看護師ミカ こんにちは、現役看護師のミカです。

今回は、『光免疫療法の治験が日本で始まる!実用化はいつ?乳がんや肺がんも治る?』というタイトルでお送りします。


光免疫療法(ひかりめんえきりょうほう)という治療法を知っていますか?

まだ臨床実験の段階ですが、とても画期的な治療法でがん患者さんには待ちに待った治療法だと思います。

米国立がん研究所(NCI)の小林久隆主任研究員が開発したこの「光免疫療法」ですが、米国では2015年より*頭頸部(とうけいぶ)がんの患者を対象にした最初の臨床実験が開始されました。

*頭頸部がん…主に鎖骨よりも上、脳よりも下のほうにできたガンの総称です。例えば、口腔、咽頭、鼻腔、食道などのがんです。

そして2018年1月17日この治療法の実用化を目指す米ベンチャー企業「アスピリアン・セラビューティクス」が、とうとう日本でも同年3月から国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)で再発頭頸部がん患者への治験(臨床実験)が始まることを発表しました。

このニュースはがんを患っている患者さんやそのご家族の方にとっては、その実用化が大変待ち遠しいものになると思います。

私も、晩年すい臓がんに侵されて若くして亡くなった姉にもできれば使ってあげたかった、素晴らしい治療内容だと思っています。

ただ、患者さんの立場で「光免疫療法」の治療についての情報を色々読んでいても、少し治療の内容が難しいのではないかと思い、今回できるだけ分かりやすく紹介しようと思い書いてみました。

では、「光免疫療法」について説明していきたいと思います。



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がんに対する現在の治療方法は?

まずは「光免疫療法」について説明するまえに現在行なわれている、がんに対する治療法について説明していきます。

現在、ガンを退治する治療法には次の3つがあります。

それは、

  • 外科療法…がんができた部位を手術で摘出する方法
  • 薬物療法…抗がん剤などのお薬を投与する方法
  • 放射線療法…放射線を当てる治療法

です。
がんに対する現在の治療方法

でも、これらのがんに対する治療はどの治療法も、がん細胞だけではなくて健康で正常な細胞まで侵されてしまうのです。

そのため、本来がん細胞をやっつけてくれるはずの「免疫細胞」まで弱ってしまいます。

なので、どの治療法もがんの末期などの体力のない患者さんにとっては、とても負担の大きな方法なのです。

そんな中、登場したのが「光免疫療法」というものです。

光免疫療法を一言で言えば、「がん細胞のみを破壊する治療法」です。

今までの治療のように、元気な細胞には全く影響を与えることなく、悪い細胞だけを攻撃して取り除いていくがん治療です。
 

では、光免疫療法の実際の治療方法について説明しましょう。


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光免疫療法の治療方法とは?

少し難しいかもしれませんが、下の図を参考にしながらだと想像しやすいかと思います。

光免疫療法の治療方法

光免疫療法の方法は、ある化学物質と「抗体」というタンパク質を混ぜてそれを身体に注射していく方法です。

この抗体(タンパク質)は、特定のがん細胞の表面にある突起物だけにくっつく特性をもっています。

そして、化学物質というのは「IR700」という色素のことです。

抗体に「IR700」という色素を乗せて、注射で静脈内に注入していきます。

すると、血液の流れに乗った抗体がIR700と一緒にがん細胞めがけてくっついていきます。

そのくっついた場所をめがけて、外部から近赤外線*を当てるとIR700が反応して熱を出すことで細胞の表面に傷をつけるのです。

*近赤外線…波長がおよそ0.7~2.5μmの電磁波です。性質が可視光線に近い特性を持ち、見えない光として赤外線カメラや家電用リモコンなどに応用されています。

 

すると、傷ついた面の細胞の壁が破れて、そこから水分が侵入してきて細胞は膨張して破裂します。

この治療法では近赤外線を当てた1分語には細胞が死んでしまうそうです。

そして、なんとこのとき正常な細胞は全く傷がつかないというのです。

普通、これまでのがん治療で行なわれてきた放射線治療では患部に放射線を当てると、真っ先に壊れるのは正常な免疫細胞でした。

しかし、正常な免疫細胞が壊れることがないということはすごい有り難いことなのです。

なぜなら、この正常な免疫細胞がこのあと更なる活躍をし始めるからです。

実は光免疫療法は近赤外線を当てた部分のがん細胞だけが死んでいくだけではないんです。

正常な免疫細胞は、がん細胞が壊れたあとにその壊れた細胞を食べて、その味を覚えておきその情報を他の仲間と共有しながら、がんを攻撃する免疫細胞達をどんどん活性化していきます。

免疫細胞ががん細胞を攻撃

そして、同じ味を持つガン細胞を攻撃しにいくのです。

なんと、それは例えば同じ種類で他の臓器に転移した「転移がん」をも攻撃しに行くことがわかっています。

治療した部位だけでなく、転移したがんにも効果があるということです。

↓詳細についてはこちらをご参照ください。

近赤外光線免疫療法による新規がん治療:小林久隆
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpstj/76/3/76_172/_pdf
 

この治療法に関しては、米国では2015年から治験が始まり、以降これまでに15人中14人はがんが縮小して、このうち7人はがんが消えたと言われています。

また、がんの治療によく使われる言葉で「奏効率(そうこうりつ)」と言われるものがあります。

奏効率とは、あるがんの治療法を用いた場合に、その治療を施行したあとがん細胞が縮小、もしくは消滅した患者さんの割合を示したものを言います。

奏効率20%以上の場合には効果があるとされ、高いほど効果があるということです。

その奏効率はどのデータを見ていても、

・ある抗がん剤…7~12%
・免疫治療薬…20~30%

だいたい、このような数字です。

そんな中、光免疫療法は2015年の米国での治験の結果、奏効率が80%という数字を記録したそうです。

参照:楽天(株)公式コーポレートブログより
https://rakuten.today/mickeyvoice-ja/aspyrian-cancer-treatment-j.html?lang=ja
 

米国では今後も光免疫療法の臨床実験のデータを出していき、やがては米食品医薬品局(FDA)の審査を通過し認可がおりるとその治療法が実用化されます。

米食品医薬品局(FDA)というのは日本で言えば厚生労働省のような機関ですが、そのFDAが光免疫療法を審査を迅速に進める制度「ファストトラック」に指定したということです。

このファストトラック制度は、重い病気や有効な治療法がない病気に対する治療法を対象に、患者さんに早く新しい治療法を受けられるよう、開発や審査を促進し迅速に対応する制度です。

要するに、症状が重くて治療法がないがん患者さんに対して、少しでも早くに最新の治療法を提供するための手段です。

光免疫療法はこの制度対象になったので、米国では近いうちに光免疫療法が実用化できそうですね。
 

では日本での治験の話に入っていきましょう。


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光免疫療法の日本での治験始まる!楽天が参入?

なんと、日本でも2018年3月から国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)で再発頭頸部がん患者への治験(臨床実験)が始まることになりました。

新薬などや新しい治療法があっても、厚生労働省の認可が下りて実際に実用化できるまで、他国に比べてかなりの年月がかかってしまう日本ですが、治験がこんなに早く始まるのは異例の早さだと言えるでしょう。

この治療法の実用化を目指す米ベンチャー企業「アスピリアン・セラビューティクス」が2018年1月17日に発表したのです。

このアスピリアン・セラビューティクスという会社は、カリフォルニア州に拠点を置く医療ベンチャー企業です。

この会社の筆頭株主で代表取締役会長としても携わっているのが、日本でも有名な「楽天市場」の社長である三木谷浩史氏です。

楽天というと、私自身も楽天カードや楽天市場をいつも利用させてもらっていますが、このような医療分野であるがん治療の事業化に携わっているなんて、正直驚きました。

でも、三木谷社長もご家族にがん患者さんがおられたということがきっかけとなり、自らが進んでこうしたがん治療である医療の分野を勉強されたということです。

身内にがん患者がいて、もう亡くなったけれども今後同じ想いで苦しむ患者さんやご家族に、少しでも早く最新の治療法があることを伝えていきたいという部分では私も同じ想いでいます。
 

では日本での治験が始まった場合、実用化はいつ頃からになるのでしょうか?

光免疫療法の実用化はいつ?

光免疫療法の実用化については、はっきりとしたコメントは出ていません。

臨床実験が2018年3月開始ということくらいです。

そして、厚生労働省の認可が下りて実際に実用化されるまで、他の国に比べると日本はかなり遅い国です。

ですが、アスピリアン・セラビューティクス社は、この光免疫療法の日本国内の展開において、2020年を視野に検討しているとしています。

では、この最先端医療である光免疫療法ですが、乳がんや肺がんなども治るのでしょうか?

光免疫療法で乳がんや肺がんなども治る?

今回行なわれる治験は再発した頭頸部がんの患者さん対象ですが、他のがんでも同じような作用が期待できると言われています。

ただ、すべてのがんに光免疫療法を使うためには、その対象となるガン細胞が出すタンパク質によって何種類かの新しい抗体を使わなくてはいけません。

そして、それらを使うことができれば、食道がん、大腸がん、肝臓がん、すい臓がん、腎臓がん、膀胱がんなどおよそ8~9割のがんの治療が可能になるということです。

また、皮膚がんや前立腺がん、肺がんや乳がんに関しても実験が進んでいる状況です。

ですので、それぞれのがん細胞に適応した抗体が使われれば、多くのがんに対して良い結果を期待できるのではないでしょうか。
 

また、これから始まる治験はこれまで説明したように、「がん細胞自体を攻撃して死滅させる治療法」についてです。

しかし、アスピリアン・セラビューティクス社が更にこの次に計画しているのは、がん細胞自体を攻撃して死滅させる治療法ではありません。

このことについて最後に説明しておきたいと思います。


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光免疫療法のもうひとつの治療法とは?

この治療法は小林久隆先生が2016年8月に論文として発表した内容ですが、がん細胞を直接壊して死滅させるのではなく、別の方法です。

「がん」という、できもののような異物は誰にでもできますが、ヒトの身体には免疫システムが備わっているので、免疫細胞がこれを退治してくれます。

ですので、ほとんどのがんは発生したらすぐにやっつけられるわけです。

しかし、そのがん細胞の周りにはその免疫システムを作動できないようにする「制御性T細胞(せいぎょせいTさいぼう)」という細胞がいるのです。

せっかく免疫細胞が、パトロールしてガン細胞を探し出してやっつけようとしているのに、この制御性T細胞がいるとその動きを妨害されてがん細胞の存在を見逃してしまいます。

そのために、免疫システムは働かなくなり、がん細胞が成長してしまうのです。

そこで、光免疫療法でIR700を付けた抗体を制御性T細胞にくっつけて、近赤外線を当てて壊していくのです。

すると、がん細胞の周りの免疫細胞達は、その動きを妨害していた邪魔者がいなくなるため、がん細胞を攻撃しはじめることができます。

こうして、わずか数十分のうちに活性化してがん細胞を壊し始めて、数時間の間に他の臓器の転移がんにも攻撃を始めると言います。

この攻撃対象も必ずがん細胞のみで正常な細胞は絶対に傷つけないというのだから、本当に素晴らしい治療法だと感じています。

光免疫療法についてのまとめ

今回は最新のがん治療として注目されている光免疫療法について説明してきました。

では、まとめてみましょう。

光免疫療法の治験が日本で始まる?

米国では2015年から光免疫療法に治験が始まっています。
そして日本でも2018年3月から、国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)で再発頭頸部がん患者への治験(臨床実験)が始まることが決まりました。
これは、米国医療ベンチャー企業のアスピリアン・セラビューティクス社(代表取締役会長は楽天市場社長である三木谷浩史氏)が発表したもので、2020年には日本国内での展開を視野に入れていると言う。

 

乳がんや肺がんも治る?
今回の治験は再発した後頸部がんに対するもので、今後はそれぞれの部位のがんに対応した抗体を使って光免疫療法が行えれば、8~9割のがんに対して効果が期待できると言われている。
乳がんや肺がんに対しても同様のことが言えるでしょう。(確定はしていません)

 

これまで、どんながん治療法や抗がん剤が開発、認可されて実用化しても、それらは元気な免疫細胞も壊してしまうものでした。

そして、副作用も強いものが多かったですね。

しかし、この光免疫療法という治療は治療時間も短くて外来で済み、また治療に伴う痛みや苦痛な症状も特別なくて、副作用もほぼないだろうと言われています。

私もこの治験がスムーズに運び、なるべく早い段階で実用化されることを望んでいます。

そうすれば、現在、またはこれからがんで苦しむ患者さんやご家族が少しでも減ります。

がんで苦しむ、あんなつらい想いはできるだけして欲しくない、そう想います。

この治療法でひとりでも多くの患者さんが救われますよう願っています。