今回は、『インフルエンザの異常行動とは?イナビルでも起こる?原因や対処方法を説明!』というタイトルでお送りします。
毎年、12月頃になるとどこからともなく流行り始めるのが「インフルエンザ」ですね。
その流行りに乗っからないように、病院等では11月頃からインフルエンザワクチンの接種が始まります。
私達、医療従事者は感染しやすく感染源にもなりやすいため、毎年早々にインフルエンザワクチンを接種し、うがいや手洗いは徹底的にやり始めます。
そんな中でいつも心配だったのは、毎年のようにインフルエンザにかかってしまう子供のことでした。
2007年2月に、タミフルを飲んだ中学生が自宅マンションから飛び降りた事例があって以降、毎年のように異常行動が報告されているからです。
今回はそんなインフルエンザの際の異常行動について原因や対処方法などを説明していきたいと思います。
インフルエンザの異常行動とは?
インフルエンザの異常行動とはどのような事を言うのでしょうか?
この異常行動とは、インフルエンザにかかった患者が急に走り出したり、自宅マンションなどから飛び降りるなどといった普段では考えられない異常な行動を起こすことを言います。
2007年2月に、タミフルを飲んだ中学生が自宅のマンションから飛び降り転落死した事例が報道されました。
その後も、インフルエンザにかかった患者が異常行動を起こす例が後を絶たないのです。
この異常行動ですがどんな例があるのでしょうか?
異常行動とは次のような例です。
- 急に立ち上がって部屋を出ようとする。
- 誰かに襲われるような感じがして、外に飛び出してしまう
- 変な発言をしたり、精神的にも不安定で部屋の中を歩き回る
- 興奮して窓やドアを開けてベランダに出る
- ベランダから柵を乗り越え、転落してしまう
などです。
では、その原因とは何なのでしょうか?
インフルエンザの異常行動が起こる原因は?
インフルエンザにかかった患者に異常行動が起こる原因は、実はわかっていません。
当初はタミフルを飲んだ後に異常行動を起こす事例が多くありましたが、そのタミフルの服用と異常行動との因果関係についてもいまだに不明なのです。
ではタミフル以外の抗インフルエンザ薬で異常行動を起こすことはあるのでしょうか?
イナビルやリレンザなどの抗インフルエンザ薬でも異常行動は起こる?
抗インフルエンザ薬には、タミフル以外にもイナビルやリレンザ、ラピアクタといったお薬があります。
これらのどのお薬を使っても異常行動が起こる可能性はあります。
ここに厚生労働省が発表した「抗インフルエンザ薬の薬を使用した際異常行動の報告」について載せておきます。
この報告書は、4つの抗インフルエンザ薬を使用した時に起こった異常行動の発生数をまとめたものです。
「抗インフルエンザウイルス薬服用時」の異常行動の報告(平成 21 年(2009 年)6月の報告書取りまとめ以降):厚生労働省発表
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11125000-Iyakushokuhinkyoku-Anzentaisakuka/0000185995.pdf
2009年~2017年のそれぞれのシーズンの異常行動の合計を見ると、どのお薬を使ったとしても、何かしらの異常行動が起こっていることが分かります。
タミフル…238件(うち死亡3件)
リレンザ…104件(うち死亡3件)
ラピアクタ…9件(うち死亡0件)
イナビル…53件(うち死亡2件)
となっています。
これらのお薬のうち、タミフルは内服薬、リレンザとイナビルというのは吸入薬のことです。
そして、ラピアクタというのはお薬や吸入薬が使用できない高齢者などの患者が使用する唯一の点滴薬です。
ラピアクタは抗インフルエンザ薬として使用される割合も少なくなるので必然的に異常行動の発生率も低下してきます。
では抗インフルエンザ薬を使用していなければ異常行動には至らないのでしょうか?
抗インフルエンザ薬を使用しなければ異常行動は起こらない?
これまでに説明してきたように、タミフルをはじめとする抗インフルエンザ薬を使用した患者さんに異常行動が起こるケースは多くあるようです。
しかし、インフルエンザにかかった患者さんで、抗インフルエンザ薬を使用していないケースでも異常行動が起こった事例も多く上がっています。
抗インフルエンザ薬を使用していなくても異常行動を起こした報告については下記の厚生労働省の報告に掲載してありまので、ご覧ください。
2015年~2016年、そして2016年~2017年の間で、何も服用していないケースやアセトアミノフェン(鎮痛解熱剤のこと)のみを服用しているケースでも異常行動は報告されていますね。
「インフルエンザ罹患時」の異常行動の報告(2015/2016 年シーズン、2016/2017 年シーズン)
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11125000-Iyakushokuhinkyoku-Anzentaisakuka/0000185996.pdf
ですので、必ずしも抗インフルエンザ薬を使用したからといって異常行動を起こすということではなく、使用していなくてもインフルエンザにかかっただけで異常行動を起こすことがあるということです。
では、インフルエンザにかかった際の異常行動にはどう対処したらいいのでしょうか?
異常行動に対する対処方法は?
インフルエンザの異常行動に対してどう対処すればいいのでしょうか?
対処方法として一番重要なことは、
「小児・未成年者がインフルエンザにかかった時は抗インフルエンザ薬の種類や服用の有無によらず、少なくとも治療開始後2日間は小児・未成年者を1人にしない」
ということです。
そしてその他の対処方法は
- 玄関のドアやベランダや窓などの全ての部屋の施錠を行なう
- ベランダに面していない部屋で患者を寝かせる
- 窓に格子のある部屋で寝かせる
- 一戸建てであれば、なるべく1階の部屋で寝かせる
などです。
これらの対策は、厚生労働省から医療機関などに向けて発表された内容と同じものです。
厚生労働省は、平成29年11月27日に報道関係者各位または、各都道府県に対して医療機関に向けて注意喚起の徹底を依頼しました。
その注意喚起の内容がこれらの対処方法ということです。
これは、インフルエンザにかかった時の異常行動に関連する転落死などの最悪の状態になるリスクを減らすための策です。
↓この内容については下記に記載していますのでご参照ください。
「小児・未成年者がインフルエンザにかかった時は、異常行動にご注意下さい」:厚生労働省より平成29年11月27日発表
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000185998.html
インフルエンザの異常行動についてのまとめ
今回、インフルエンザの異常行動について説明してきました。
ではまとめてみましょう。
インフルエンザの異常行動とは、インフルエンザにかかった患者が抗インフルエンザ薬の使用の有無に関わらず、急に走り出したり、ベランダから飛び降りるなどの異常行動を引き起こすことです。
抗インフルエンザ薬ではタミフルに関わらずイナビルなどの抗インフルエンザ薬でも異常行動の事例は報告されており、薬を使用していなくても報告されています。
インフルエンザの異常行動の原因は不明です。
- 小児・未成年者がインフルエンザにかかった時は抗インフルエンザ薬の種類や服用の有無によらず、少なくとも治療開始後2日間は小児・未成年者を1人にしないこと
- .玄関のドアやベランダや窓などの全ての部屋の施錠を行なう
- ベランダに面していない部屋で患者を寝かせる
- 窓に格子のある部屋で寝かせる
- 一戸建てであれば、なるべく1階の部屋で寝かせる
などです。
私自身も子供が小さな頃は毎年のようにインフルエンザにかかっていましたので、そのたびに異常行動のことが気になり、娘の行動をじっと見守っていたのを覚えています。
まだ現在はその異常行動については何も原因がわかっていないため、インフルエンザにかかった場合には最悪の事態を避けるために親としてできる対応策をとっていくしかありません。
また未成年者でなくても、こういった事例は起こる可能性はありますのでこれまでに説明した対処方法を参考に注意して過ごしましょう。