こんにちは、現役看護師のミカです。今回は、『突発性難聴の初期症状をチェック!耳鳴りや痛みはある?嘔吐や倦怠感は?』というタイトルでお送りします。
突発性難聴は、ある日突然、片方の耳が聞こえにくくなる原因不明の病気です。
耳鳴りや耳の痛み、めまい、吐き気や嘔吐、倦怠感(だるさ)はあるのか、気づいたときにどうすればよいのかを、公的な研究班の診断基準を載せた日本聴覚医学会の「急性感音難聴診療の手引き」などをもとに整理します。

・診断基準の主症状は「突然発症」「高度感音難聴」「原因不明」です。耳鳴り、めまい、吐き気・嘔吐は、難聴の前後に伴うことがある症状として記載されています(厚生労働省研究班の診断基準)。
・診断基準に耳の痛みや頭痛は含まれていません。手引きは、耳痛や耳漏を中耳炎などの感染・炎症性疾患を疑う症状としています。
・倦怠感は、確認した資料に記載がありません(関係がないという意味ではありません)。
・エビデンスの確立した治療法は現時点で存在しません(手引き)。通常はステロイド剤が使われます。発症後7日以内の治療開始が予後良好因子で、ステロイド全身投与は発症2週以内が推奨されています。
・治療しても、約1/3が治癒、約1/3が部分回復、約1/3が不変と報告されています。
・この記事は一般的な情報で、受診の代わりにはなりません。
突発性難聴の初期症状は?耳鳴りや耳閉感はある?
突発性難聴は、突然発症し、原因が明らかでない高度の感音難聴です。
診断基準には、純音聴力検査で隣り合う3周波数で各30dB以上の難聴が72時間以内に生じた、という参考事項があります(日本聴覚医学会「急性感音難聴診療の手引き 2018年版」)。
難聴は、文字どおり即時的なものや、朝、目が覚めて気づくものが多いとされています。
ただし、数日をかけて悪化する例もあり、難聴が良くなったり悪くなったりを繰り返すことはないとされています(同手引き)。
一側性の場合が多い一方、両側に同時に起こる例もあります。手引きでは、罹患者の1%程度に両側性が認められるとされています。
症状を、診断基準(表4)と手引き(各論 突発性難聴・主な症状)・大学病院の解説の記載でまとめると次のとおりです。
| 症状 | 資料の記載 |
|---|---|
| 難聴 | 突然に起こる高度の感音難聴。一側性が多い。聞こえの改善・悪化の繰り返しはない |
| 耳鳴り | 難聴の発生と前後して生じることがある |
| 耳閉塞感(耳が詰まった感じ) | (手引き各論)耳鳴りや耳閉塞感を訴える例は多い。軽症例では難聴の訴えがなくても、耳鳴りや耳閉塞感を自覚することが多い |
| めまい、吐き気・嘔吐 | 難聴の発生と前後して伴うことがあるが、めまい発作を繰り返すことはない |
| 難聴以外の神経症状 | 第8脳神経以外に顕著な神経症状を伴うことはない |
(出典: 日本聴覚医学会「急性感音難聴診療の手引き 2018年版」、大学病院の診療科解説「突発性難聴」)
大学病院の解説でも、難聴が軽度の場合は聞こえにくさを自覚しないことがあり、耳鳴りや耳の閉塞感が出ることがあると説明されています。
手引きにも、軽症例では難聴の訴えがなくても耳鳴りや耳閉塞感などの耳症状を自覚することが多く、難聴だけを主症状として考えると軽度の突発性難聴を見逃すことになる、と書かれています。
耳の痛みや頭痛はある?
診断基準の症状(難聴、耳鳴り、めまい、吐き気・嘔吐)に、耳の痛みや頭痛は含まれていません(日本聴覚医学会「急性感音難聴診療の手引き 2018年版」)。
手引きは、急性感音難聴の問診項目に耳痛・耳漏の有無を挙げ、耳痛や耳漏は中耳炎をはじめとした感染・炎症性疾患を疑う症状としています。
また、急性感音難聴に顔面神経麻痺を伴う場合は内耳道から後迷路の疾患を除外する必要があるとされ、耳介や外耳道に発疹を伴う場合はラムゼイ・ハント症候群が鑑別に挙がるとされています。
嘔吐や倦怠感(だるさ)は?
吐き気・嘔吐は、診断基準の参考事項に「めまい、および吐気・嘔吐」としてまとめて記載されています。
難聴の発生と前後して伴うことがありますが、めまい発作を繰り返すことはないとされています(日本聴覚医学会「急性感音難聴診療の手引き 2018年版」)。
大学病院の解説でも、難聴の発症前後に耳鳴り、めまい、吐き気を伴うことがあり、これらは一度きりで繰り返さないと説明されています(大学病院の疾患ガイド「突発性難聴」)。
手引きでは、初診時にめまいがあるかどうかで重症度分類を区分し、めまいの随伴は予後不良と関連する因子の一つとされています。
倦怠感(だるさ)は、手引きと大学病院の解説のどちらにも症状としての記載を確認できませんでした。
資料に記載がないというだけで、倦怠感が出ないという意味ではありません。

突発性難聴の原因は?なりやすい人は?
原因は特定されておらず、さまざまな病態が入り混じっていると考えられています。
推定される病態として、循環障害、ウイルス感染、自己免疫などが挙げられ、循環障害説とウイルス感染説が有力とされています。ただし、原因となるウイルスは特定されていません(日本聴覚医学会「急性感音難聴診療の手引き 2018年版」)。
大学病院の解説では、内耳の有毛細胞が何らかの原因で傷害されることで起こると説明され、ストレス、過労、睡眠不足、糖尿病などの基礎疾患があると起こりやすいとされています(大学病院の疾患ガイド「突発性難聴」)。
手引きによると、厚生労働省の研究班が行った疫学調査では、突発性難聴の患者は対照群と比べて糖尿病のある人の割合が有意に高く、喫煙者の割合も高い結果でした。
罹患者の頻度は、2001年の調査では全国の受療者数が推定年間35,000人(人口10万人あたり27.5人)、2012年の3県調査では人口10万人あたり60.9人と推定されています。
年齢では60代の発症が最も多く、性差はほとんどないとされています(同手引き)。
見逃さないために:受診の時期と治療
突発性難聴の治療や、似た病気との見分け方を、耳鼻咽喉科の医療機関のチャンネルが解説している動画です。
治療の開始時期について、手引きには次のように書かれています。
- 厚生労働省研究班の疫学調査では、発症後7日以内の治療開始が予後良好因子だった
- 米国のガイドラインでは、治療開始は発症後2週間以内が望ましく、4〜6週では治療効果は限定的と明記されている
- 「早期治療を行うことを推奨する」(エビデンスレベルⅣa、推奨グレードA)とされている。一方、発症24時間以内に治療を開始した群と7日以内の群で治療成績に有意差はないとの報告もある
- ステロイド全身投与は発症2週以内が推奨される。2週以上経過しても、2か月以内であれば何らかの治療が試みられる場合が多いが、何日まで効果が期待できるかを示す明確なエビデンスはない
(出典: 日本聴覚医学会「急性感音難聴診療の手引き 2018年版」)
治療は、エビデンスの確立した治療法は現時点で存在しないものの、通常は、循環障害やウイルス感染に対する障害抑制効果を期待してステロイド剤が使われます。
血管拡張薬、代謝改善薬、ビタミン製剤が併用されることが多いとされています。
厚生労働省研究班の疫学調査では、90%以上の症例でステロイド剤が使われ、実質的な標準治療になっているとされています。
一方で、ステロイド全身投与は「明確なエビデンスはないが治療の選択肢の一つ」とされ、抗ウイルス薬は有効性を支持するエビデンスがなく、使用しないことが強く推奨されています。
手引きには、鼓室内投与について「効果に関するエビデンスは必ずしも確立していないものの、糖尿病合併例など全身投与が困難な例ではステロイド鼓室内投与を検討することが望ましいと考えられる」と書かれています。
高気圧酸素療法は一部の施設で行われていますが、普及度は低く、標準的な治療とはなっていません(同手引き)。
治るの?似た病気との違いは?
聴力の予後は、一般的に不良とされています。
ステロイド剤などの治療を行っても、約1/3は治癒、約1/3は部分回復にとどまり、約1/3は不変と報告されています。聴力が固定化した後の改善は期待できないことが多いとされています。
予後不良との関連が示された因子は、めまいの随伴、脂質異常症の既往、心疾患の既往、高齢(65歳以上)、治療開始の遅れです。
急性期の治療で改善が不十分な場合は、必要に応じて補聴器による治療が行われます(日本聴覚医学会「急性感音難聴診療の手引き 2018年版」)。
急に聞こえが悪くなる病気は他にもあり、手引きは次のような病気との鑑別が必要としています。
| 病気 | 手引きの記載 |
|---|---|
| 急性低音障害型感音難聴 | 耳閉塞感が最も多く、耳鳴り、難聴、自声強聴などがある。低音域の感音難聴で、めまいを伴わないことが特徴。聴力予後は比較的良好とされる。突発性難聴の診断基準では、この病気と診断される例は除外する |
| メニエール病 | 難聴を含む蝸牛症状の発作を反復することが診断基準。低音障害型感音難聴のうち、難聴とめまい症状の反復を伴う場合はメニエール病と考えられる |
| 外リンパ瘻 | 頭蓋内圧の上昇や、鼻かみ・ダイビングなど中耳圧が変化する出来事が誘因と考えられている |
| ムンプス難聴 | 小児例では、流行性耳下腺炎の既往がムンプス難聴の診断に重要 |
| 音響外傷 | 銃火器やコンサートなど明らかな強大音の曝露歴が診断に不可欠 |
| 聴神経腫瘍 | 突発性難聴の2.7〜10.2%が聴神経腫瘍による難聴との報告があり、画像検査(MRI)による鑑別が重要とされる |
(出典: 日本聴覚医学会「急性感音難聴診療の手引き 2018年版」)
大学病院の解説では、聞こえ方がおかしいと感じたら、速やかに専門医療機関を受診するよう書かれています(大学病院の疾患ガイド「突発性難聴」)。
突発性難聴の初期症状のまとめ
・主症状は、突然発症する高度感音難聴で、原因不明。一側性が多く、聞こえの改善・悪化の繰り返しはない
・耳鳴り、めまい、吐き気・嘔吐は、難聴の前後に伴うことがある。めまい発作を繰り返すことはない
・耳の痛みや頭痛は診断基準に含まれない。耳痛や耳漏は中耳炎などを疑う症状とされる
・倦怠感は、確認した資料に記載なし(関係がないという意味ではない)
・発症後7日以内の治療開始が予後良好因子。ステロイド全身投与は発症2週以内が推奨される
・エビデンスの確立した治療法は現時点で存在しない(手引き)
・治療しても、約1/3が治癒、約1/3が部分回復、約1/3が不変と報告されている
この記事は一般的な情報をまとめたもので、診断や受診の代わりにはなりません。気になる症状があれば、医療機関に相談してください。
出典(2026年10月17日確認)
