看護師ミカ こんにちは、現役看護師のミカです。

今回は、『看護の申し送りとは?伝える項目・例文・テンプレートと伝え方のコツ』というタイトルでお送りします。




 

看護の申し送りとは?目的と引き継ぎとの違い

看護の申し送りとは、勤務の交代や患者さんの状態が変わったときに、担当者同士が必要な情報を共有することです。目的は、担当する看護師が変わっても、患者さんに一貫したケアを届け、情報の抜けや誤解を防ぐことにあります。

この記事では、申し送りの意味と引き継ぎとの違いから、入院中の患者さんと新規入院患者さんで伝える項目、そのまま使える例文、テンプレートとSBAR、伝え方のコツ、事前準備、苦手なときの対処法までを順番に解説します。

全体の流れを先に整理すると、次のとおりです。

  1. 申し送りの目的を知り、「何のために伝えるのか」を押さえる
  2. 患者さんの種類ごとに、伝える項目を決めておく
  3. 例文とテンプレートで、話す型を身につける
  4. 結論から、事実と所感を分けて伝える
  5. 勤務中のメモと直前の整理で、当日慌てないようにする

申し送りが近づくと頭が真っ白になる、話が長くなる、伝え漏れが不安になるという悩みは、多くの看護師が経験するものです。型と準備を持っておくことで、こうした不安は少しずつ軽くなると紹介されています。

申し送りの意味と何のためにやるのか

申し送りは、業務をスムーズに連携させるために、担当者同士で業務内容や注意点を共有することです。伝える内容そのものは「申し送り事項」と呼ばれます。

看護の現場では、日勤と夜勤などシフトが交代するときや、患者さんの状態が変化したときに行われます。方法は口頭、書面、電子カルテなど、職場によって異なります。

主な目的を整理すると、次のようになります。

  • 起こったことや患者さんの様子を、次の担当者に伝える
  • 医師からの指示や変更を、確実に引き継ぐ
  • 検査や処置を、安全に確実に行えるようにする
  • 患者さんの希望や要望を、担当が変わっても尊重する
  • 一貫した質の高い看護を続ける

カルテに目を通せば処置や説明の内容は分かります。しかし、勤務開始直前にすべての患者さんの情報をくまなく把握するのは現実的ではありません。

そこで、要点だけを共有して効率よく勤務を始めるために、申し送りが行われます。ほかの看護師のヘルプに入るときや、急な変化が起きたときに備えて、担当外の患者さんもある程度知っておく意味もあります。

また、担当の看護師が代わることで不安を感じる患者さんもいます。申し送りで希望や要望が引き継がれていれば、看護師が代わっても安心してケアを受けやすくなります。

POINT 申し送りは、情報を並べる時間ではなく、患者さんの安全とケアの継続を守るための時間です。目的を意識すると、何を残し何を省くかを判断しやすくなります。

情報が多すぎると混乱を招き、少なすぎると大切な点が伝わりません。「何が重要か」を整理してから話すことが、申し送りの基本です。

申し送りと引き継ぎの違い・言葉の使い分け

「申し送り」と「引き継ぎ」は似た言葉ですが、使われる場面が少し異なります。一般には、次のように使い分けると整理しやすくなります。

言葉 主な意味 看護での場面の例
申し送り 業務上必要な情報を伝えること 日勤から夜勤への交代時に、患者さんの状態や処置を共有する
引き継ぎ 前任者から後任者へ業務内容を伝えること 異動や担当変更のときに、業務の流れや注意点を伝える

つまり、毎日の勤務交代で行う情報共有は「申し送り」、担当者そのものが変わるときの業務の受け渡しは「引き継ぎ」というイメージです。

職場ごとの言い方に合わせて使えば問題ありません。

言葉づかいについては、「申し送る」とは言わず、「申し送りをする」と表現するのが一般的とされています。たとえば「この件を申し送りをしておきます」のように使います。

また、「申し送り」は同じ組織内での情報共有を指す言葉です。外部の相手には「共有事項」「引き継ぎ事項」と言い換えると伝わりやすくなります。

申し送りで伝える項目:入院中の患者と新規入院患者

申し送りで何を伝えるかは、患者さんの状況で変わります。入院中の患者さんでは「前日からの変化」に絞り、新規入院患者さんでは「基本情報から経緯まで」をそろえるのが基本です。

伝える項目を先に決めておくと、頭が真っ白になっても、項目を順に思い出すだけで話を進められます。ここでは二つの場合に分けて整理します。

なお、重視される項目は病院や病棟、診療科によって異なることがあります。迷うときは、先輩看護師に自分の病棟での基本の項目を確認しておくと安心です。

入院中の患者で伝える項目(変化・異常値に絞る)

入院中の患者さんの申し送りでは、前日と変わらない項目や基準値内のデータまで、すべて伝える必要はありません。前日から変化した点、新しく出た症状、異常値に絞ることで、時間が足りなくなるのを防げます。

伝える項目の例は、次のとおりです。

  • 氏名・病室、疾患
  • バイタルサイン(体温、血圧、脈拍数、呼吸状態、意識レベル、尿量など)
  • 治療・処置・検査の内容と、その結果
  • 患者さんの状態、起きた出来事
  • インフォームドコンセント(IC)の内容
  • 医師からの指示や変更の内容
  • 特記事項(注意してほしいこと、希望や要望)

バイタルサインは、変化のあった項目や異常値を抜き出して伝えます。特に変化がなければ、「バイタルは特に変化なしです」と伝える形でもよいとされています。

術後の患者さんや、循環器・腎臓の疾患がある患者さんでは、飲水量と尿量などのin・outを細かく見る場合があります。基準を超える増減があったときは、その数値を伝えると親切です。

治療や処置は、「やった」だけでなく「その後どうなったか」まで伝えると聞き手に伝わります。点滴などの継続中のものも、あわせて伝えます。

特別な処置が必要なくても、ケアの上で注意すべきことは共有します。たとえば夜間に落ち着かなくなりやすい様子や、せき込みやすいので服薬時に付き添いが必要といった内容です。

ICの内容では、誰に何が説明され、どんな希望があったかを簡潔に伝えます。センシティブな内容を含む場合は、患者さんとの会話で気をつける点を必ず添えます。

医師の指示が変わったときは、「なぜ・いつから・何が・どのくらい変わったか」を正確に伝えられるようにしておきます。

POINT 入院中の患者さんは「変化・新しい症状・異常値」に絞る。カルテを読めば分かる情報は、重ねて話さないのが基本です。

新規入院患者の申し送りで押さえる情報

新規入院の患者さんは、聞き手にとって情報がほとんどない状態です。そのため、基本情報から入院の経緯、現在の状態、説明の状況、医師の指示までを順にそろえて伝えます。

押さえておきたい情報は、次のとおりです。

区分 伝える内容
基本情報 氏名、年齢、性別、移送区分(担送・護送・独歩)
入院の理由 病名、入院目的・主訴
安全に関わる情報 アレルギーの有無、既往歴
経緯 現病歴、入院に至った経緯
現在の状態 バイタルサイン、検査データの異常、様子
説明と同意 入院時のICの内容、治療や検査への同意の状況
指示 安静度、食事や飲水の制限、疼痛時の対応など
特記事項 不安の様子、家族の要望、注意点

外来で入院について説明されていた場合でも、入院当日にあらためてICが行われるのが一般的です。患者さんやご家族に何が伝わっているかを、聞き手が把握できるようにします。

新規入院の患者さんは、初めての環境で不安を抱えていることが多いとされます。入院時の表情や発言、気になった様子も、事実として添えておくとケアに役立ちます。

点滴や服薬が必要な場合は、入院中の患者さんと同じく、時間や量を具体的に伝えます。

以下は、入院中と新規入院で何が違うかを比べたものです。

観点 入院中の患者さん 新規入院患者さん
中心になる情報 前日からの変化・異常値 基本情報と入院の経緯
話す量の目安 絞って短く そろえて丁寧に
特に確認したい点 指示の変更、継続中の処置 アレルギー、既往歴、説明の状況

そのまま使える申し送りの例文

そのまま使える申し送りの例文

ここでは、新規入院・状態変化・術後の三つの場面で、そのまま真似できる例文を紹介します。病名や数値は例として置いたもので、実際の患者さんの情報に置き換えて使ってください。

例文は、SBAR(状況・背景・評価・提案)の順で組み立てています。SBARについては、後の章で詳しく説明します。

職場で決まった言い回しや順番がある場合は、そちらを優先してください。例文はあくまで、話し方のイメージをつかむための見本です。

新規入院患者の例文

高齢の患者さんが、骨折で緊急入院した場面を想定した例です。

〇〇号室、Aさん、75歳の女性です。

S:本日10時に、右大腿骨頸部骨折で緊急入院されました。

B:既往歴は高血圧と糖尿病です。認知症があり、見当識障害がみられます。

A:入院時は不安が強く、「ここはどこ?」と何度も話されていました。医師から手術は明日午前の予定と説明があり、ご本人も理解されています。ただ、周囲を見回す様子があり、不安は残っているようです。

R:転倒・転落のリスクが高いため、巡視時に注意して観察をお願いします。明日の手術室入室まで絶飲食であることも、声をかけてください。ご家族は明朝に来院予定です。

この例では、基本情報を冒頭で伝え、入院の理由、既往歴、入院時の様子、説明の状況、今後の注意点の順に並べています。

最後の「R」で、聞き手にしてほしいことを具体的に示しているのがポイントです。聞き手は、次に何をすればよいかをすぐ判断できます。

状態変化があった患者の例文

発熱があった患者さんの例です。状態が変化したときは、事実と自分のアセスメントを分けて伝えます。

〇〇号室、Bさん、68歳の男性です。

S:先ほど、体温38.5℃の発熱がありました。

B:朝までは36.8℃で経過していました。血圧は120/70mmHg、脈拍は98回/分で、やや高めです。呼吸状態は安定しており、息苦しさの訴えはありません。

A:術後の創部の影響も考えられるため、医師に報告しました。血液検査と尿検査が追加で指示されています。

R:採血・採尿後に、指示の解熱剤を使う予定です。その後のバイタル測定と、全身状態の変化の観察をお願いします。

この例では、まず「発熱があった」という結論を伝え、その前後の経過を背景として続けています。

「医師に報告済み」「検査が追加された」という対応状況を入れておくと、聞き手は今の状況を正しく理解できます。具体的な測定間隔などは、実際の指示に合わせて伝えてください。

POINT 状態変化の申し送りでは、事実(数値・様子)→対応(報告・指示)→お願いの順にすると、聞き手が動きやすくなります。

術後患者の例文

手術の翌日の患者さんを想定した例です。術後は経過、痛みの状況、今後の予定を中心に伝えます。

〇〇号室、Cさん、55歳の男性です。

S:胃の手術後1日目です。

B:術後の痛みは落ち着いており、痛み止めの機器を自分で使えています。本日午前から離床し、車椅子に座れました。

A:安静時の痛みは軽くなってきています。創部に赤みや腫れはなく、ドレーンからの排液は淡い血性で、量は大きく変わりません。ドレーンの挿入部にも異常はありません。

R:明日から経口摂取を始める予定です。お腹の張り、吐き気、排便の状況に注意して観察をお願いします。創部の赤み、熱感、出血量に変化があれば、すぐに報告してください。痛みが強いときは、機器の使用を促してください。

術後の申し送りでは、「その日のポイント」を明確にすることが大切です。この例では、翌日から食事が始まることを踏まえ、観察してほしい症状を具体的に挙げています。

排液量や痛みの程度などは、実際の測定値を、単位まで添えて伝えるようにします。

なお、例文の内容は伝え方の見本であり、治療方針を示すものではありません。実際の指示や対応は、必ず医師の指示と職場の手順に従ってください。

迷わず伝えられるテンプレートとSBAR

迷わず伝えられるテンプレートとSBAR

申し送りが苦手な人ほど、「型」を持つことが助けになります。項目をそろえたテンプレートで「何を」を決め、SBARで「どの順番で」を決めると、迷いが減ります。

型は、話す内容を一言一句書くためのものではありません。要点を短く書き、抜けを防ぐための道具として使います。

ここでは、二つの型の作り方と使い方を説明します。

項目をそろえた申し送りテンプレート

テンプレートは、左に項目、右にメモ欄を作る形が基本です。あらかじめ項目を書いておき、右の欄を埋めるようにメモを取ります。

項目 メモ(要点だけ書く)
部屋番号・氏名
疾患・病態
今日の経過
バイタルサイン
患者さんの訴え
治療・処置・検査
IC・家族の要望
医師の指示・変更
今後の予定・注意点

項目は、多くても10項目程度にまとめると使いやすいと紹介されています。増やしすぎると、かえって埋めるのが負担になります。

また、「新規入院用」「入院中用」「術後用」のように、患者さんの種類ごとに何種類か作っておく方法もあります。

話すときは、テンプレートの項目を上から順に読み上げる必要はありません。関連する項目はまとめて話すと、聞き手に伝わりやすくなります。

たとえば、「術後の経過」と「ドレーンを抜く予定」を続けて話し、「内服と点滴は変更なし」とまとめる、といった具合です。基本情報と病名を最初に、注意事項を最後に話すといった大まかなルールを決めておくと、慌てずに済みます。

SBARで話す順番を決める

SBAR(エスバー)は、情報を漏れなく順序立てて伝えるための枠組みで、病院や施設で広く使われています。話す順番が決まるため、特に状態が変わった患者さんの報告で役立つと紹介されています。

項目 意味 話す内容の例
S(Situation:状況) 今、何が起きているか 発熱があった、痛みを訴えている
B(Background:背景) なぜそうなったか、これまでの経過 術後3日目、朝までは平熱だった
A(Assessment:評価) 自分はどう捉えたか 感染の可能性も考え、医師に報告した
R(Recommendation:提案・依頼) 相手にどうしてほしいか 次のバイタル測定時にも確認してほしい

SBARを使うと、聞き手は現状から今後の対応までの流れをすばやく理解できます。話し手にとっても、「次は何を言えばよいか」が分かるため、頭が真っ白になりにくくなります。

状況に応じて、次の項目を付け加えると、より丁寧な申し送りになります。

  • 今後の計画:検査や処置の予定、リハビリの進み具合
  • 注意事項:転倒・転落のリスク、感染対策、食事形態の変更
  • 患者さんの訴え:「痛みが続いている」「入浴したいと話していた」など
  • ご家族の要望:面会に関する希望など
POINT SBARは「状況→背景→評価→依頼」の順で話す型です。迷ったらまずSだけ口に出し、あとは順に続けます。

分かりやすく伝える4つのコツ

型を持っていても、話し方次第で伝わり方は変わります。ここでは、聞き手が理解しやすくなる4つのコツを紹介します。

  1. 結論から伝える
  2. 事実と所感・推測を分けて話す
  3. 数字と具体的な表現を使う
  4. その日の患者さんごとのポイントを示す

一度にすべてを完璧にこなす必要はありません。まず一つ、「結論から話す」だけでも意識してみてください。

また、時系列ではなく項目別に伝えるのも基本です。時系列で話すと聞き手が整理しにくく、最も伝えたい点が埋もれる恐れがあります。注意点や確認してほしいことを先に伝え、そのあと経緯を補うと、状況が理解しやすくなります。

結論から伝える(NG例とOK例)

申し送りが苦手な人は、情報を伝えたい気持ちから話が長くなりがちです。しかし、聞き手がまず知りたいのは「結論」です。

NG例(経緯から話す) OK例(結論から話す)
朝から食事が進まなくて、でも水分は取れていて、バイタルは安定していて、ただ血圧が少し高めで… 食事量が今朝から半分ほどに減っています。水分は自分で取れており、バイタルは安定していますが、血圧は普段より少し高めです。
さっき様子を見に行ったら、息が少し荒くて、測ってみたら数値が下がっていて… 呼吸状態に変化がありました。測定すると酸素飽和度が下がっており、医師に報告済みです。

OK例では、最初の一文で「何が起きたか」を言い切っています。そのあとに、補足情報を続けています。

結論を先に伝えると、聞き手は話の全体像をつかみ、続く情報を整理しながら聞けます。話し手にとっても、長くなりそうなときに途中で区切りやすくなります。

慣れないうちは、話し始める前に「一言でいうと、何が言いたいか」を心の中で作ってみてください。それが、最初の一文になります。

事実と所感・推測を分けて話す

事実は、誰が見ても確認できる客観的な情報です。所感は、話し手の主観的な考えや印象を指します。事実と所感を混ぜて伝えると、聞き手が混乱し、業務に支障が出る恐れがあります。

たとえば「今日は少し元気がないみたいです」は、印象にとどまっています。事実を具体的に述べたうえで、考えを添える形が分かりやすくなります。

区分 NG例 OK例
事実 今日は少し元気がないみたいです。 リハビリ後、ベッドで横になり、うつろな表情で一点を見つめていました。
所感 (なし、または事実に混ぜて話す) 疲れもあるかもしれませんが、気持ちの落ち込みもあるように感じるため、引き続き様子を見ていただきたいです。

意見や推測を話すときは、「ここからは私の考えですが」と一言置くと、聞き手は切り替えを理解できます。

事実を先に、所感を後に。この順番を守るだけで、聞き手は事実をもとに自分でも状況を判断でき、あなたのアセスメントも理解できます。

「〜のようです」「〜かもしれません」という言い方を多用する場合は、それが事実なのか推測なのかを自分でも確認しておきましょう。

数字と具体的な表現で、その日のポイントを示す

「熱が高い」「咳が出る」のようなあいまいな表現は、聞き手によって受け取り方が変わります。誰が聞いても同じ状態を思い浮かべられるように、数字や具体的な表現で伝えます。

あいまいな表現 具体的な表現
熱が高かったので、解熱剤を使いました。 体温38.5℃で、解熱剤を使用しました。使用後は37.2℃まで下がっています。
咳がよく出ています。 湿性咳嗽が頻回にみられ、SpO2は95%まで低下しました。

数値は例です。実際に測定した値と、その時刻を添えて伝えてください。

さらに、その日の患者さんごとの「ポイント」を一言で示すと、次の担当者がどこに注意すべきか、すぐ判断できます。

  • 「今日初めてリハビリを頑張ったので、疲れの蓄積と転倒に注意して観察をお願いします」
  • 「腹痛の訴えが強いので、痛みの様子に注意してください」

事前準備とメモの取り方

事前準備とメモの取り方

申し送りの出来は、話し方よりも準備で決まる部分が大きいといえます。勤務中の記録の取り方を少し変えるだけで、直前に慌てる場面が減ると紹介されています。

ここでは、勤務中のメモの取り方と、申し送り直前の整理のしかたを説明します。

メモを取るときは、5W1H(いつ・どこで・だれが・何を・なぜ・どうした)を意識すると、見返したときに内容を把握しやすく、正確に伝えやすくなります。

勤務中に起きた出来事、患者さんの様子、医師からの指示などは、その都度メモしておくのが基本です。

勤務中から「話す順番」でメモする

おすすめは、メモの患者さんごとのスペースに、あらかじめ「S」「B」「A」「R」と書いておく方法です。情報を得たそばから、その枠に書き込みます。

枠 書き方の例(胸の痛みを訴えた場合)
S 胸の痛みの訴えあり
B 術後3日目
A バイタルは安定、心電図に変化なし
R 医師に報告済み。次回測定時にも確認

この書き方なら、メモがそのまま話す順番になります。申し送りの前にあらためて情報を並べ替える手間が省け、口頭でも伝えやすくなります。

詳しい情報が必要な患者さんには、テンプレートを併用します。ノートや電子カルテのメモ機能に、自分用のテンプレートを登録しておくと便利です。

メモを取るのに必死になって、患者さんの話に集中できないと感じるときは、書く量を減らしましょう。数字、時刻、キーワードだけを書き留め、あとで文章にしない前提で十分です。

使いやすい形は人によって違います。自分に合う形にカスタマイズして、オリジナルのメモを育てていくとよいでしょう。

申し送り直前の整理と、時間を延ばさない絞り方

申し送りの数分前に、整理の時間を取る習慣をつけると、落ち着いて話せます。メモを見て、「伝える」「伝えない」を仕分けるのが、この時間の役目です。

直前の整理は、次の手順で進めると迷いません。

  1. 患者さんごとに、「一言でいうと何か」を決める
  2. 前日から変化した点、異常値、新しい指示を選ぶ
  3. カルテを読めば分かる情報や、変化のない情報は外す
  4. 聞き手にしてほしいことを、一つ決める
  5. 話す順番(基本情報→要点→注意点)を確認する

申し送りが長引く背景には、「漏れなく伝えなければ」という気持ちがあります。全患者さんの情報を口頭ですべて送る方法は、時間が延びる原因になりやすいと指摘されています。

改善の一つの考え方として、口頭で送る対象を、状態変化・指示変更・要望があった患者さんに絞る方法があります。それ以外の情報は、ワークシートや記録に残し、読めば分かる形にしておきます。

これは個人の工夫だけでなく、チームで決める方針でもあります。個人で取り組める範囲としては、「記録に書いてあることは繰り返さない」を自分のルールにするとよいでしょう。

POINT 時間を延ばさないコツは、話す量を増やさず、選ぶこと。変化のない情報は「特に変化なし」の一言でまとめます。

申し送りの時間そのものを見直したいときは、まず自分の部署で何分かかっているかを、数日間記録してみる方法もあります。長くなる曜日や勤務帯が分かると、どこを絞ればよいかが見えてきます。職場全体の方法の変更は、先輩や師長さんと相談して進めましょう。

申し送りが苦手・失敗しがちな人の対処法

申し送りが苦手と感じる原因は人それぞれですが、その多くは「完璧に話さなければ」というプレッシャーからくるものだといわれています。まずは、うまく話せなくても当然だと考えて、肩の力を抜くことが第一歩です。

苦手意識を軽くするには、次のような取り組みが紹介されています。

  • 勤務中にメモを取り、申し送りの直前に5分ほど整理する時間を取る
  • 不安なことや、伝え方に迷うことを先輩に相談する
  • 申し送りが上手な先輩の話し方を聞いて、真似できる部分を取り入れる
  • 時間を意識しながら、話す量を調整する
  • 相手に合わせて、詳しさや言い方を変える

最初から上手に話せる人はいません。型と準備を使って、少しずつ慣れていけば大丈夫です。

また、情報が漏れることを恐れすぎると、話が長くなります。口頭で伝えきれなかった点は、記録に残っているかを確認し、必要に応じて補足するという考え方を持つと、気持ちが楽になります。

よくある失敗と避け方のチェックリスト

申し送りでありがちな失敗と、その避け方を表にまとめました。申し送りの前に、見返してみてください。

よくある失敗 避け方
時系列で話して、要点が埋もれる 注意点や確認してほしいことを先に言い、経緯は後で補う
変化のない情報まで全部話して長くなる 変化・異常値・新しい指示に絞る
「元気がない」など主観で話してしまう 様子を事実で述べ、考えは別に添える
「高い」「多い」などあいまいな表現を使う 数値と時刻を添える
聞き手にしてほしいことが伝わらない 最後に「お願い」を一つ具体的に言う
頭が真っ白になり、言葉が出ない SBARのメモを見ながら、Sから順に話す
医師の指示変更を伝え忘れる テンプレートに「指示・変更」の欄を作る

申し送りの直前には、次のチェックリストで確認すると安心です。

  • □ 患者さんごとに「一言でいうと」が決まっている
  • □ 前日からの変化、異常値、新しい指示を拾えている
  • □ 事実と自分の考えを分けて話せる
  • □ 数値と時刻を添えられる
  • □ 聞き手にお願いしたいことが決まっている
  • □ 注意点(転倒リスク、アレルギー、家族の要望など)を落としていない

申し送りで判断に迷ったときは、自己判断で決めず、先輩や担当の看護師に確認しましょう。患者さんの安全に関わる内容は、確認することが最優先です。

申し送りは、練習と準備で確実に上達していく技術です。この記事の例文とテンプレートを、自分の病棟のやり方に合わせて調整しながら、使ってみてください。