こんにちは、現役看護師のミカです。今回は、『セルフケア不足の看護計画の書き方|原因別・疾患別の例文つき』というタイトルでお送りします。
セルフケア不足の看護計画は「アセスメント→問題→目標→3つの計画」の順に立てる
セルフケア不足の看護計画は、アセスメント、看護問題、看護目標、O-P・T-P・E-Pの順に組み立てると、迷わず書き進められます。
大事なのは、「できないから介助する」で終わらせないことです。なぜ自分でできないのかを見極め、その原因に合わせて計画を書きます。
この記事では、各ステップで何を書くかを順に説明します。そのあとで、原因別・領域別・疾患別の例も紹介します。自分の受け持ち患者さんに近い部分から読んでも大丈夫です。
全体の流れと、それぞれで書くこと
計画づくりは、アセスメント、看護問題の把握、計画の立案という段階を踏んで進めます。前の段階の内容が、次の段階の土台になります。前の段階の内容が、次の段階の土台になります。
- アセスメント:情報を集め、セルフケアが不足している内容と原因を分析します。
- 看護問題:原因を関連づけて、「〇〇に関連したセルフケア不足」の形で書きます。
- 看護目標:患者さんにどんな状態になってほしいかを、長期と短期に分けて書きます。
- 観察計画(O-P)・援助計画(T-P)・教育計画(E-P):目標に近づくための具体策を書きます。
- 評価:計画どおりに進んでいるかを振り返り、必要なら見直します。
情報の整理には、関連図を使う方法があります。症状や要因のつながりが目で見てわかるため、問題の原因を説明しやすくなります。
この流れのどこかが抜けると、計画の一貫性がなくなります。たとえば原因が不明確なまま援助を並べると、「なぜそのケアをするのか」を説明できなくなります。
セルフケア不足とは何か(食事・清潔・更衣・排泄など)
セルフケア不足とは、食事・清潔・更衣・整容・排泄など、日常生活に必要な行動を自分では十分に行えない状態のことです。
病気やけがで体が動かしにくい場合だけではありません。意欲の低下、認知機能の変化、痛み、安静の指示など、理由はさまざまです。
セルフケア不足が続くと、ADLの低下、清潔の保持の難しさ、意欲や自尊心の低下につながる可能性があります。だからこそ、早めに原因を見つけ、計画的に関わることが大切です。
看護診断では、領域ごとに「摂食」「入浴・清潔」「更衣・整容」「排泄」のセルフケア不足として整理する考え方があります。領域を分けて書くと、援助の内容も具体的になります。
アセスメントの視点と方法:なぜ自分でできないのかを見極める
アセスメントでは、「何ができないか」だけでなく「なぜできないか」を明らかにします。この部分が、計画全体の質を左右します。
原因が身体機能なのか、知識や認知なのか、気持ちの問題なのかによって、必要な援助は変わります。同じ「入浴ができない」でも、書くべき計画は別物になります。
ここでは、情報収集の方法、要因の評価、意欲の見極めの順に整理します。
情報収集:主観的情報(S)と客観的情報(O)、ADL・IADLの確認
まず、患者さんの言葉である主観的情報(S)を丁寧に聞き取ります。困っていること、セルフケアについての考え、やりたい気持ちの有無などが大切な情報です。
次に、客観的情報(O)を集めます。疾患名や既往歴、検査データ、表情、清潔の保たれ方、病室の様子、リハビリの進み具合などです。
ADLでは、食事・排泄・入浴・更衣・整容・移動について、できること・できないことを具体的に確認します。「全部できない」とまとめず、動作を分けて見るのがコツです。
IADLは、服薬管理、金銭管理、家事などの手段的な日常生活動作です。退院後の生活を考えるときに特に役立ちます。
家族の支援状況、住まいの環境、患者さん自身が大切にしている生活の習慣も、合わせて確認しておきましょう。
身体的・認知的・心理的・環境的要因の評価(BI・FIM・HDS-Rなどの指標)
セルフケア不足は、ひとつの原因だけで起こることは多くありません。身体・認知・心理・環境の4つの側面から、見落としがないか確認します。
| 要因 | 見るポイント | 活用できる指標・方法 |
|---|---|---|
| 身体的要因 | 筋力、関節の動く範囲、麻痺、痛み、感覚、疲れやすさ、バランス | BI(バーセルインデックス)、FIMなどで動作ごとの自立度を確認 |
| 認知的要因 | 記憶、注意、判断、指示の理解、物の使い方、見当識 | HDS-R、MMSEなどのスクリーニングと、日常会話での応答の観察 |
| 心理的要因 | 意欲、不安、抑うつ、自信のなさ、病気の受け止め方 | 表情・言葉・行動の観察。必要に応じて、うつや不安の尺度を活用 |
| 環境的要因 | 家族の支援、浴室やトイレなどの住環境、病室の配置、ドレーンや固定具の有無 | 家族への聞き取り、多職種からの情報 |
評価は、できるだけ普段の生活場面に近い状態で行うと、実際の力を捉えやすくなります。
指標の点数は、あくまで状態を把握する材料です。点数だけで判断せず、実際の動作の様子とあわせて記録しましょう。
「やりたいけどできない」か「できるけどやりたくない」かを分ける
アセスメントで特に大切なのが、この見極めです。同じ「やっていない」状態でも、背景がまったく違います。
「やりたいけどできない」場合は、身体機能の低下、痛み、道具や環境の不足などが考えられます。この場合は、動作の工夫や環境調整、必要な部分の介助が中心になります。
「できるけどやりたくない」場合は、意欲の低下、不安、抑うつ、依存心、羞恥心などが関わっているかもしれません。この場合は、気持ちに寄り添い、選択の機会をつくり、小さな成功を積み重ねる関わりが中心になります。
両方が重なっている患者さんも多くいます。どちらの割合が大きそうかを、観察と対話から考えてみましょう。
セルフケア不足の原因・関連因子と、看護問題・看護診断の挙げ方

アセスメントで原因が見えてきたら、それを看護問題の文章に落とし込みます。原因・関連因子を入れることで、計画の根拠がはっきりします。
ここでは、よくある原因、問題名の書き方、優先順位の決め方を順に見ていきます。
よくある原因・関連因子(麻痺・疼痛・筋力低下・認知機能低下・意欲低下・安静制限など)
セルフケア不足の関連因子には、次のようなものがあります。患者さんの状況に近いものを探してみてください。
- 麻痺による運動障害、固定器具の使用による上下肢の機能障害
- 術後の疼痛、筋力低下、長期臥床による筋力の低下
- 治療上の活動制限(安静の指示、ドレーンの留置、ギプス固定や牽引など)
- 認知機能の低下、視覚障害(視力・視野の欠損)
- 意欲の低下、不安や抑うつ、幻覚や妄想の影響
- 長い入院や個室での隔離による依存心の高まり、ストレスや不安
- 高齢、呼吸が苦しいことによる動作の制限
身体的なものは目に見えやすい一方で、心理的な要因は見逃されやすい傾向があります。表情や言葉の変化にも目を向けましょう。
関連因子は、看護師がケアで働きかけられるものを選ぶのがコツです。働きかけられない要因を書いても、計画につながりません。
看護問題の書き方:「〇〇に関連したセルフケア不足(入浴・清潔/更衣・整容/摂食/排泄)」
基本の型は、「(原因・関連因子)に関連したセルフケア不足(領域)」です。原因の部分に、アセスメントで見つけた要因を入れます。
領域は、摂食、入浴・清潔、更衣・整容、排泄の中から、実際に不足している動作を選びます。複数ある場合は、まとめて書くか、領域ごとに分けて書きます。
| 状況 | 問題名の書き方の例 |
|---|---|
| 脳梗塞で片麻痺がある | 麻痺による運動障害に関連したセルフケア不足(入浴・清潔/更衣・整容) |
| 術後で痛みと活動制限がある | 術後の疼痛と活動制限に関連したセルフケア不足(入浴・清潔/排泄) |
| 精神症状で意欲が下がっている | 意欲低下や精神症状に関連したセルフケア不足(入浴・清潔/更衣・整容) |
| 認知機能が低下している | 認知機能の低下に関連したセルフケア不足(摂食/更衣・整容) |
注意したいのは、「麻痺があるから」と病名だけを原因にしないことです。麻痺が日常のどの動作にどう影響しているかまで考えると、問題がより具体的になります。
また、「全介助が必要」のように、援助の内容を問題名にしてしまう書き方は避けましょう。問題は、患者さんの状態として書きます。
優先順位のつけ方
問題が複数ある場合は、優先順位をつけます。生命や治療に直結する問題を最優先にするのが基本です。
たとえば、食事が十分にとれない状態や、衛生状態の悪化は、早めの対応が必要です。マズローの欲求の考え方を参考にすると、基本的な欲求にかかわる問題から順に整理できます。
もうひとつの視点は、患者さん自身が強く望んでいることです。本人が「これだけは自分でしたい」と思う領域から取り組むと、意欲につながりやすくなります。
優先順位をつけた理由は、一文で記録に残しておくと、指導者や先生にも説明しやすくなります。
看護目標(長期・短期)の書き方
看護目標は、患者さんがどんな状態になることをめざすのかを示すものです。看護師が行うことではなく、患者さんの状態や行動を主語にして書きます。
長期目標は大きな方向性、短期目標はそこへ向かう段階的な目標です。短期目標を積み上げると、長期目標に届く形にします。
評価できる目標にするコツ(具体的な動作・時期を入れる)
評価できる目標にするには、「いつまでに」「どの動作を」「どの程度」できるかを入れます。目標設定の考え方として、具体的で、測定でき、達成可能で、現実的で、期限がある、という5つの視点が役立ちます。
- 具体的な動作を入れる:「自分で上半身を拭くことができる」のように書きます。
- 時期を入れる:「退院までに」「今週中に」のように、評価のタイミングを示します。
- 主語を患者さんにする:「看護師が介助する」ではなく、「患者さんが〜できる」とします。
- 達成できる大きさにする:今の力より少し先を狙います。
「セルフケアが向上する」「自立する」のような言葉だけでは、できたかどうかを判断できません。何ができたら達成なのかを、動作で書きましょう。
時期の数字は、患者さんの状態や入院予定に合わせて自分で決めて書いてください。他の例文の期間をそのまま写すと、実際の状況と合わなくなることがあります。
長期目標・短期目標の例文
領域ごとの目標の型として、「〇〇は(具体的な方法)で行うことができる」という書き方があります。( )の中に、その患者さんの動作を入れます。
| 領域 | 短期目標の例 |
|---|---|
| 摂食 | 食事をスプーンを使って自分で口に運ぶことができる |
| 清潔 | ベッドサイドで、自分で上半身の清拭を行うことができる |
| 更衣・整容 | 前開きの衣服のボタンを、自分で留めることができる |
| 排泄 | ベッドサイドでポータブルトイレを自分で使うことができる |
長期目標の例は、次のようになります。
- 退院までに、入浴を自分で、または必要最小限の介助で行えるようになる。
- 残存機能を活かして、できる範囲のセルフケアを安全に継続できる。
- 自分で行えるセルフケアを増やし、生活のリズムを整えながら主体的に過ごせる。
短期目標には、知識や気持ちの目標も入れられます。たとえば「入浴時の注意点と、工夫が必要な動作を説明できる」や、「できたことに達成感を感じられる」などです。
長期目標が状態の維持である場合もあります。進行を防ぐことをめざす患者さんには、「現在の自立度を保てる」という書き方も適切です。
O-P・T-P・E-Pに書く内容

目標を決めたら、O-P(観察計画)、T-P(援助計画)、E-P(教育計画)に具体策を書きます。三つの役割を分けて考えると、整理しやすくなります。
O-Pは「何を見るか」、T-Pは「何をするか」、E-Pは「何を伝えるか」です。どれも、目標を達成するための手段として書きます。
観察計画(O-P):何を観察するか
O-Pには、セルフケアの状態と、その原因・影響を確かめるための観察項目を書きます。アセスメントで挙げた要因に対応させると、抜けを防げます。
- ADLの自立度:食事、清潔、更衣、排泄の各動作を、どこまで自分でできているか。
- 身体の状態:筋力、麻痺や感覚障害の程度、痛み、疲れやすさ、バイタルサイン。
- 認知・精神の状態:理解力、判断力、意欲、表情、不安や抑うつの有無。
- 安全面:動作中のふらつき、転倒しそうな場面、ドレーンや固定具の状況。
- 清潔の状態:皮膚、頭髪、口腔、爪、衣類の汚れ。
- 生活の状況:食事や水分の摂取状況、睡眠、生活リズム。
- 周囲の状況:家族の理解やサポート、自宅の環境、リハビリの進み具合。
観察項目は、並べるだけでなく「何のために見るのか」を意識しましょう。意欲を観察するのは、気持ちがセルフケアの行動に影響するためです。
痛みや疲れが強い時間帯と、落ち着いている時間帯を把握することも役立ちます。ケアの時間を調整するヒントになります。
援助計画(T-P):残存機能を活かすケアの書き方
T-Pの基本は、患者さんの持つ力を活かすことです。できる部分は本人に行ってもらい、難しい部分だけ手を添える「部分介助」の考え方で書きます。
T-Pは、誰が読んでも同じケアができるように、具体的に書くのがポイントです。「援助する」だけでは足りません。
| 書き方 | 悪い例 | 良い例 |
|---|---|---|
| 動作を特定する | 清潔の援助を行う | 上半身は自分で拭いてもらい、背中のみ介助する |
| 環境を整える | 安全に配慮する | 床が濡れていないか、ドレーンが絡まっていないかを確認してから行う |
| 関わり方を示す | 声かけをする | できたことを具体的に言葉にして伝える |
T-Pに入れたい内容は、次のとおりです。
- 自分でできる動作は本人に行ってもらい、不要な手出しはしない。
- 安全に動ける環境を整える。ベッド周りの整理も含みます。
- 疲れや痛みに配慮し、体調のよい時間帯にセルフケアを計画する。
- 自尊心とプライバシーを守る。
- 努力や達成したことを認め、励ます。
- リハビリ職など多職種と連携し、動作の工夫を共有する。
- 気持ちや不安を話せる環境を整える。
痛みが動作の妨げになっている場合は、医師の指示にもとづく対応を計画に含めます。薬の内容や量は、医師の指示によるものとして扱いましょう。
教育計画(E-P):患者・家族に何を指導するか
E-Pには、患者さんと家族に伝える内容を書きます。患者さんの理解度に合わせて、わかりやすい言葉で伝える前提で考えます。
患者さん向けには、次のような内容があります。
- 病状や回復の見通し、治療の計画について。
- リハビリや、時間がかかっても自分で行うことの必要性について。
- 安全にセルフケアを行うための方法や注意点について。
- 疲れたときは休むこと、困ったときは援助を求めてよいことについて。
- 不安や気持ちを我慢せず、話してよいことについて。
家族向けには、できることを見守る大切さを伝えます。心配から何でもしてあげたくなる気持ちは自然ですが、手を出しすぎると患者さんの自立を妨げることがあります。
あわせて、介助の方法、転倒を防ぐ工夫、退院後に使える社会資源についても説明します。入院中から、退院後に続けられる方法を一緒に考えておくと安心です。
E-Pは、一度の説明で終わらせず、日々のケアの中で繰り返し伝える姿勢が大切です。患者さんの反応を見ながら、伝え方も調整していきましょう。
領域別のケア:清潔・更衣・排泄・摂食
ここでは、T-Pに書く具体的なケアを領域別に整理します。どの領域も、原因をふまえ、できる部分を活かす考え方が共通しています。
道具や環境の工夫も大切ですが、特定の製品に頼る必要はありません。まずは動作の手順、姿勢、環境の見直しから考えてみましょう。
清潔(入浴・清拭)の援助
清潔の援助では、安全の確保と羞恥心への配慮が土台になります。体力を使う場面なので、エネルギーの消費も考えて計画します。
身体機能の状態によって、困りごとと工夫は変わります。
- 筋力が低下している:浴槽からの立ち上がりや、タオルを絞る動作が難しいことがあります。座って行える方法に変え、手すりなど支えを使えるようにします。
- 関節が動きにくい:背中や頭に手が届かないことがあります。座った姿勢で洗う方法を考え、届かない部分のみ介助します。
- バランスが不安定:滑りやすい床で転倒の不安があります。滑りにくい環境を整え、そばで見守りながら声をかけます。
- 感覚に障害がある:お湯の温度がわかりにくいことがあります。入浴前に看護師が温度を確認します。
入浴が難しい時期は、清拭で清潔を保つ方法もあります。目標に「ベッドサイドで上半身を自分で拭く」のような段階を設けると、無理なく進められます。
入浴後の疲れや、浴室での転倒には十分な注意が必要です。観察計画に、ふらつき、疲労感、入浴にかかる時間を入れておくと安心です。
更衣・整容の援助
更衣では、着脱しやすい衣服を選ぶことと、動作の手順を簡単にすることがポイントです。麻痺がある場合は、動かしにくい側から着て、動かせる側から脱ぐ方法が一般に紹介されています。
前開きでゆとりのある服は、着脱の負担が少なくなります。患者さんの好みも聞きながら、本人が気に入る服を選べると、意欲にもつながります。
整容には、洗面、歯みがき、髪を整える、爪の手入れなどが含まれます。身だしなみを整えることは、自尊心や生活リズムとも深く関わります。
手の動きが難しい場合は、握りやすい工夫や座って行える環境を考えます。精神症状で意欲が下がっている場合は、できそうな一つの動作から始め、できた事実をそのまま認めます。
見守りを基本にして、必要なときだけ手を貸す形にすると、「自分でできた」という感覚を残せます。
排泄・摂食の援助
排泄の援助では、プライバシーと尊厳の保持が大切です。排泄のパターンを把握し、計画的に誘導することで、失敗の不安を減らせます。排泄のパターンを把握し、計画的に誘導することで、失敗の不安を減らせます。
トイレまでの動線、手すり、ベッドサイドの配置など、環境の工夫も欠かせません。動作が難しい時期には、ベッドサイドでの排泄方法を段階的に考えます。
摂食では、まず姿勢を整えます。食べ物の形態や食器の配置を見直し、本人が食べやすい環境をつくります。
むせ込みや飲み込みの不安がある場合は、安全面を最優先にします。必要に応じて、医師や言語聴覚士、管理栄養士と連携して進めましょう。
食事の量、水分の摂取、体重の変化は、O-Pに入れておきたい項目です。食べる意欲や食事中の表情にも目を向けましょう。
疾患別の看護計画例

ここでは、三つの場面を例に、計画の考え方を示します。あくまで例であり、患者さんの状態に合わせて内容を変える前提で読んでください。
そのまま写すのではなく、自分の患者さんのアセスメントに照らして、使える部分を選びましょう。
脳梗塞で片麻痺がある患者の例
脳梗塞では、脳の組織が障害されることで、運動障害や感覚障害が起こり、セルフケアが難しくなる可能性があります。
| 項目 | 内容の例 |
|---|---|
| 看護問題 | 麻痺による運動障害に関連したセルフケア不足(摂食/入浴・清潔/行為・整容/排泄) |
| 短期目標 | 動かせる側の手を使って、自分で上半身を拭くことができる |
| O-P | これまでのADL、運動・感覚障害の程度、視野障害や空間の認識の変化、セルフケアの能力、身体の変化への受け止め、家族の理解と心理状態 |
| T-P | 障害の程度に応じたリハビリテーション、自力で行える範囲を本人に任せられる環境づくり、患者・家族が思いを話せる環境の調整 |
| E-P | 治療計画と回復の見通し、リハビリの必要性、気持ちを我慢せず伝えてよいこと |
麻痺では、視野の欠けや空間の認識の変化がないかも確認します。片側の物に気づきにくいと、食事や更衣で困ることがあるためです。
入浴では、浴槽からの立ち上がり、握る力、バランス、温度の感覚が関わります。原因ごとに環境や方法を工夫し、多職種とも相談しましょう。
精神科(意欲低下・陰性症状・幻覚妄想)の患者の例
精神科では、統合失調症の陰性症状やうつ状態による意欲の低下、認知機能の低下などが、セルフケア不足の背景になることがあります。幻覚や妄想の影響で、入浴や食事を拒む場合もあります。
| 項目 | 内容の例 |
|---|---|
| 看護問題 | 精神症状や意欲低下、認知機能の低下に関連したセルフケア不足 |
| 看護目標 | 自分で行えるセルフケアを増やし、生活のリズムを整えながら主体的に過ごせる |
| O-P | 幻覚・妄想・不安・抑うつの有無と程度、意欲や自発性、理解力と判断力、薬による眠気や活動性の低下、セルフケアの実施状況、清潔の保持、睡眠と生活リズム、援助の受け入れ、実施前後の表情 |
| T-P | 達成しやすい短期目標を患者さんと一緒に設定する、選べる場面をつくり自己決定を尊重する、幻覚や妄想は否定せず不安を和らげる、できたことを認めて伝える、家族や多職種と支援方法を検討する、医師の指示にもとづく薬の対応を行う |
| E-P | 規則正しい生活や睡眠が安定につながること、治療や服薬を続ける大切さ、不安なときの相談方法、活動への参加の意義、退院後の生活を見すえたセルフケア |
精神科の計画では、本人の気持ちと自己決定を尊重することが特に大切です。無理にさせるのではなく、一緒に決めて、できた事実を肯定的に伝えます。
拒否の背景に症状がある場合は、症状への理解と安心感を優先します。ケアの順番や関わるスタッフを調整する工夫も有効です。
術後(疼痛・活動制限)の患者の例
術後は、痛みや筋力の低下、ドレーンの留置、安静の指示などによって、一時的にセルフケアが難しくなることがあります。
| 項目 | 内容の例 |
|---|---|
| 看護問題 | 術後の疼痛と活動制限に関連したセルフケア不足(入浴・清潔/更衣・整容) |
| 長期目標 | 退院までに、入浴を自分で行えるようになる |
| 短期目標 | 入浴時の注意点と、工夫が必要な動作を説明できる |
| O-P | バイタルサイン、痛みの程度、ADLの状況、清潔の状態、更衣の自立度、入浴中のふらつき、入浴にかかる時間と疲労感、入浴への意欲、自宅の浴室の環境 |
| T-P | 自力でできない部分の入浴介助、床の状態やドレーンの絡まりの確認、痛みへの対応(医師の指示にもとづく)、疲れに配慮したケア、リハビリ職との連携、住宅改修の必要性の相談 |
| E-P | 入浴を自立するための工夫と注意点、着脱しやすい衣服の特徴、退院後にめざす姿の確認と動機づけ、家族への介助方法の説明 |
術後は、痛みを抑えながら動くことで、活動量の低下を防ぐ視点も大切です。動かないままだと、さらにADLが下がる可能性があります。
実習では、「なぜ全介助にしないのか」と聞かれることがあります。答えは、患者さんの残存機能を活かし、回復を支えるためです。
計画立案で失敗しないための注意点とチェックリスト
最後に、計画を書くときにつまずきやすい点と、提出前に確認したい項目をまとめます。
よくある失敗は、原因が書かれていない、援助が全介助になっている、誰にでも当てはまる内容になっている、の三つです。
全介助にしない・原因に合わせる・個別性を入れる
一つ目は、全介助にしないことです。看護師がすべて行うと、一時的には安全で早く済みますが、患者さんの持つ力を使う機会が減ってしまいます。
二つ目は、原因に合わせることです。身体機能の低下なのか、知識の不足なのか、意欲の低下なのかで、同じ「入浴ができない」でも計画は変わります。
三つ目は、個別性を入れることです。教科書どおりの計画を当てはめるのではなく、その人の生活歴、価値観、望む生活、家族の状況を反映させます。
例文をそのまま写すと、患者さんの状態と合わない計画になりやすいので注意しましょう。例は考え方の型として使い、中身は自分の患者さんの情報で書きます。
また、計画は一度立てたら終わりではありません。評価の時期と方法を決め、状態が変わったら見直す前提で書きます。
小さな成功体験を積み重ねる視点も大切です。「できた」という気持ちが、次の意欲につながります。
提出前チェックリスト
書き終えたら、次の項目を一つずつ確認してみましょう。
- アセスメントに、主観的情報と客観的情報の両方が入っているか。
- 身体・認知・心理・環境の側面から、原因を考えているか。
- 「やりたいけどできない」か「できるけどやりたくない」かを検討しているか。
- 看護問題が「〇〇に関連したセルフケア不足(領域)」の形になっているか。
- 優先順位をつけた理由を説明できるか。
- 目標の主語が患者さんで、具体的な動作と時期が入っているか。
- 短期目標を達成すると、長期目標に近づく関係になっているか。
- O-Pが、原因と目標に対応した項目になっているか。
- T-Pが、誰が読んでも同じケアができる具体的な書き方か。
- T-Pに、できる部分を本人に任せる内容が入っているか。
- E-Pに、患者さんだけでなく家族への説明も含まれているか。
- 各計画の理由を、アセスメントにさかのぼって説明できるか。
- 評価の時期と方法が決まっているか。
すべてにチェックがつけば、筋の通った計画になっています。どこかで詰まった場合は、その前の段階に戻って見直すと、解決の糸口が見つかります。
セルフケア不足の計画は、患者さんの「自分でできる」を支えるための設計図です。焦らず、一つずつ順番に書き進めてみてください。
