バイタル測定器の種類と使い方|測る項目・読み方・報告の流れ

バイタル測定器の種類と使い方|測る項目・読み方・報告の流れ 看護師
看護師ミカ こんにちは、現役看護師のミカです。

今回は、『バイタル測定器の種類と使い方|測る項目・読み方・報告の流れ』というタイトルでお送りします。

バイタル測定器とは?測る目的と5つの項目

バイタル測定器とは、体温・脈拍・血圧・呼吸・SpO2といったバイタルサイン(生命兆候)を測るための機器の総称です。体温計や血圧計のように1項目を測る機器から、複数の項目をまとめて表示するモニタ、カメラで測る非接触タイプまで、幅広い種類があります。

結論を先にお伝えすると、機器が変わっても大切な流れは共通です。正しい手順で測り、基準値と「普段との差」の両方で読み、顔色や意識の状態といった数値以外の観察も合わせます。そのうえで、必要に応じて報告と記録につなげます。

この記事では、機器の種類、項目別の測り方、基準値の読み方、異常を見つけたときの報告、記録のデジタル化までを順番に整理します。看護師、看護学生、介護職など、現場でバイタル測定に関わる方が全体像をつかめるように書いています。

個々の患者さんや利用者さんの状態の判断は、所属先の基準や、看護師・医師の指示に従ってください。

バイタルチェックは何のために行うのか

バイタルサインは、英語の「vital(生命の)」と「sign(兆候)」を組み合わせた言葉です。生命が維持されている状態を数値で表したものを指します。バイタルチェックは、その数値から体調の変化を早い段階で見つけるための観察です。

目的の中心は、体調変化の早期発見と重症化の予防です。入院中の方では、基準値から外れているかどうかだけでなく、数値の経過を追うことで、体調の変化や異常の発見につなげられます。

もう1つ大切なのが、その人の普段の値を知ることです。毎日の記録が積み重なると、平常時の基準となるベースラインが見えてきます。ベースラインが分かっていれば、基準値の範囲内でも「この人にしては高い・低い」という変化に気づけます。

初めて担当する方は平常値の情報が少ないため、判断が難しくなりがちです。日々の記録を残して共有しておくと、担当が替わっても変化を見逃しにくくなります。

日々の記録は、看護師や医師などの多職種、ご家族に状態を説明するときの共通の材料にもなります。「なんとなく元気がない」という印象も、数値が加わると相手に伝わりやすくなります。

POINT バイタルチェックは「測って終わり」ではありません。測った数値から状態を考え、経過観察・報告・記録という次の行動までつなげるところが、一連の業務です。

体温・脈拍・血圧・呼吸・SpO2の5項目

バイタルサインの中心になるのは、体温・脈拍・血圧・呼吸の4項目です。医師や看護師が「バイタルはいくつ?」と聞くときも、主にこの4つの数値を指します。

これに、血液中の酸素の状態を示すSpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)を加えた5項目を測る現場が多くあります。さらに意識レベルの観察を合わせると、状態を立体的にとらえられます。

項目 主に映す状態 よく使う方法・機器
体温 発熱や低体温の有無、感染や代謝の状態 電子体温計
脈拍 心拍数やリズムの乱れ、循環の状態 指で触れて数える、血圧計やパルスオキシメーターの表示
血圧 循環の状態、高血圧・低血圧の傾向 電子血圧計
呼吸 呼吸数、リズム、努力呼吸の有無 目で見て1分間数える、モニタ
SpO2 体内に酸素が行き渡っているか パルスオキシメーター

項目ごとに映すものが違うため、1つの数値だけで判断せず、並べて全体像を読むことが大切です。たとえば発熱に脈拍の増加とSpO2の低下が重なれば、単独の数値より強い注意サインとして受け止められます。

逆に、1項目だけが少し外れていても、ほかの項目や本人の様子が普段どおりであれば、経過を見る判断になることもあります。この「並べて読む」考え方は、後半の報告の章でも使います。

バイタル測定器の種類と選択肢

バイタル測定に使う機器は、大きく3つに整理できます。単機能の機器、複数項目をまとめるモニタ、そして非接触タイプです。それぞれ得意な場面が違うので、特徴を知っておくと使い分けやすくなります。

現在、多くの医療機関では、バイタルサインの測定に電子機器が使われています。短時間で自動的に数値が表示される機器が中心です。

ここでは機器のタイプごとの特徴だけを中立的に整理します。特定の製品の紹介や比較は行いません。

電子体温計・電子血圧計・パルスオキシメーター

電子体温計のうち予測式のものは、体温の上昇の程度から予測値を計算して表示します。そのため、30秒から1分ほどの短い時間で測れます。

体温計を脇に当てている間に、もう一方の腕で血圧や脈拍を測ることもできます。時間の使い方を工夫すると、1人あたりの測定時間を短くできます。

電子血圧計には、上腕にマンシェットを巻くタイプと、手首に巻くタイプがあります。医療機関で用いられるのは、より正確な測定値が得られる上腕用です。

電子血圧計は、マンシェットを巻いてスタートボタンを押すと、加圧と減圧が自動で行われ、測定値が表示されます。座位でも仰臥位でも使えます。

パルスオキシメーターは、指などに装着してSpO2を測る機器です。プローブの発光部から出る赤外光で酸化ヘモグロビンを、赤色光で還元ヘモグロビンを測り、受光部で受け取る仕組みです。

機器 測れる項目 特徴
電子体温計(予測式) 体温 30秒から1分ほどで測れる
電子血圧計 血圧、脈拍 血圧の数値の下側に脈拍が表示される
パルスオキシメーター SpO2、脈拍 SpO2の数値の下側に脈拍が表示される

血圧計やパルスオキシメーターに表示される脈拍は、メインの数値の下側に出るのが基本です。表示の位置を知っておくと、読み間違いを防げます。

複数項目を一台で測るベッドサイドモニタ

ベッドサイドモニタは、患者さんのベッドのそばに置いて使う医療機器です。心電図だけを観察するものから、血圧、呼吸、体温、SpO2など複数のバイタルサインを観察できるものまであります。

患者さんから得た情報をモニタ本体に伝える方式には、有線方式と、無線で送るワイヤレス(テレメトリー)方式があります。

心電図の測定では、皮膚に電極を密着させて貼り、得られた情報を送信機でモニタに送ります。SpO2の測定では、クリップ式や粘着式のプローブを送信機につなぎ、データをモニタに送ります。

呼吸は、胸部に貼った心電図電極に高周波の電流を流し、電極間のインピーダンス(電気抵抗)の変化を検出して、呼吸の状態や呼吸数を見ます。血圧は、血管内にカテーテルを挿入して連続的に測る方法があり、手術室やICU・CCUなど重症の患者さんのモニタリングに欠かせないとされています。

機種によっては、測定値の上限と下限を設定しておき、範囲を超えたときにランプやアラーム音で知らせる機能があります。決まった間隔で自動的に血圧を測る機能や、測定値の記録を残す機能を備えたものもあります。

心電図モニタが必要とされる患者さんには、不整脈が出る可能性のある方、術後やカテーテル治療を受けた方、集中治療を必要とする方、失神や動悸を訴える方などがいます。SpO2モニタが必要とされる方には、呼吸や循環の状態が不安定な方、人工呼吸器を装着している方、在宅酸素療法を受けている方、鎮静薬を使用している方などがいます。

体動などでプローブが外れやすい場合や小児の場合は、粘着式プローブを用います。連続して観察したい場面では、こうした装着方法の選択も大切です。

カメラで測る非接触タイプはどこまで使える?

非接触タイプは、体に機器を当てずに測る、または見守る方式です。カメラを向けて短時間で脈拍・呼吸・酸素飽和度などを測るタイプのほか、マットレスの下に敷くセンサーで心拍・呼吸・離床を見守るタイプがあります。

腕に着けたリストバンドからバイタルサインを一定間隔で自動的に集め、基準を超えたときにパソコンやスマートフォンへ通知する仕組みもあります。測定のための時間や、利用者さんに触れる手間を減らせる点が特徴です。

一方で、測れる項目は機器ごとに異なります。体温や血圧まで測れるとは限らないため、仕様で測定項目を確かめておく必要があります。

非接触タイプの値を、接触式の機器で測った値の代わりとして扱えるかどうかは、所属先の取り決めによります。数値が普段と大きく違うときや、本人の様子に気になる点があるときは、電子体温計や血圧計、パルスオキシメーターなどで測り直す手順を決めておくと安心です。

選択肢を考えるときは、次の順番で整理すると迷いにくくなります。

  1. 何のために測るのか(日常の確認か、継続した見守りか、異常時の確認か)を決める
  2. その目的に必要な項目(体温・血圧・SpO2など)を書き出す
  3. 機器が測れる項目と、測定の条件を仕様で確かめる
  4. 数値が普段と違うときに、接触式で測り直す手順を決めておく
  5. 記録の方法(手書き、手入力、自動送信)まで含めて運用を考える

非接触タイプは、日々の確認や夜間の見守りを助ける選択肢です。数値の読み取りと、そのあとの判断・報告は、これまでどおり人が行います。

項目別の正しい測り方と注意点

項目別の正しい測り方と注意点

測定の前には、患者さんに説明をして同意を得ます。意識がない方にも、「これから体温や血圧を測りますよ」と声をかけ、必要に応じてご家族にも説明してから測ります。

4つの主な項目は、どの順番からでも測れます。一般的には、説明の流れで「体温を測りますね」と声をかけ、体温から始めることが多くなっています。

測る回数は、朝・昼・夕の1日3回が基本とされています。ただし、ルーチンとして測ればよいわけではなく、手術から戻った患者さんのように頻回に測る場合もあれば、状態が安定している方で必要な項目だけを測る場合もあります。病棟の規定に加えて、自分なりにアセスメントをして、必要と判断したときに測ることも大切です。

体温:腋下の当て方と汗の拭き取り

体温には、腋下、口腔内、直腸で測る方法があります。バイタル測定では、一般的に腋下で測ります。

腋下体温は、腋の斜め下30度から体温計を入れ、腋のくぼみの中心に先端が当たるようにします。

腋をしっかり密着させる必要があるため、もう片方の手で、測る側の二の腕を支えるようにします。

電子体温計を当てたらスタートボタンを押し、30秒から1分ほどして電子音が鳴ったら、表示された値を読みます。

注意したいのは汗です。腋が汗で濡れたまま測ると、正確な数値になりません。汗が蒸散するときの気化熱で、体表の温度が低くなるためです。

発熱などで汗をかいているときは、測る前に腋の汗を拭き取ります。

成人では、体温計を渡して自分で測ってもらう場面もあります。正しい当て方を知らない方も多いため、当て方を説明したうえで測ってもらいます。

血圧:マンシェットの巻き方と測れない腕

上腕用の電子血圧計では、肘から1〜2cmの部分にマンシェットの下部が来るように、すき間なく巻きます。

測るときは、患者さんの心臓の位置と血圧計が同じ高さになるようにします。座位でも仰臥位でも測れますが、高さをそろえる点は共通です。

マンシェットの巻き加減も数値に影響します。上腕にきつく巻くと、血圧の数値が高く出やすくなります。反対にゆるく巻くと、十分に加圧されず、数値が低く出やすくなります。

測る前には、病歴の確認も欠かせません。乳がんでリンパ節郭清を受けた側の腕や、血液透析のためのシャントがある腕では、血圧測定を行えません。

測れない腕に気づかずに巻いてしまうことを防ぐため、測定の前に「どちらの腕で測ってよいか」を確認する習慣をつけておくと安心です。

測定のスタートボタンを押したあとは、加圧と減圧が自動で行われます。患者さんには、腕を動かさず楽にしていただくよう声をかけます。

脈拍:橈骨動脈での数え方と機器表示の見方

脈拍とは、心臓の拍動によって血液が流れ、末梢血管まで届くときに起こる波動のことです。さまざまな部位で触れますが、バイタル測定で用いるのは橈骨(とうこつ)動脈です。

橈骨動脈は、手首の真ん中より少し外側にあります。示指・中指・薬指の3本を当てて触れます。

脈が規則的に打っていれば、15秒間の脈拍数を4倍するか、30秒間の脈拍数を2倍して、1分あたりの数を出します。

脈が不規則な場合は、1分間かけて数えます。短い時間で数えて倍にすると、実際との差が出る可能性があるためです。

電子血圧計やパルスオキシメーターを使うときは、メインの数値の下側に脈拍が表示されます。機器の表示を読むときも、脈の強さやリズムは指で触れて確かめると、情報が増えます。

機器の表示と指で数えた値が大きく違うときは、プローブの装着や腕の動きなどを見直して、測り直してみる方法があります。

呼吸:意識させずに1分間数える

呼吸数は、1分間あたりの回数を数えます。

患者さんに「呼吸を数えます」と伝えると、本人が意識してしまい、いつもどおりの呼吸ではなくなることがあります。そのため、呼吸数は患者さんが意識していないときに数える必要があります。

たとえば、脈拍を測りながら、そのまま胸やお腹の動きを見て数える方法があります。手首に指を当てたまま、視線だけを胸元に向けると、自然に数えやすくなります。

呼吸数を数えるときは、回数だけでなく、呼吸の状態も合わせて観察します。リズムは整っているか、息苦しそうではないか、肩を使って呼吸していないかといった点です。

回数が同じでも、苦しそうな様子があるかどうかで、報告の内容は変わります。数値と様子をセットで記録しておくと、あとから状態を振り返りやすくなります。

SpO2:プローブの選び方と装着のコツ

SpO2は、動脈血中に含まれる酸素の割合を示す指標です。パルスオキシメーターを使い、患者さんの指にはさんでしばらくすると数値が表示されます。

プローブには、指をはさむクリップ式と、貼って使う粘着式があります。体動などでプローブが外れやすい場合や、小児の場合は、粘着式プローブを用います。

装着のコツは、プローブがずれないように安定させることです。数値が表示されたら、すぐに読むのではなく、表示が落ち着くのを待ってから読みます。

数値が安定しないときは、本人が動いていないか、プローブが外れかけていないかを確認します。装着し直して、もう一度測る方法があります。機種によっては脈波が表示されるので、波形が整っているかも手がかりになります。

SpO2は、もともと呼吸器の疾患がある方では、低めの値で推移することもあります。だからこそ、普段の値を把握しておき、いつもより低くなっていないかを見ることが大切です。

普段より数値が低めになっているときは、呼吸状態の悪化や急変の兆候の可能性もあります。その場合は、リーダーナースや医師へ速やかに報告します。

基準値の考え方と「普段との差」の読み方

基準値の考え方と「普段との差」の読み方

測った数値が正常かどうかを判断するには、基準値の目安を知っておく必要があります。ここでは、小児や高齢者で見方が変わる点を整理します。

基準値は、あくまで目安です。持病や年齢、その人の平常値によって、適した範囲は変わります。

基準値の範囲内だから安心、範囲外だから異常、と機械的に当てはめないことが大切です。基準値と、その人の普段の値の両方を並べて読みます。

数値を読むときは、基準値との差だけでなく、その方の平常値との差を見ます。基準値の範囲内でも、普段より明らかに高い、または低いときは、注意して経過を追う対象になります。

反対に、範囲を少し外れていても、本人が普段どおり過ごせていて、いつもの値に近いのであれば、慌てずに経過を見る判断もできます。

POINT 基準値は「目安」、判断の軸は「その人の普段の値」です。数値を表に当てはめるだけで終わらせず、平常値と並べて読む習慣をつけましょう。

小児や高齢者で見方が変わる点

バイタルサインの基準値は、成人と小児で異なります。小児の基準値は、成長の段階によっても違います。

学童期より前の子どもは、生理機能が未熟なため、バイタルサインが変動しやすい特徴があります。動いたり泣いたりするだけでも、値が変わります。

そのため、小児のバイタルサインを測るときは、本人が落ち着いた状態で行うのがポイントです。

高齢者の場合は、一般的な成人の目安の範囲を外れていても、その方にとっては平常ということがあります。逆に、範囲内でも普段との差があれば、注意が必要です。

高齢の方は、症状が本人の訴えとして表に出にくいことがあります。「なんとなく元気がない」という印象を、体温・脈拍・SpO2などの数値で裏づけながら、変化を拾い上げていきます。

持病のある方でも、同じ考え方です。数値を機械的に当てはめず、その人の平常値と照らして読み、迷うときは看護師や医師などの有資格者に相談します。

数値以外に併せて観察すること

バイタルサインの数値は、誰が見ても同じように読み取れる客観的な情報です。一方で、「頭が痛い」「だるい」といった本人の訴えは主観的な情報で、数値には表れません。

どちらか一方だけでは、状態を見誤ることがあります。数値が基準の範囲内でも、本人がつらそうなら注意が必要です。数値が少し外れていても、本人が普段どおり過ごせているなら、経過を見る判断もできます。

この章では、数値と一緒に見ておきたい意識レベルと、顔色や様子の観察を整理します。

意識レベル(JCS)の見方

意識レベルの観察では、患者さんの覚醒の状態を評価します。意識レベルを見ることで、頭部外傷や脳血管障害の重症度を把握する手がかりになります。

一般病棟では意識清明の方が多い一方、救急病棟やICUでは意識がはっきりしていない方も多く、バイタルサインの測定時に意識レベルの観察も必要になります。

医療機関でよく使われている評価方法が、ジャパン・コーマ・スケール(JCS)です。JCSでは、数字が大きいほど意識レベルが低いことを意味します。

区分 状態
0 意識清明
I(Ⅰ-1〜Ⅰ-3) 刺激しないでも覚醒している状態。Ⅰ-1はだいたい清明だが今ひとつはっきりしない、Ⅰ-2は場所・時間・日付が分からない、Ⅰ-3は自分の名前や生年月日が言えない
II(Ⅱ-10〜Ⅱ-30) 刺激で覚醒するが、刺激をやめると眠り込む状態。Ⅱ-10は普通の呼びかけで容易に開眼、Ⅱ-20は大きな声または体をゆさぶると開眼、Ⅱ-30は痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと開眼
III 刺激しても覚醒しない状態

実際に観察するときは、まず声をかけて、反応を見ます。名前や場所、日付を尋ねる質問も、覚醒の状態を確かめる方法の1つです。

ぼんやりしている、反応が鈍いといった様子は、数値には表れにくい急変の兆候をとらえる手がかりになります。いつもと比べて反応が違うと感じたら、その様子もそのまま報告や記録に残します。

顔色・様子・本人の訴えを合わせて読む

バイタルサインと合わせて観察する項目には、意識レベルのほかに、尿量や、患者さんの顔色・様子があります。

顔色は、見た目の変化として気づきやすい手がかりです。普段と比べて顔色が悪い、表情がつらそう、元気がないといった印象は、数値の裏づけとして役立ちます。

本人の訴えも大切です。頭痛、だるさ、息苦しさ、痛みなど、本人が感じていることを聞き取り、測定値と並べて記録します。

主観的な印象だけでは、他の職種に伝わりにくい変化があります。数値が加わると共有しやすくなるため、数値と様子の両方を残す意味があります。

観察の記録では、「顔色が悪い」だけでなく、「普段より顔色が白い」「声かけへの反応が遅い」のように、普段との違いを具体的に書くと、他の人にも伝わりやすくなります。

異常値を見つけたときの報告の流れ

異常値を見つけたときの報告の流れ

測定した値が普段と違うとき、1人で抱え込まずに報告することが大切です。ここでは、複数の項目を並べて判断し、誰に何を伝えるかを整理します。

報告の前に、測定のミスがないかを確かめる視点も大切です。数値が外れて見えても、測り方が原因の場合があります。

この章の手順や例文は、あくまで流れを理解するための例です。実際の報告先や基準は、所属先の決まりに従ってください。

複数項目を並べて判断し、誰に何を伝えるか

異常に気づいたら、まず1項目だけを見るのではなく、他の項目と並べます。体温、脈拍、血圧、呼吸、SpO2のうち、どれがどの程度、普段と違うのかを確認します。

次に、意識レベルや顔色、本人の訴えなど、数値以外の情報を加えます。数値の変化に加えて、様子もいつもと違うときは、より早い報告が必要になります。

報告先は、所属先の体制によって異なります。病棟であれば、リーダーナースや医師へ速やかに伝えます。介護の現場では、看護師や、決められた連絡先へ伝えます。

伝える内容は、次のように整理すると、短時間でも要点が伝わります。

  • 誰のことか(名前、部屋など)
  • いつ、どの機器で測ったか
  • 各項目の数値と、普段の値との違い
  • 意識レベル、顔色、本人の訴えなど数値以外の様子
  • 測り直したかどうか、その結果
  • すでに行った対応と、判断を仰ぎたいこと

次は、報告の例です。数値は仮のものとして、○○で示しています。

例:「〇号室の△△さんです。〇時の測定で、体温○○℃、脈拍○○回/分、SpO2○○%でした。普段は体温○○℃前後、SpO2は○○%前後です。顔色がいつもより悪く、だるさを訴えています。測り直しても同じ値でした。確認をお願いします。」

報告のあとは、指示された内容を記録に残します。その後の経過を追う測定の間隔も、指示に従って決めます。

POINT 報告は、測った「数値」と「普段との違い」、本人の「様子」をあわせて伝えます。迷ったときも、測り直した結果とあわせて早めに相談することが大切です。

測定ミスを疑うチェックリスト

数値が普段と大きく違うときは、報告の前に、測り方に問題がなかったかを確かめます。次のチェックリストは、項目ごとに見直す点をまとめたものです。

  • 体温:腋が汗で濡れていなかったか、腋をしっかり密着させ、先端がくぼみの中心に当たっていたか
  • 血圧:マンシェットがきつすぎる、またはゆるすぎる巻き方ではなかったか
  • 血圧:心臓の高さと血圧計の高さがそろっていたか
  • 血圧:乳がんのリンパ節郭清側や、シャントのある腕ではなかったか
  • 脈拍:不規則なのに短い時間で数えて倍にしていなかったか
  • 呼吸:数えていることを本人が意識していなかったか、1分間数えたか
  • SpO2:プローブがずれたり外れかけたりしていなかったか、体動はなかったか
  • 小児:泣いていたり動いていたりしていなかったか

見直したら、状況を整えて測り直します。測り直しの値と最初の値の両方を記録しておくと、報告するときにも役立ちます。

ただし、測定ミスの可能性があるからといって、報告を後回しにする必要はありません。本人の様子に気になる点があるときは、測り直しと報告を並行して進めます。

機器の表示が安定しない、または普段と違う値が続くときは、機器そのものの不具合も考えられます。別の機器で測るなど、所属先の手順で確認します。

記録のデジタル化で手間とミスを減らす

バイタルサインの記録は、測定のたびに発生する作業です。紙に書き写したり、電子カルテに入力したりする手間は、積み重なると大きな負担になります。

測定器から電子カルテや記録ソフトへ値を自動で送る仕組みを使うと、転記の手間や、写し間違いのリスクを減らせます。ただし、すべてが自動になるわけではないため、どこまで任せられるかを知っておくことが大切です。

ここでは、自動送信の仕組みと、運用のコツを整理します。

測定器から電子カルテ・記録ソフトへ自動送信する仕組み

測定器から記録先へ値を送る方法の1つが、Bluetoothなどの無線通信です。J-GLOBALに登録されている、岩手県宮古病院の坪井忠和氏の報告「外来診療におけるバイタルサイン入力システムの開発」(日本医療情報学会春季学術大会、2024年)は、Bluetooth通信機能付きのバイタル測定器から電子カルテへデータを送受信して記録する取り組みを扱っています。

介護の現場でも、測定したバイタルサイン(脈拍・呼吸・酸素飽和度など)を、利用者さんの名前を入力するだけで、使っている介護記録ソフトへ自動的に転記する仕組みが紹介されています。

機器によっては、測定値をその場で表示するだけでなく、機器の中に記録を残したり、印字したりできるものもあります。決まった間隔で自動的に測定する機能や、値が上限・下限を超えたときに知らせる機能も、記録と見守りの助けになります。

非接触タイプのなかには、一定間隔で自動的にデータを集め、クラウドに保存する仕組みもあります。基準を超えたときには、画面表示やスマートフォンへの通知で知らせる機能もあります。

作業 手作業の場合 自動送信を使う場合
数値の記録 画面を見て、紙や画面に書き写す 機器から記録先へ送られる
患者・利用者の特定 記録するときに名前を確かめる 名前の入力や選択が必要になる
呼吸数・様子の観察 測って書く 多くは人が観察し、入力する
異常の判断・報告 人が判断する アラームは補助になるが、判断は人が行う

この表のとおり、自動送信で減らせるのは、主に転記の手間です。測定の手順、様子の観察、異常かどうかの判断と報告は、変わらず人の仕事です。

転記ミスや記入漏れを防ぐ運用のコツ

自動で送られるようになっても、運用を整えておかないと、ミスは起こります。大切なのは、機器の便利さに頼りすぎず、確認の習慣を残すことです。

特に注意したいのは、測定した方と記録先の名前の紐づけです。名前の選択を間違えると、別の方の記録に値が入ってしまいます。測定の前に、本人に名前を確認してから測ると、取り違えを防ぎやすくなります。

次のような運用のコツがあります。

  • 測定のたびに、送信された値が画面に表示されているかを確認する
  • 通信が途切れたときの手順(その場で書き留める、あとで入力するなど)を決めておく
  • 呼吸数、意識レベル、顔色、本人の訴えなど、機器で取れない項目の記入欄を決めておく
  • 測り直した場合は、最初の値と測り直しの値の両方を残す
  • 記入漏れがないか、一日の終わりに一覧で確認する

記録のデジタル化を考えるときは、使っている記録ソフトや電子カルテと、測定器がつながるかどうかを事前に確かめる必要があります。つながる機器や仕組みは、システムごとに異なります。

デジタル化の目的は、記録を速くすることだけではありません。記録の抜けや写し間違いを減らし、浮いた時間を、患者さんや利用者さんの様子を観察することに使うことです。

新しい機器や仕組みを使い始めるときは、全員が同じ手順で使えるように、短い手順書にしておくと混乱を防げます。まず少人数で試して、困りごとを集めてから広げる進め方もあります。

測定器の種類が変わっても、基本は同じです。正しく測り、普段との差で読み、数値以外の観察と合わせて、必要な人へ報告する。その流れを支える道具として、機器と記録の仕組みを使いこなしていきましょう。


最後までお読み頂いてありがとうございました。

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