今回は、『天然痘ウイルスの読み方や発見者は?症状は?ワクチンで撲滅されてる?』というタイトルでお送りします。
ウイルスが原因となる感染症には色々な種類のものがあります。
身近なところではインフルエンザ、水ぼうそう、ヘルペスウイルスなどもよく耳にすると思います。
私達がすぐに思いつく感染症というのは、予防にはワクチンがあってかかってしまえば抗ウイルス薬があって…と、直接「死」の恐怖を感じることはないと思います。
しかし、そんな中、感染力が非常に強く時には人を死に至らせることがある、とても怖い感染症が過去にあったことをご存知でしょうか?
それが「天然痘ウイルス」と言われるものです。
今回はこの天然痘ウイルスのことについて説明していきたいと思います。
天然痘ウイルスの読み方や発見者は?
天然痘の読み方は「てんねんとう」です。
天然痘は、痘瘡(とうそう)や疱瘡(ほうそう)とも言われます。
天然痘は「天然痘ウイルス」という病原体に感染することで発症する急性伝染病です。
天然痘ウイルスがいつ頃に発見されたかは定かではありません。
ですので、天然痘ウイルスの発見者が誰であるかも分かってはいません。
ヒトが集団生活を始めた紀元前10000年頃には既に存在していたと言われています。
天然痘ウイルスというのは、難しい名前ですが、ポックスウイルス科のオルソポックスウイルス属に属するウイルスの1種です。
私達医療関係者であっても、実際に天然痘の患者さんが現在では実在しないだけに、習っただろうけども全く覚えていないウイルスの属名です。
人類がウイルスの根絶に成功した最初の病原体で、2017年現在このウイルスはどこにも存在していませんが、アメリカ疾病予防管理センターとロシア国立ウイルス学バイオテクノロジー研究センターの2つの施設には天然痘のウイルス株が保存されていると言われています。
この天然痘の株の保存に関しては賛否両論あるようですが、生物兵器として天然痘ウイルスを用いるために秘密で隠し持っている国があることを懸念していることもあるようです。
新たに天然痘ウイルス患者が発覚した際のワクチンや抗ウイルス薬開発のための保存であるかもしれません。
では、天然痘ウイルスに感染した場合の症状とはどんなものなのでしょうか?
天然痘ウイルスに感染した場合の症状とは?
天然痘ウイルスに感染すると、12~14日の潜伏期間を経て次のような症状が出ます。
潜伏期間の間は何の症状も出ないし、ウイルスが他の人に感染することもありません。
症状は…
- 39℃前後の急な発熱
- 頭痛
- 関節痛
- 腰痛
- 嘔気・嘔吐
- 発疹
などです。
天然痘の特徴でもある発疹というのは、顔面や頭部全体に多く出てきます。
初期には口の中にも発生して、その後全身にも発生します。
発疹の形は真ん中あたりにへそのような凹みがあり、独特な形状です。
少し盛り上がった部分からは水疱(みずぶくれ)ができて、膿(うみ)を持つようになります。
下の画像は天然痘にかかった子供の画像です。
この発疹は3週間くらいでかさぶたになって皮膚が剥がれて治っていきますが、その発疹の跡は残ってしまいます。
かさぶたが落ちてきれいになるまでは、感染する力を持っているようです。
天然痘は助かる場合だと2~3週間で回復しますが、死亡率は20~50%とかなり高い数字だと言われています。
天然痘ウイルスはどのような経路で感染するの?
天然痘ウイルスの感染力は非常に強いと言われています。
感染経路は主に感染者との接触感染になります。
長時間にわたり、直接感染者と接触することで感染し、感染者の体液に直接触れたり、ベッドや衣服などの体液が付いたものに触れても感染します。
また、飛沫感染(ひまつかんせん)と言って、感染者からの飛沫(しぶき)や体液が他者の口、鼻、咽頭(のど)の粘膜に入ってしまうことで感染することもあります。
天然痘ウイルスは基本、動物への感染はないため、虫や動物を介しての感染はありません。
また、ウイルスが空気中を飛んでいたりはしないので、電車やバスなど密閉された空間でも空気感染することはないと言われています。
では、天然痘ウイルスはワクチンによって撲滅されているのでしょうか?
天然痘ウイルスはワクチンによって撲滅されている?
天然痘は1796年に、エドワード・ジェンナーというイギリスの医学者によって世界で初めてワクチンが開発された感染症であると言われています。
ワクチンを接種するエドワード・ジェンナー
このワクチンはとても効果的で、世界中の人々に接種されていたようです。
そしてまた、人類が初めて撲滅に成功した感染症でもあるようです。
最後に天然痘の患者が報告されたのが1977年で、1980年にはWHO(世界保健機関)が天然痘の根絶を宣言して、天然痘ワクチン接種の廃止を推奨しました。
それ以降、天然痘患者は確認されておらず、ワクチンも作られてはいません。
1980年より前にワクチンを受けられた人はいると思いますが、ワクチンの予防接種はその効果は徐々に弱くなっていくため、現在では全ての人が天然痘にかかりやすいということになります。
そんな中、万が一、天然痘ウイルスが発覚されたら…
天然痘ウイルスの株がまだアメリカやロシアに保存されているとしても、即座にワクチンや抗ウイルス薬が再開発され、日本に届くわけではありません。
もし、無防備な私達の周囲で何かのきっかけで天然痘ウイルス患者が発見されたとすれば、その結果生じる大流行は壊滅的なものになると思われます。
天然痘ウイルスについてのまとめ
今回は天然痘ウイルスの読み方や発見者など症状についても説明してきました。
では、まとめてみましょう。
「てんねんとう」と呼びます。
天然痘ウイルスがいつ頃に発見されたかは定かではないため、発見者も不明です。
ヒトが集団生活を始めた紀元前10000年頃には既に存在していたと言われています。
- 39℃前後の急な発熱
- 頭痛
- 関節痛
- 腰痛
- 嘔気・嘔吐
- 発疹
などです。
天然痘ワクチンは1796年に世界で初めてワクチンが開発された感染症だと言われています。
最後に天然痘の患者が報告されたのが1977年で、1980年にはWHO(世界保健機関)が天然痘の根絶を宣言して、天然痘ワクチン接種の廃止を推奨しました。
天然痘という感染症なんて、聞いたことがないと言われる人は多いと思います。
実際、患者もおらずワクチンや抗ウイルス薬も作られていない、そんな穏やかな状況の中でわざわざ天然痘について知りたいと思う人は少ないですよね。
ただ、万が一、どこかでこの病気が発見された時のことを考えると本当に恐ろしくなります。
世界中がパニックに陥る可能性があります。
しかし、もしここで説明してきた天然痘ウイルスの感染経路などについて、少しでも覚えていれば何とか予防対策はとれるかもしれません。
それより何より、天然痘ウイルスが撲滅されたままの状況でこのまま穏やかに経過していくことを望みます。