今回は、『腹膜炎の治療法や治療期間は?穿孔や癒着などでは入院治療が必要?』というタイトルでお送りします。
腹膜炎という病気は、ひとつの原因だけで起こる病気ではありません。
様々な原因で、腹膜に炎症が起きてしまった状態のことを言います。
ですので、その原因となる病気によっても治療法や治療期間は変わってきます。
穿孔や腸の癒着などといった病気も原因として挙げられるのですが、少し名前も少し難しくてわかりにくいですね。
今回はその治療法や治療期間、そして穿孔や癒着などに対する治療に関しても説明していきたいと思います。
腹膜炎とはどんな病気?
まず、腹膜炎の治療法などを説明するまえに、腹膜炎とはどんな病気なのかについて少し触れておきましょう。
腹膜炎というのは、身体の中の腹膜という部分に何らかの原因で炎症が起きてしまった状態のことを言います。
「腹膜」というのがいったいどこにあってどんな役割があるのか、また原因となる病気などについては、下記の記事をご参照ください。
参照:腹膜炎の原因は?ストレスや性行為なども関係ある?症状についても説明!
腹膜炎は病状の進み方によって次の2つに分けられます。
- 急性腹膜炎
- 慢性腹膜炎
この2つです。
急性腹膜炎は、急激に症状が現れ、何も処置をせず放置しておくと死に至ることもある危険な病気です。
そして、慢性腹膜炎は、ゆっくりと病状が進むことで腹水(お腹の中に体液が溜まること)が溜まるのが特徴の腹膜炎です。
では、この腹膜炎の治療法について説明していきましょう。
腹膜炎の治療法や治療期間は?
上記で説明したように、腹膜炎には急性腹膜炎と慢性腹膜炎があります。
そして、これらの2つの腹膜炎は原因がそれぞれ違うため、その治療法も異なってきます。
では、急性腹膜炎と慢性腹膜炎のそれぞれの治療法について説明していきましょう。
急性腹膜炎の治療法は?
急性腹膜炎の治療法は、入院したうえでの緊急手術がほとんどで、手術をしない場合には点滴や内服治療となります。
次に挙げる病気が原因となり腹膜に炎症が起きます。
なので、その原因となる病気を治す処置をします。
また同時に、胃や腸などの穿孔(せんこう・穴があくこと)で消化液やウミなどがお腹の中に漏れて汚染してしまった場合には、お腹の中を洗浄するなどといった処置も必要になってきます。
では、原因となる病気別に説明していきましょう。
- 胃や十二指腸潰瘍の穿孔(胃や十二指腸に穴があくこと)…あいてしまった穴をふさぐ手術をします。
- 虫垂炎(ちゅうすいえん)…手術で虫垂(ちゅうすい・盲腸のこと)を取り除きます。
- 胆のう炎…身体の外から胆のうに管を入れて中にある胆汁を身体の外に抜く処置をするか、または状況次第で胆のうを取り除く手術をします。
- 急性膵炎…基本的には内服治療で炎症を抑えます。ただし、重症の場合には、開腹手術をしてお腹の中のウミを出します。
- 骨盤腹膜炎…抗生物質の点滴治療や内服治療で炎症を抑えます。炎症の状態がひどい場合には、開腹手術をしてお腹の中のウミを出します。このように、開腹手術でウミを出す場合には、消化液やウミなどで汚染されたお腹の中を生理食塩水などで十分洗い流します。そして、そのあともまだ残っているウミを身体の外に排出させるために、数日間ビニールの管を身体の中に入れておき、その先を身体の外へと留置して排出を促します。
急性腹膜炎の治療期間は?
急性腹膜炎で入院して治療した場合には、症状や病状によって違うのではっきりした日数は言えませんが、だいたい2~4週間、それ以上になる場合もあります。
その患者さんの年齢、体力、もともと持っている持病などの関係、色々な条件で入院期間は短くなったり長くなったりします。
ですので、早くて2週間、長くなるとそれ以上(はっきりとはわかりません)の治療期間になるでしょう。
慢性腹膜炎の治療法は?
慢性腹膜炎には、結核菌が腹膜に感染して起こる結核性腹膜炎や、悪性腫瘍(がん)によって起こる癌性腹膜炎などがあります。
これらの慢性腹膜炎の治療は基本的にお薬の治療が中心となります。
原因となる病気の内服治療や点滴などになりますが、腹水(お腹に溜まった液体)を抜くために管を入れて処置することもあります。
慢性腹膜炎の治療期間は?
慢性腹膜炎は主に原因となる病気の治療となるので、結核やがんの治療を受けることになります。
ですので、その病気によって、またはその病気の重症度などによって治療期間はまちまちで、はっきりとは言えません。
では、穿孔(せんこう)や癒着(ゆちゃく)などでは入院治療が必要となるのでしょうか?
穿孔や癒着などでは入院治療が必要?
胃や十二指腸潰瘍などで穿孔(腸に穴があいてしまうこと)を起こした場合、その消化液などが漏れて腹膜に炎症を起こします。
その場合は入院したうえでの緊急手術が必要です。
その手術というのは、その穴をふさぐ処置とお腹の中にウミがあればそれを洗浄する処置になります。
また、癒着というのは、お腹の手術(虫垂炎や胃・十二指腸潰瘍などの手術)をしたあとに、腸や組織同士がくっついてしまう状態のことです。
腸がくっついてしまうと、通過障害が起こり腸の内容物がスムーズに通らなくなるので、腹痛や嘔気嘔吐などが現れます。
この症状が軽い場合は手術ではなく、絶食して点滴治療をし通過障害の改善を試みます。
しかし、腸閉塞(ちょうへいそく)と言って、腸が完全に詰まってしまい腸の内容物が全く通過しなくなると、強い腹痛や嘔気、嘔吐などが現れることがあるのです。
そして、もっと症状が悪化すれば腸が破裂して腹膜炎を起こしてしまうことがあり、命に関わる危険性もあります。
そうなると、すぐに入院して緊急手術を行うことになります。
腹膜炎の治療法や治療期間などに関するまとめ
今回は腹膜炎の治療法や治療期間などについて説明してきました。
では、まとめてみましょう。
腹膜炎はその原因となる病気によって、治療法が変わってきます。
基本的には、その原因となる病気に対する処置、そして、お腹の中にウミや消化液などがあって汚染されている場合には洗浄する処置なども必要です。
急性腹膜炎に対する治療は、ほとんどが手術となります。
その入院治療の期間は2~4週間くらいですが、その病状などの条件によってまちまちなので、はっきりとは言えません。
胃・十二指腸潰瘍などで腸に穴があいてしまう状態のことを穿孔と言いますが、中の腸液や消化液などがお腹の中に漏れてしまうので、その穴をふさぐ手術が必要になってきます。
この場合は入院治療です。
また、癒着というのはお腹の手術をしたあとに臓器や組織同士がくっついてしまう状態のこと言います。
症状が軽い場合には、入院して絶食、点滴治療が必要になってきます。
しかし、完全に腸が詰まってしまう腸閉塞になると、症状が悪化してしまえば腸が破れて腹膜炎になるので入院し緊急手術となります。
腹膜炎は症状が悪化すると命の危険も伴うので、一刻も早い処置が必要になる病気です。
治療に関しては、入院したうえでの手術治療が多くなってきます。
その患者さんによって、年齢や体力など色々条件は違いますが、なるべく早く受診し治療を受けるようにしましょう。