SBARとは?看護師の報告の型とI-SBAR-C(ISBARC)の項目・例文

SBARとは?看護師の報告の型とI-SBAR-C(ISBARC)の項目・例文 看護師
看護師ミカ こんにちは、現役看護師のミカです。

今回は、『SBARとは?看護師の報告の型とI-SBAR-C(ISBARC)の項目・例文』というタイトルでお送りします。


急変に気づいて当直医へ電話するとき、何から話せばよいのか、どこまで伝えればよいのか、迷うことはありませんか。報告の順番をそろえる型に、SBAR(エスバー)や、それに項目を足したI-SBAR-C(ISBARC)があります。

この記事では、SBARとI-SBAR-Cの各項目の意味、日本語訳が資料ごとに違う点、報告の組み立て方、穴埋めで使える例文をまとめました。根拠は、米国AHRQ(医療研究・品質局)のTeamSTEPPSの解説ページ、IHI(Institute for Healthcare Improvement)のSBARツールの解説、国内の病院・団体が公開している医療安全の資料、看護師向け媒体「看護roo!」の連載・転載記事です(2026年10月19日確認)。

どんな状態なら医師へ報告するか、という判断の基準はこの記事では扱いません。

SBAR(エスバー)とは

SBARは、Situation・Background・Assessment・Recommendationの頭文字をとった報告の型です。米国のチームトレーニング「TeamSTEPPS」を公開しているAHRQは、SBARを次のように説明しています。

  • SBARは Situation, Background, Assessment, and Recommendation (or Request) の略で、患者やチームメンバーの状態などについて、チームで情報を共有するための構造化されたコミュニケーションの枠組み
  • TeamSTEPPSのツールの中でも最も広く使われているものの一つ
  • どんな会話の組み立てにも使えるが、特に患者の状態が急速に悪化しているときなど、チームがすぐに注意を向けて行動する必要がある重要な会話で役に立つ

Rは「Recommendation(提案)」だけでなく「Request(要請)」とも書かれます。AHRQのページでも「Recommendation (or Request)」と併記されています。

SBARはどこで作られたのか

IHIのSBARツールの解説では、コロラド州のカイザー・パーマネンテ(Kaiser Permanente of Colorado)のMichael Leonard医師が、同僚のDoug Bonacum氏、Suzanne Graham氏とともにこの手法を作ったと説明されています。IHIは、SBARをチームのメンバー間で患者の状態について伝えるための枠組みとし、配布しているワークシートやガイドラインは医師への報告を例にしているものの、ほかの職種にも合わせて使えるとしています。

日本語の訳は資料によって違う

SBARの日本語訳は、資料によって言葉が違います。特にAとRの訳が分かれています。

資料 S B A R
京都大学医学部附属病院 医療安全管理室LETTER(2024年9月) 状況 背景 評価 提案
国立病院機構 村山医療センター 医療安全ニュース(2012年) 状況 背景 判断 提案
北海道厚生局 医療安全ワークショップの講演資料(平成26年度) 状況 背景(バックグラウンド) 評価(アセスメント) 提案・要求(Recommendation/Request)
全国在宅医療マネジメント協会のI-SBARCの解説 状況、状態 背景、経過 評価 依頼、要請

京都大学医学部附属病院の医療安全管理室LETTERは、SBARを「緊急対応が必要な状況におけるコミュニケーションツール」として紹介しています。北海道厚生局のワークショップ資料には、SBARを「がんばあって」と覚える語呂も載っています。

勤務先で使っている訳語がある場合は、それに合わせると周りと話が通じやすくなります。

S・B・A・Rの各項目で伝えること

S・B・A・Rの各項目で伝えること

AHRQの解説と、国立病院機構 村山医療センターの医療安全ニュースから、各項目で何を伝えるのかを整理します。

S(Situation:状況)

AHRQは、Situationを「患者にいま何が起きているか」を述べる部分とし、ふつうは報告する人が誰か、年齢や性別などの患者を特定する情報、いまの問題や状況を短く述べることから始まる、と説明しています。

村山医療センターの資料では、状況として次の4つを挙げています。

  • この連絡が必要となった状況
  • 患者の年齢や性別、疾患や治療
  • 自分が問題としていること
  • 患者の状態変化に関するスタッフの判断

B(Background:背景)

AHRQは、Backgroundを、いまの状況に関係する既往、症状、検体検査や画像検査の結果などの臨床的な背景を伝える部分としています。

村山医療センターの資料では、患者の既往歴やこれまでの経過、詳しい説明、患者の精神状況や意識状態の変化を挙げています。全国在宅医療マネジメント協会の解説は、夜間や休日などに担当以外の医師へ報告する場合は、基礎疾患や受けている治療(例として人工透析)の情報も伝えるとしています。

A(Assessment:評価・判断)

AHRQは、Assessmentを、報告する人が何が問題だと考えているかを伝える部分とし、背景の情報や既往、観察をもとに看護師などが評価した内容を述べるとしています。バイタルサインのような客観的なデータを含めてもよいとしています。

村山医療センターの資料では、自分が問題と考えることと、患者の状態の予測(安定・悪化・緊急)を挙げています。全国在宅医療マネジメント協会の解説は、Aはあくまでも報告者の考えであり、診断ではないと書いています。

R(Recommendation/Request:提案・要請)

AHRQは、この部分で最初の提案と、何がいつ必要かを伝え、相手の返答を復唱して正確さを確かめる(Repeat-Back)としています。

村山医療センターの資料では、いま必要と思われることと、具体的に指示や指示変更が必要なことを挙げています。全国在宅医療マネジメント協会の解説は、様子を見ることになった場合に、次にどのタイミングで報告するかも提案するとしています。

AHRQが挙げている使い方の注意

  • 自己紹介を忘れない。相手が自分を知っていると思い込まない
  • SBARはメニューのように使える。どの部分をどの順番で使うかは、チームの必要に応じて決める
  • 実際に言葉に出すと順番を外れにくい。AHRQは英語で “The situation is…, The background is…, My assessment is…, I recommend…” という言い出しを例に挙げています

I-SBAR-C(ISBARC)とは:IとCを足した形

I-SBAR-Cは、SBARの前にI(Identify)、後ろにC(Confirm)を足した形です。表記は「I-SBAR-C」「ISBARC」「I-SBARC」などと資料によって違います。

項目 英語 全国在宅医療マネジメント協会の解説での訳
I Identify 報告者、対象者の同定
S Situation 状況、状態
B Background 背景、経過
A Assessment 評価
R Recommendation 依頼、要請
C Confirm 復唱確認(口頭指示の復唱確認)

看護roo!の連載『あなたの報告はOK? NG? 新人ナースのホウレンソウ』(執筆:川原千香子・愛知医科大学医学部シミュレーションセンター講師、2016年掲載)は、次のように説明しています。

  • SBARは状況から話し始める形になっているが、最初に自分が何者で、誰の報告をしたいのかを宣言することが安全面からも求められるため、Identifyを足した「I-SBAR」が用いられてきている
  • 口頭指示、特に電話での報告では、指示内容を復唱し、複数者で確認することが求められるため、Recommendationの後にConfirmを足した「I-SBARC」に発展している

全国在宅医療マネジメント協会の解説も、近年はIdentifyとConfirmが加えられて「I-SBARC」に発展している、としています。

なお、今回確認したAHRQのSBARの解説ページでは、IやCは項目名としては使われていません。AHRQのページでは、Sの説明に報告者が誰かを述べること、注意点に自己紹介を忘れないこと、Rの説明に相手の返答を復唱すること(Repeat-Back)が書かれています。I-SBAR-Cを誰が最初に使い始めたのかは、今回の調べでは一次資料で確かめられませんでした。

I(Identify)で伝えること

全国在宅医療マネジメント協会の解説では、報告している人の所属と氏名、対象の利用者の氏名を伝えるとしています。村山医療センターの資料も、唐突に話し始めると相手にうまく伝わらないため、まず自分が何者かを告げ、最初に用件を簡潔に述べると、相手が話を受け止めやすくなるとしています。

C(Confirm)で伝えること

全国在宅医療マネジメント協会の解説は、急変時や緊急時はコミュニケーションエラーが生じやすいとし、指示や提案を受けたら「分かりました」だけで終わらせず、必ず復唱して相手に確認してもらうとしています。

AHRQは、TeamSTEPPSのツール「Check-Back(Repeat-Back)」を、やりとりした情報を確かめるための閉ループのコミュニケーションとして説明しています。例として、看護師が電話で医師の指示を受け、カルテに記録して医師に読み上げ、医師が「Correct(その通り)」と返して確認を閉じる場面を挙げています。

SBAR・I-SBAR-Cで報告を組み立てる手順

1. 電話をかける前に材料をそろえる

1. 電話をかける前に材料をそろえる

村山医療センターの資料は、SBARを職場で使うときの注意点の一つとして、カルテなどの必要書類を必ず手元に置き、相手の質問に答えられるようにすることを挙げています。IHIも、医師へ報告する前に情報を整理するためのSBARワークシートを公開しています。

大阪大学医学部附属病院のサイトに掲載されている、東北大学病院 看護管理室によるICUでのSBARトレーニングの2011年の発表資料では、医師への報告にも使えるように、ナースステーションの電話の脇にSBARカードとメモ用紙を設置している、と紹介されています。

2. 項目ごとにメモを作る

項目ごとに書き出すメモの例です。項目の中身は、上の「各項目で伝えること」を参考にしてください。

項目 メモに書くこと
I 自分の所属・名前、患者の病室・氏名、主治医
S いま起きていること(いつから・何が)
B 入院の理由・経過・既往、いまの観察結果
A 自分が何が問題だと考えているか(分からなければ、分からないことも)
R 相手にしてほしいこと(診察・指示・応援など)
C 受けた指示を書き取る欄

3. 指示を受けたら復唱して確認する

AHRQのCheck-Backの例のように、指示を受けたら書き取り、読み上げて相手に確認してもらいます(C)。全国在宅医療マネジメント協会の解説は、様子を見る場合に次にどのタイミングで報告するかを提案することも挙げています。

SBAR・I-SBAR-Cの例文(穴埋めの型)

報告の型を確かめるための例文です。〇〇には実際の観察結果を入れます。どの値や様子のときに報告するかを示すものではありません。報告の基準や連絡の手順は、勤務先の手順書と医師の指示に従ってください。

例1:夜間に当直医へ電話で報告する(I-SBAR-C)

項目 例文
I 「〇階〇〇病棟の看護師の〇〇です。〇号室の〇〇さんのことでお電話しました。主治医は〇〇先生です。」
S 「〇時ごろから、〇〇さんが〇〇を訴えています。」
B 「〇〇で入院して〇日目の〇歳の方で、〇〇の既往があります。いまのバイタルサインは〇〇で、〇時に測ったときは〇〇でした。」
A 「原因は分かりませんが、〇時と比べて状態が変わってきていると考えています。」
R 「一度診察していただけますか。それまでに準備しておくことがあれば指示をお願いします。」
C 「〇〇を〇〇、ですね。〇時にもう一度ご報告します。」(指示を書き取り、読み上げて確認してもらう)

村山医療センターの資料には、研修医から当直医への報告場面の例があり、Aで「問題が何か今の段階ではわかりませんが」と前置きしたうえで状態が悪くなっていると伝え、Rでなるべく早く診てほしいと頼む形が示されています。

例2:受け持ち患者のことをリーダーへ報告する(I-SBAR)

例2:受け持ち患者のことをリーダーへ報告する(I-SBAR)
項目 例文
I 「〇〇です。〇号室の〇〇さんのことで報告です。」
S 「訪室したら、〇〇さんが〇〇の状態でした。」
B 「〇時の巡視のときは〇〇でした。いま測った〇〇は〇〇です。」
A 「一人では対応が難しいと考えています。」
R 「応援をお願いします。〇〇(必要な物品)も持ってきてください。」

看護roo!の連載は、ナースコールでリーダーへ報告する場面について、一人での対処が難しいと判断したら、説明に時間をかけるより応援を頼むことをはっきり伝えること、同室の患者さんのナースコールで訪室した場合などは様子を見るつもりで何も持っていないことも珍しくないため、バイタルサインの測定用具や緊急カートなどの物品も依頼することを挙げています。

AとRが言いにくいときの考え方

看護roo!に転載されている『いまさら聞けない!急変対応Q&A』(照林社)にも、SBARを使ったドクターコールで「A」「R」が伝えにくいという悩みを扱った回があります。今回確認した資料には、次のような考え方が書かれています。

  • Aは診断ではない。全国在宅医療マネジメント協会の解説は、Aは報告者の考えであって診断ではないとしています
  • 原因が分からないときの伝え方。看護roo!の「SBARを使ったドクターコール」の回は、病態予測ができない場合は「何が起きているかわからないが、状態が悪い」と伝えるとしています。全国在宅医療マネジメント協会の解説にも「原因はよく分かりませんが、状態が徐々に悪くなっています」という例があります
  • Rでは相手にして欲しい行動をはっきり伝える。全国在宅医療マネジメント協会の解説は、状況・背景・評価から相手にして欲しい行動をはっきり伝えるとし、経過観察であれば次にどのタイミングで報告が必要かなども提案するとしています
  • 応援が必要なら、そう伝える。看護roo!の連載『新人ナースのホウレンソウ』は、一人では対処が難しいと判断したら、説明に時間をかけるより応援を頼むことをはっきり伝えるとしています
  • 報告の目的を意識する。看護roo!の連載『新人ナースのホウレンソウ』は、報告は事実だけを伝えることとは異なり、何のためにその報告をするのかが大切だとしています

看護記録の型(SOAP・DAR)について

AHRQやIHIはSBARを、チームのメンバー間で患者の状態などを伝える枠組みとして説明しています。看護記録を書くときの型については、フォーカス看護記録とは?DARの書き方と例文・SOAPとの違いで解説しています。

まとめ

  • SBARは Situation・Background・Assessment・Recommendation(Request)の頭文字。AHRQはTeamSTEPPSで最も広く使われているツールの一つとしています
  • 日本語訳は資料によって違い、Aは「評価」「判断」、Rは「提案」「提案・要求」「依頼、要請」などと訳されています
  • I-SBAR-C(ISBARC)は、最初に報告者が名乗り、対象の患者を伝えるI(Identify)と、指示を復唱して確かめるC(Confirm)を足した形です
  • 電話の前にカルテなどの必要書類を手元にそろえ(村山医療センター)、受けた指示は復唱して確認してもらいます(AHRQのCheck-Back)

最後までお読み頂いてありがとうございました。

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