看護師ミカ こんにちは、現役看護師のミカです。

今回は、『梅毒の初期症状 女性編!しこり・かゆみ・発熱・バラ疹・口内炎など』というタイトルでお送りします。


先日、ある医療情報誌を読んでいたときに梅毒の患者が急増しているという情報を知り、正直びっくりしました。

病院等では、入院してきた患者さんにはほぼ全員にB型肝炎や梅毒等の感染症の検査を行ないます。

その患者さんに感染症があるかないかを確認し、感染を拡大してしまうことがないようにするためです。

そのような血液検査でこれまで数え切れないほどの感染症の検査データの結果を見てきましたが、高齢者で抗体を持っている方はおられますが、若い世代の患者さんが梅毒に感染している例は見た覚えがなかったのです。

先日、産婦人科に勤める私の友人に聞いてみたところ、やはり若い世代の梅毒患者さんが最近とても増えているということは実感していると言っていました。

今回はそんな梅毒にかかった女性の初期症状について説明していきたいと思います。



 

梅毒の女性患者の初期症状はどんなもの?

梅毒の初期症状はどんな症状なのでしょうか?

梅毒というのは、梅毒トレポネーマという細菌が原因で発症します。

↓梅毒トレポネーマの顕微鏡写真
梅毒トレポネーマの顕微鏡写真

梅毒トレポネーマが皮膚や粘膜などにある傷口から接触してしまうことで感染する性感染症です。

感染してからおよそ3週間程は、潜伏期間といって症状が出ない時期があります。

その後は症状の経過に伴って、下記のように第1期~第4期に分かれます。

  • 第1期…感染後3週間~3ヶ月の状態
  • 第2期…感染後3ヶ月~3年の状態
  • 第3期…感染後3~10年の状態
  • 第4期…感染後10年以降の状態

そして、初期症状が出てくるのが「第1期」と言われる時期で、主に潜伏期間のあと約3ヶ月の間の状態のことを言います。

初期症状を説明した後で、第2~4期までそれぞれ説明していきたいと思います。

第1期:初期症状(感染後3週間~3ヶ月

この第1期に女性に起こる主な初期症状としては次のような症状があります。

  • 感染した部位(陰部・唇・肛門など)に痛みやかゆみなどを伴わないしこりや潰瘍(*)ができる
  • 口腔内に感染すれば、口内炎のような発疹が出る
  • 外陰部や子宮頸部に小豆大からそら豆大くらいの硬いしこりができる
  • しこりはすぐに消えることが多いが、稀に潰瘍になる
  • 股の付け根の部分(鼠径部・そけいぶ)が腫れる

などです。

*潰瘍(かいよう)とは、皮膚や粘膜の一部がただれて皮膚が欠損してしまう状態

 

これらの症状の出方には個人差がありますが、2~3週間程度で消失し、第2期の症状が出始める3ヶ月後まではほぼ無症状となります。

この時点で、症状が消えたことで病気が治ったと勘違いしてしまうことが多いため要注意です。

また、しこりは多く見られる症状ですが、「かゆみ」や「痛み」に関しては自覚しないことが多いようです。

そして気にされている方が多い「発熱」や「バラ疹」などについては次の第2期の症状としてよく現れます。
 

では、第2期で出てくる症状について説明していきましょう。
 

検査

第2期の症状:バラ疹・発熱など(感染後3ヶ月~3年)

第2期は、感染後3ヶ月~3年の状態ですが、この時期は菌が全身に運ばれていく時期で感染力がとても強い時期です。

手のひらや足の裏、身体全体に赤い発疹が出ることがあります。

この発疹は、小さなバラの花に似ていることから「バラ疹」と言われています。

下の画像は女性の太ももから足にかけてできたバラ疹の写真です。

女性の太ももから足にかけてできたバラ疹の写真

その他には、頭痛や発熱、倦怠感(けんたいかん)などの症状が出ることがあります。

では第3期の症状について説明していきます。

第3期の症状:骨や筋肉などのしこり(感染後3年~10年)

第3期は感染後3~10年の状態です。

この時期は、骨や筋肉、内蔵などに硬いしこりができます。

医療の発達した現代ではここまで悪化してしまうことは稀です。
 

では、次に第4期です。

第4期の症状:麻痺や脊髄の痛みなど(感染後10年以上)

第4期は、感染後10年以上が経過した状態です。

この時期に入ると、心臓や血管、神経まで侵され死に至ることもあります。

多くの臓器に腫瘍ができたり、進行性麻痺や脊髄の痛みなど様々な症状が出てきます。

第4期も3期と同様、現代でここまでひどくなることは稀です。
 

以上が第1期から4期までの症状です。
 
 

これらの梅毒の症状ですが、痛みやかゆみがほとんどなく、一旦現れた症状が消えて症状が出ない時期があることなどでそのまま受診せずに放置してしまう事が多いんです。

そうすると、徐々に状態が悪化してしまう可能性もありますので、なにか異変を感じた時にはなるべく早くに受診するようにしましょう。
 

ではここで、どれくらい梅毒の患者さんが増加しているかを紹介しましょう。

これは私の住んでいる大阪市の例ですが、大阪市も東京に次いで梅毒患者数が多い地域となっています。

下のグラフを見てもわかるように、ここ数年で梅毒の患者数はかなり増加してきています。

そして、女性の患者数もすごい勢いで増えていますね。

梅毒の患者数の推移

健康局大阪市保健所感染症対策課感染症グループ発表によるデータです。
↓詳細はこちらをご参照ください。
大阪市の公式ホームページ(http://www.city.osaka.lg.jp/kenko/page/0000312118.html)
 

このままだと、今後もどんどん増加していく恐れがあります。

それを食い止めるには、女性の梅毒など性感染症に対する認識を深めておくことが大切です。
 

検査

梅毒の初期症状などについてのまとめ

今回は梅毒の女性の初期症状について説明してきました。

では、まとめてみましょう。

女性の梅毒の初期症状はどんなもの?
梅毒は感染後の経過によって第1~4期に分かれています。
そして、初期症状と言われるのは主に第1期の症状です。
それは…

  • 感染した部位(陰部・唇・肛門など)に痛みやかゆみなどを伴わないしこりや潰瘍ができる
  • 口腔内に感染すれば、口内炎のような発疹が出る
  • 外陰部や子宮頸部に小豆大からそら豆大くらいの硬いしこりができる
  • しこりはすぐに消えることが多いが、稀に潰瘍になる
  • 股の付け根の部分(鼠径部・そけいぶ)が腫れる

などです

 

症状の出方には個人差がありますが、多くの場合第1期~2期に移行する際などに症状が一旦治まり、病気が治ったと勘違いして治療が遅れてしまうことが多いようです。

実際、私の産婦人科に勤める友人は、「多くの女性患者さんが第2期の症状であるバラ疹を自覚してからやっと受診に来る」と言っていました。

梅毒という性感染症はとても移りやすいし、かかると治りにくく治療期間が長くなります。

なるべく早い段階で受診し、そして感染者を増やさないためにも早期に検査、そして治療を開始できるようにしましょう。

また、梅毒がどのようにうつっていくのかを知ることはとても大切です。

こちらに梅毒の感染経路について詳しく説明していますので、是非ご覧ください。↓


そして、実際に梅毒に感染した場合に気になるのが治療についてです。
梅毒の治療についても、こちらの記事内で詳しく説明していますのでご覧ください。↓

梅毒の原因菌についてはこちらの記事をご覧ください。↓

梅毒の潜伏期間についての記事は、こちらの記事をご覧ください。↓

梅毒の検査方法などについては、こちらの記事をご覧ください。↓

梅毒の症状であるしこりの特徴についてはこちらの記事をご覧ください。↓

梅毒の末期症状については、こちらの記事をご覧ください。↓