いた後も定期的に塗る方法)を検討する
(出典: 日本アレルギー学会・日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」)
ステロイド外用薬の副作用は?「怖い」と言われる理由
ステロイド外用薬の副作用は、全身に出るものと、塗った部分に出るものに分けられます。
全身性の副作用
全身性の副作用は、強いランクを大量に長期間使うと起こりやすくなります。
小児は経皮吸収が高く、体重に比べて体表面積が大きいため、起こしやすいとされています。
一方、ガイドラインには、次のようにも書かれています。
- 全身性の副作用は決して生じないわけではない。ステロイド外用薬を大量に長期使用する場合やバリアの低い病変部に塗る場合には、副腎機能抑制などの全身性副作用に対する十分な検査を定期的に行う必要がある
- 通常の成人患者で、ベリーストロングを1日5〜10g程度の初期外用量で開始し、症状に合わせて減らす使い方なら、3か月使っても、一過性で元に戻る副腎機能の抑制は生じうるものの、元に戻らない全身の副作用は生じない(この量は医師の指示・管理のもとで使う場合の記載で、自己判断で大量に塗ってよいという意味ではない)
- ステロイド外用薬を適切に使えば、日常診療での使い方では全身性の副作用は通常起こらない
局所の副作用
塗った部分の副作用には、毛細血管拡張、皮膚萎縮(皮膚が薄くなる)、皮膚線条、紫斑、多毛、痤瘡(にきび)、接触皮膚炎、細菌・真菌・ウイルスによる皮膚感染症などがあります。
局所の副作用は、次の場合に起こりやすいとされています。
- 高いランクのステロイドを使った場合
- 長期に使った場合
- 顔や陰部などの吸収率の高い部位に使った場合
- 軟膏よりクリームのほうが経皮吸収が高い(基剤の影響)
多くの局所の副作用は、ステロイド外用薬の中止や適切な処置で回復しますが、皮膚線条は多くが元に戻りません。
ステロイド外用薬の使用後にみられる色素沈着は、皮膚炎が続いたために生じる炎症後色素沈着で、ステロイド外用薬によるものではないとされています。
ガイドラインは、病変の程度・部位・年齢に合った強さを選び、必要な期間に限って使うことで副作用の頻度を下げられるとし、過剰に心配せず、局所の副作用に注意しながら、必要なステロイド外用薬を適切に使うことが勧められるとしています。
日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aには、「ステロイドが怖い」という不安について、次のように書かれています。
- 誤解の原因として、内服薬による全身の副作用と外用薬の混同、急に中止したことによる症状の悪化を副作用と捉えることが挙げられている
- 怖がってきちんと塗らないと炎症を十分に抑えられず、結果として使用期間や量が増えてしまう
- 不安や疑問があるときは、皮膚科専門医とよく話し合い、納得して使うことが勧められている
(出典: 日本アレルギー学会・日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」、日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「どうしてもステロイド外用薬をつけるのが怖いのですが?」)
かゆみ止めの飲み薬(抗ヒスタミン薬)は?
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024では、アトピー性皮膚炎のかゆみに対して、抗ヒスタミン薬は、抗炎症外用薬と保湿外用薬による治療との併用でかゆみを軽減する可能性があり、外用療法の補助療法として提案されています(推奨度2)。
使うときは、眠気などの少ない非鎮静性の第二世代抗ヒスタミン薬を選ぶとされています。
同じガイドラインには、次の記載もあります。
- 抗ヒスタミン薬だけで治療した場合の効果を調べた質の高い試験はない
- かゆみを抑える効果は、患者の重症度や皮疹の状態によって異なる
皮膚に発疹がないのにかゆい皮膚そう痒症については、日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aに、次のように書かれています。
- 保湿薬をしっかり塗ることが大切
- 抗ヒスタミン薬にはある程度の効果が期待できるが、かゆみにはヒスタミン以外の物質も関係しているため、かゆみを完全に止めることはできない
(出典: 日本アレルギー学会・日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」、日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「よい治療法はあるのでしょうか?」)
ただれ・じゅくじゅくがあるとき、受診の目安は?
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024には、アトピー性皮膚炎では皮膚のバリア機能や皮膚免疫活性の低下により、細菌・真菌・ウイルスの感染症を合併しやすいと書かれています。
アトピー性皮膚炎に合併する細菌感染症の例が伝染性膿痂疹で、黄色ブドウ球菌やレンサ球菌の感染で起こります。
足の水虫(足白癬)などの真菌が原因の場合は、抗真菌作用のある外用薬を使います。ただし、角質が厚くなる角質増殖型の足白癬や、爪などに白癬菌がいる場合は、飲み薬による治療が勧められます。足白癬は症状がない部分も含めて、最低4週間は毎日治療を続けないと治らないとされています(日本皮膚科学会 皮膚科Q&A)。
足白癬に似た皮膚病もあるため、皮膚科専門医で診断を確かめてから治療するよう勧められています(同Q&A)。
受診の目安として、学会などが書いている内容は次のとおりです。
| 状況 | 書かれていること |
|---|---|
| 外用を続けても皮疹が良くならない | アトピー性皮膚炎の治療で、医師から皮膚科専門医への紹介が望ましいとされる目安として、4週間程度外用を行っても皮疹の改善がみられない例や重症例が挙げられている(アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024)。一般の湿疹の受診の目安を示した記載ではない |
| 外用薬を使っていて、かぶれなどが出た | すぐに受診する(皮膚科Q&A「軟膏やクリームで多い副作用は?」)。かぶれたときは、使っていた薬の名前を記録しておくと原因の成分を特定しやすい |
| 皮膚に発疹がないのにかゆい | 腎臓・肝臓・胆道の病気、糖尿病やホルモンの異常、血液や内臓の悪性腫瘍、内服薬などが原因のことがある。原因となっている病気があれば、その治療が必要(皮膚科Q&A) |
まとめ
・カサカサ(皮脂欠乏症)には、一般に保湿剤が用いられます。ヘパリン類似物質・尿素などのモイスチャライザーと、ワセリンなどのエモリエントがあります。
・保湿剤で治療しても悪化して湿疹になった場合は、ステロイド外用薬などの抗炎症薬を併用します。
・ステロイド外用薬は強さが5段階に分かれ、アトピー性皮膚炎では皮疹の重症度に見合ったランクが選ばれます。一般の湿疹での薬の選び方は、診察での判断が前提です。
・かゆみ止めの飲み薬(抗ヒスタミン薬)は、アトピー性皮膚炎では外用療法の補助として位置づけられています。
・ステロイド外用薬の全身の副作用は適切に使えば通常起こらないとされ、局所の副作用は強いランク・長期間・吸収率の高い部位で起こりやすくなります。
・怖がってきちんと塗らないと、炎症を十分に抑えられず、使用期間や量が増えてしまうことがあります。
この記事は一般的な情報をまとめたもので、診断や受診の代わりにはなりません。
出典(2026年10月17日確認)
- 日本皮膚科学会「皮脂欠乏症診療の手引き2021」
- 日本アレルギー学会・日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「どうしてもステロイド外用薬をつけるのが怖いのですが?」
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「接触皮膚炎の治療と予防法はどのようなものですか?」
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「なぜ皮膚になにもできていないのに痒くなるのですか?」
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「よい治療法はあるのでしょうか?」
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「軟膏やクリームで多い副作用は?」
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「白癬の治療には何があるのですか?」
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「市販の水虫薬は病院でもらう薬とどこが違うのですか?」
- 参考動画:皮膚科専門医が教える外用薬の使い方(大学病院のYouTubeチャンネル)
こんにちは、現役看護師のミカです。