今回は、『肺腺がんステージ4の余命や5年生存率は?イレッサ治療の完治の可能性は?』というタイトルでお送りします。
日本のがん患者さんの数は毎年増加傾向にあります。
欧米では、食生活の改善などの対策でがんに罹る(かかる)患者さんが減少していっているというのに、日本では増えているのです。
食生活の欧米化(もはや、欧米の食生活のほうがいいかもしれませんが…)や運動量が少ないこと、また検診の受診率が低いことなどが原因として考えられます。
そんな中、肺がんに罹る患者さんも年々増加しています。
日本国内の2016年のがん死亡数は、約37万4千人(男性22万300人・女性15万3千700人)で、部位別の死亡数は、男性では肺がんが最も多くがん死亡者全体の25%を占めています。
女性では、大腸がんの次に肺がんが多く死亡者全体の14%を占めています。
そして、がん罹患数(りかんすう・かかった人の数)は約101万200例(男性57万6千100・女性43万4千100)となっており、部位別では男性の場合3位が肺がんで14%、女性も3位で10%となっています。
以上は、がん研究振興財団の調査(2017年3月発表)による内容です。
http://ganjoho.jp/data/reg_stat/statistics/brochure/2016/cancer_statistics_2016.pdf
今回はそんな肺がんの中の肺腺がんについて説明していきたいと思います。
肺がんとは?
まずは肺がんについて簡単に説明していきます。
肺がんとは気管支や肺胞(はいほう)で発生する悪性腫瘍のことです。
肺がんは
- 小細胞肺がん
- 非小細胞肺がん
に分けられています。
小細胞肺がん…悪性度は高く転移もしやすいがんですが、化学療法や放射線治療が効きやすいがんです。
非小細胞肺がん…化学療法や放射線治療が効きにくく、早期発見できれば手術による切除が可能です。
肺腺がんは、この非小細胞肺がんに分類されており、他には扁平上皮がん・大細胞がんという種類のがんがあります。
肺腺がんとは?
「腺がん」とは、身体を構成している組織の中で、腺組織と言われる上皮組織から発生するがんのことです。
肺以外では、胃や腸、子宮体部、乳房、卵巣、肝臓、胆のうなどに発生します。
肺にできる「肺腺がん」は、下の図にもあるように肺の気管支の先端付近にできやすいです。
肺腺がんの特徴としては
- 肺がんの中で最も多い(肺がん全体の約60%)
- 自覚症状が出にくい
- 男性より女性に多い
- 初期症状が出にくい
- 男性より女性患者が多い
- 化学療法や放射線治療が効きにくい
などがあります。
では次に、肺腺がんのステージ4とはどのような状態なのか説明していきたいと思います。
肺腺がんのステージ4とはどんな状態?
肺がんのステージというのはその進行度によって、4期に分けられています。
そのステージ4というと、下の図で一番下の枠です。
ステージ4というと、一般的には末期と呼ばれ、肺以外の臓器、例えば脳・肝臓・骨・副腎などに転移している状態です。
肺腺がんステージ4の余命は?
「余命」というのは、その人があとどれくらい生きられるのかを予測した値のことです。
この余命といっても、その人があとどれくらい生きられるかというのは、誰にも予測できないことです。
個人差があり、その人のがんの病状や全身の状態によっても違ってくるので「余命は〇年です」と、ここで説明はできません。
では、そんな余命はどうやって予測するのかというと、「5年生存率」の統計をもとに予測していくわけです。
5年生存率とは、がんの診断から5年経過した後に生存している患者の比率です。
それぞれの臓器別、進行度別によって、厚生労働省でデータを出しています。
次に、肺腺がんステージ4の5年生存率について説明していきたいと思います。
肺腺がんステージ4の5年生存率は?
肺腺がん含む肺がんがステージ4となると、外科的な手術は不可能になります。
既に色々な臓器への転移がみられるステージ4では、肺の腫瘍だけを切除しても他の臓器に転移しているので意味がありません。
そして、その5年生存率はほぼ0%となります。
1年生存率は30%程度という低い数字になっています。
そんな進行性の肺がんに対して、特に肺腺がんなどの非小細胞肺がんに効果のあるお薬が2002年に登場しました。
それが、「イレッサ」というお薬です。
では、肺腺がんステージ4でイレッサ治療をすると完治が期待できるのでしょうか?
肺腺がんにイレッサ治療を行なうと完治できる?
イレッサは分子標的薬と言って、正常な細胞ではなくがんの増殖を促す特定の細胞に働きかけ、がん細胞の増殖を止めて、がんを小さくする効果があります。
このお薬で肺がんの5年生存率は少しではありますが伸びているようです。
しかし、イレッサの治療によって肺がんが完治する訳ではありません。
イレッサにはがんを小さくする効果はあるようですが、投与していくうちにお薬の効きが悪くなって、再度がんが増殖し始めることが多いようです。
イレッサは投与し始めて、およそ1年~1年半で※耐性(たいせい)が生じます。
※耐性とは、医薬品などを投与していくうちに投与されたヒトの身体が抵抗性を得て効力が低下していくこと
耐性が生じた時にまた違うお薬を使うのか否かについては、その時のがんの状態や全身状態などを考えて検討されると思います。
ステージ4という末期の状態になると、体力もかなり低下しています。
どんな治療薬も重篤な副作用が出る可能性はあるため、元気な人には耐えられる副作用であっても、末期の患者さんにとってはその副作用が命取りとなります。
ステージ4という末期での治療薬というのは十分注意して使うようにしてください。
肺腺がんステージ4の余命や5年生存率についてのまとめ
今回は肺腺がんステージ4の状態について説明してきました。
ではまとめてみましょう。
ステージ4は、一般的には末期と呼ばれ、肺以外の臓器、例えば脳・肝臓・骨・副腎などに転移している状態です。
胸腔内にも悪性の胸水が溜まった状態です。
余命はその人のがんの状態や全身の状態にもよるので、個人差がありますが、余命宣告は普通5年生存率を基に推測して宣告します。
肺腺がんステージ4の5年生存率は、0%です。また、1年生存率は30%となっています。
イレッサは肺腺がんによく効くお薬として2002年に登場したお薬ですが、延命の可能性は多少ありますが肺腺がんを完治する可能性は今のところないです。
肺がんだけでなく胃がんや肝臓がんなどは、ステージ4となると5年生存率がグンと下がり一桁になります。
がんの種類によっては、進行が早いものや再発の可能性があるものなどもありますが、がんにかかったからと言ってすぐに悲観的になることはありません。
どんな臓器のがんであってもそのほとんどは早期に発見すれば完治します。
がんにかかる可能性は誰しもが持っているので、なるべく定期的な健康診断をしっかりとしていき、早期発見に努めていくことが必要です。