今回は、『急性精巣上体炎とはどんな症状が出る病気?発熱や膿などが出てうつることも?』というタイトルでお送りします。
先日、職場の事務職の若い男性職員が私のところに来まして、
「左の鼠径部(そけいぶ)の辺りが痛いんです。」
と、しんどそうな表情をして訴えてきました。
尿管結石かとも思いましたが、症状的にはやはり違います。
しかし、いずれにせよ泌尿器科的な病気だと思ったので痛み止めの座薬を持っていたのでそれを使うことと、泌尿器科への早めの受診を勧めました。
そして翌日、強い痛みと発熱があり、仕事を休んで病院を受診した結果、「急性精巣上体炎」という診断だったそうです。
男性であっても実際に体験しない限りはあまり聞いたことがない病名だと思います。
今回は、この「急性精巣上体炎」という病気について説明していきたいと思います。
急性精巣上体炎とはどんな病気?
急性精巣上体炎の症状について説明するまえに、この病気について少し触れておきましょう。
まずは精巣上体炎の「精巣上体」という部分ですが、副睾丸(ふくこうがん)とも言われ、男性はさすがにご存知の方も多いかもしれません。
下の画像で説明しましょう。
この画像は男性生殖器を横から見た断面図です。
精巣というのは、いわゆる睾丸(こうがん)のことで、その横には精巣上体(副睾丸)という小さな器官がくっついています。
精巣で作られた精子は、この精巣上体を通ります。
そして、何らかの原因で尿の中にいた細菌が精巣上体に侵入してしまい、炎症を起こしてしまう状態のことを精巣上体炎と言います。
しかし、尿中にはそんなに細菌が多いわけではありません。
ただ、高齢者の方などに多い、前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)や尿道狭窄(にょうどうきょうさく)などの病気があると尿が汚染されやすく、細菌も多くなり炎症を起こしやすくなります。
細菌の種類は、大腸菌が多いと言われています。
そして、若い方の場合、性病であるクラミジアや淋菌(りんきん)が原因となり精巣上体が炎症を起こすことがあります。
では、急性精巣上体炎の症状について説明していきたいと思います。
急性精巣上体炎の症状は?
次のような症状があります。
- 下腹部、または鼠径部(そけいぶ)の痛み
- 陰のうの痛み
- 陰のうが硬く腫れあがる
- 陰のうの赤み
- 38℃以上の発熱
などです。
最初は下腹部の軽い痛みから始まることが多く、徐々に陰のうの痛みが出現します。
次第に陰のうは赤く硬く腫れあがり、触れると強い痛みを感じます。
精かんを通って炎症が拡がるため、鼠径部の辺りの痛みを訴える人もいます。
また、熱は高めで、私の職場の男性職員の熱も39℃以上の高熱が出ました。
そして、もし炎症が悪化してしまうと陰のうの中に膿(ウミ)が溜まってしまい、陰のうに一部を切って膿を出す処置が必要なこともあります。
そのようなケースでは入院したうえで治療を受けることになります。
では、こんなつらい症状が出る急性精巣上体炎ですが、この病気は人から人にうつるのでしょうか?
急性精巣上体炎はうつる病気?
急性精巣上体炎という病気について、性病であるクラミジアや淋菌(りんきん)が原因となり精巣上体が炎症を起こすことがあると説明しました。
クラミジア、または淋菌などの性感染症は、性交渉によって病原微生物や菌が尿道に侵入して炎症を起こし「尿道炎(にょうどうえん)」になります。
そして、その菌が精巣上体にまで侵入して炎症を引き起こし、急性精巣上体炎となります。
ですので、もし性感染症が原因となって急性精巣上体炎になったのであれば、それをまた女性にうつす可能性はあるので、「うつる病気」であると言えます。
淋菌・クラミジアに関する説明については次の記事をご参照ください。
淋菌またはクラミジアの症状や治療について記載しています。
▶ 淋菌に感染した時の治療期間は?治療方法は点滴や注射で行う?治療薬も紹介!
▶ クラミジアの女性の症状はかゆみや臭い?膀胱炎のような出血もある?
▶ クラミジアの女性の治療期間や治療方法は?薬や治療費も説明!
では、最後に急性精巣上体炎の治療はどんなことをするのかについて説明していきましょう。
急性精巣上体炎の治療は?
治療は、次のような内容です。
- 抗生物質の内服
- 陰のうを冷やす
- 安静にする
以上のような方法となります。
精巣上体が炎症を起こしているので、局所を冷やして安静にしておくことが炎症を鎮めるのに効果的です。
もし、症状が強く、腫れや痛みが激しく歩くことも困難な場合には、入院して点滴治療を行うこともあります。
治療を開始すると、だいたい3~4日くらいで症状は改善していくことが多いようです。
急性精巣上体炎の症状についてのまとめ
今回、急性精巣上体炎の症状などについて説明してきました。
では、まとめてみましょう。
主に次のような症状が出ます。
- 下腹部、または鼠径部(そけいぶ)の痛み
- 陰のうの痛み
- 陰のうが硬く腫れあがる
- 陰のうの赤み
- 38℃以上の発熱
特に症状が強くなると、発熱や膿が出ることはあります。
また、もし精巣上体炎の原因が性感染症である淋菌やクラミジアであった場合、性交渉によってまた他の人にうつす可能性はあります。
精巣上体炎という病気は症状があるのに放置したり、治療をきちんと受けない場合には炎症が長引いてしまうこともあります。
少し場所が場所なので、恥ずかしいこともあり受診が遅れることもあるでしょう。
しかしなるべく早くに受診・治療を開始することで、スムーズに症状が改善されることが多いので、症状が出たら早めに泌尿器科を受診するようにしましょう。